「自転車ライフ 2.0」とは……

デザインやスペック、フレームの種類、タイヤの太さ……自転車には十人十色の正解がある。

ビンテージをこよなく愛するライターの佐藤周平さんに、正解を導き出すまでの失敗談を交えながら、愛車との自転車ライフについて語ってもらった。

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ヴィンテージ自転車の手痛い洗礼

「手当たり次第ということはありませんが、職業病という言い訳をして、“ヴィンテージ”と呼ばれるものは大抵は買い漁ってきたと思います」。

自他ともに認める、大のヴィンテージ好きである佐藤さん。興味の対象はデニムなどの古着にとどまらず、ライフスタイル全域に及ぶ。

「自転車で言えば、シュウィン(SCHWINN)のBMXが初めて買ったヴィンテージでした。24インチなら街乗りもいけるかな?と意気込んで初めからカスタムバイクに手を出したんですけど、サドルが痛くて、あっさりギブアップ(苦笑)」。

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そこから佐藤さんは、もう1台分の高い授業料を払うことになる。

「その反動から、次はグレードの高いサドルが付いたビアンキ(BIANCHI)のミニベロに買い替えたんです。ところが、機動力に難があるうえに、頻発するパンク、面倒くさいギアチェンジに悩まされて、これもまた手放す羽目に(2度目の苦笑)」。

三度目の正直。その言葉通り、ようやく理想の1台と出合うチャンスが巡ってきた!

 


伝説的ビルダーのフレームで組まれたマウンテンバイク

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「ビアンキの失敗から再度路線を変更して、もう一度アメリカの自転車を探し出してみたところ、たまたま近所の中古店で出合ったのが、2010年頃のロックロブスター(ROCK LOBSTER)のマウンテンバイクでした」。

“ロックロブスター”の名を聞いてピンとくる人は、かなりの自転車ツウかもしれない。

「アメリカの伝説的なカスタムビルダーのひとりであるポール・サドフが手掛けるロックロブスターのフレームは、その世界では知られた存在。見つけたときはうれしかったですね」。

未使用であったこと、さらにカスタムバイクとしての完成度も高かったことも魅力だった。

「マウンテンバイクなのに、あえてシングルギアにしてるので気軽に街乗りできるのが最高! 即決でしたね」。

こうしてギアチェンジのトラウマから開放された佐藤さんは、さらなるカスタムにトライする。

ヴィンテージオタクが失敗を経て着地した「自転車2台持ち」というベストアンサー

「荷物を運べるようにガモウのフロントキャリアを取り付けました。ビール24缶入りのダンボールがちょうど入るビッグサイズで、買い物やジムに行くときに大活躍してくれます」。

それから間もなくして、佐藤さんの自転車ライフにもう1台の心強い味方が仲間入りする。


イギリスから個人輸入した往年のロードバイク

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「僕の悪い癖で、ひとつ買うと、また次が欲しくなる。マウンテンバイクは押さえたから、次はロードバイクも行ってみようと」。

当時、古いレンジローバーに乗っていたことから、佐藤さんはイギリスのヴィンテージ自転車を物色。

「ヘチンス(HETCHINS)の優雅なフレームに惹かれて探したところ、日本ではあまり出回っていないことがわかって、イギリスの専門店から個人輸入しました。1960年代のフレームです」。

どうにか入手することはできたが、理想とは程遠いコンディションだった。そこで、原宿のヴィンテージサイクルの名店、ヒップヒップシェイクにオーバーホールを依頼したという。

ヴィンテージオタクが失敗を経て着地した「自転車2台持ち」というベストアンサー
ドロップハンドルが苦手だという理由からTバーに交換。

「このクラスのヴィンテージは、完成度を求めると本当に手間がかかりますが、やった分だけの満足感は得られると思います。まだまだイジれる部分はあるのですが、ほどほどにしないとキリがないので、当面はこのまま乗ろうと思っています」。

もちろん、マウンテンバイクとは違った強みもある。

「現行車と比べると車体は重いですが、スピードは十分出ます。長距離の移動はこの1台で賄おうと思っていますが、残念ながらまだ近場でしか乗れていません(笑)」。

 

二度の失敗から「2台持ち」という答えに行き着いた佐藤さん。こだわり抜いて手にした愛車との暮らしは、言わずもがな充実感に溢れている。

 

「自転車ライフ 2.0」とは……
環境や体型の変化だったり、身近な先輩の姿に憧れたり。ハマった理由は皆異れど、自転車にかける想いは誰もが強く、深い。自分好みへと仕様を変えた相棒と日々暮らす、同世代の自転車ライフをパパラッチ。
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鳥居健二郎=写真 戸叶庸之=編集・文

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