連載「モンスター夫が許せない」●夫が、特に深い意味はなく気軽に発した言葉や行動が、実は妻にとってはカチンとくることがある。それにより、知らず知らずのうちに夫婦の溝が深くなってしまっているかも。
ママ友たちとの会話の中で、しばしば語られる夫たちのモンスター的なエピソード。優しさや気遣いがまったくない、男尊女卑、外で働くことより家事や育児を下に見ている等々、「あんな優しそうな旦那さんが、そんなひどいことを言うなんて」という驚きの発言を耳にすることも珍しくありません。そこで、本連載では、子育て中の女性200人にアンケートを実施。夫のモンスターっぷりを思いっきり暴露してもらいました。
第3回では、夫たちの子供への叱り方が妻の怒りを買ったケースです。
Q. 夫が子供に対して言った発言で、許せないと感じたこと、あるいはドン引きしたことがあれば具体的に教えてください。
「旦那に子供を預けて出掛けると必ず喧嘩をして子供を泣かせたうえに、『こいつ頭がおかしい』と子供のことを本人の前でけなす」(鹿児島県・42歳)
「子供を頭ごなしに叱って、その理由を言わない。 当然子供は何で叱られたかわからない」(大阪府・44歳)
「『これからの世の中、人の言うことばかり聞く子供になってはいけない』、『主張できる子供にならなければならない』と言っておきながら、一日一緒に過ごして自分の思い通りにいかないと『言うことを聞け!』と怒っていた」(京都府・43歳)
「息子に『お前は部活動でもレギュラーが取れない、成績も上がらない、人間のクズやね』と投げた言葉、最低でした。ヤル気を奮い立たせたいのだろうけど、それからの親子関係は最悪で、息子はお父さんを嫌いになりました」(長崎県・43歳)
「苦手な教科の宿題をやることがすごく時間がかかって大変なのですが、なかなかできない子供に対して『もうやっていかなくてもいい』と怒ったときには引いてしまいました」(愛知県・44歳)
子供への叱り方で夫婦間にギャップが生じる理由とは?
現代の日本では、共働き家庭が多くなったとはいえ、家事や子供の身の回りのことを中心的に行うのは母親、という家庭がまだ多いと思います。子供が幼児であれば、食事の準備、お風呂に入れる、決まった時間に寝かしつけるなど、子供が健康で成長するようにと、母親たちは子供の衣食住すべてにおいて気を使うわけです。
食事の準備ひとつ取っても、大人に食事を作るのとは違い、簡単ではありません。好き嫌いをなくすように工夫したり、栄養バランスを考えたりするのはもちろんのこと、決まった時間に食べさせる、飽きたり、気分にムラがあって食べないこともあるので、それを、あの手この手で工夫して食べさせるなども大変な仕事です。
食事のあとには、お風呂に入れる、歯磨きをさせる、寝かしつけると続きますが、すべて「やりなさい」と言っただけでできるわけではないですし、それが毎日毎日続くのです。はっきり言って面倒なことの連続です。
母親たちは、そういったことに日々休みなく向き合っているわけです。
前置きが長くなりましたが、こういったことがあるからこそ、母親たちは、子供のちょっとした心身の変化にも気が付けるというわけなのです。
パパたちも、子育てにまったく関わっていないわけではないと思いますが、やはりいちばん近くで見ているママたちに比べると、少し子供との距離があると思います。だから、妻から見ると「その叱り方、言い方はどうなの? 子供の気持ちがわかっていない!」ということになるのです。
子供への叱り方について、夫婦間でギャップがあるのは、その点が原因となっていることが多いのではないでしょうか。
子供が思い通りに動かない生き物であるということをパパたちはわかっていない
パパたちの子供への対応で、妻たちをイラッとさせる出来事がよく起こるのは、上のコメントにもあるとおり、例えば休日などに、たまにママがひとりで出かけ、パパと子供だけで過ごすときです。
おそらく、パパとしてはたまに子供と自分だけで過ごすことを、楽しみにしていたのだと思いますが、想像以上に大変だったり、子供が自分の思い通りに動かなかったり、ということが起こります。
パパたちは「こんなはずじゃなかった」という気持ちになるはず。それにより、焦りや苛立ちが募って、理不尽な怒り方をしてしまうのではないでしょうか。
でも、妻からしてみれば、子供が言うことを聞かないのなんて当たり前。それを、あの手この手を使って、飴と鞭を使い分けるなどして、ごはんを食べさせたり、宿題をやらせたりしているわけです。
ママ友たちからは「夫と子供で留守番をさせると、帰ると必ず夫が不機嫌になってて、子供は泣いてたりするので、もうひとりで出かけるのはやめました」という声を何度も聞いたことがあります。
他愛もない妻との雑談のなかに、子供との関係性を構築するヒントあり
また、上記のコメントの上から4つ目と5つ目にあるように、子供ができなかったことに対して、理不尽にけなしたり怒ったりするというのも、普段の子供の様子を見ていないからこそ、ではないでしょうか。
コメントをくれたお母さんたちは、子供が日頃どれだけ努力し、一生懸命やっているか、その過程をちゃんと見ているのでしょう。それに対して、パパたちは、その場のことだけを見て怒った。たぶん、お母さんたちも、普段は怒ることもあれば、優しく励ますこともあり、それらを繰り返して、子供を応援しているのだと思います。
では、これらの夫婦間のギャップをどう埋めるのか。パパと子供の関係性をよくするにはどうしたらいいのかと考えてみると、普段の妻の話に耳を傾けることが大事だと思うのです。
ママたちはよく「帰宅した夫に、その日にあったことなどを伝えても、上の空で聞いてたり、あからさまに面倒くさそうな顔をする」と言います。
でも、実はそういった妻たちの日々の雑談や報告、愚痴のなかに、子供の様子を知るヒントがあったりするわけです。だから、妻の愚痴も、面倒くさがらずに聞いてみてください。それをよく聞くことで、普段子供と接する時間が少ないパパたちも、毎日の子供の様子を把握することができますし、さらにはママ自身も「パパは話をよく聞いてくれる」と、夫への満足度が上がるというもの。
そのうえで、一緒に考えて方針を決定すれば、夫婦で子供への接し方に一貫性がないとか、妻がパパの叱り方に不満を持つということもなくなり、一石二鳥ということになると思います。
相馬由子=取材・文
編集者、ライター。合同会社ディライトフル代表。雑誌、ウェブ、書籍などの企画・編集・執筆を手掛ける。会社員の夫と小1の娘の3人家族。ここ数年は、子育てをテーマにした仕事を数多く手掛けている。
石井あかね=イラスト
ネオ・マーケティング=アンケート協力
※調査対象:既婚子持ちの35~45歳の女性200人
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