「Camp Gear Note」とは……
世は空前のメスティンブーム真っ只中。しかし、前編でもお伝えしたとおり、メスティンを手掛けるブランド「トランギア」の魅力的な製品はほかにもたくさんある。
メスティン以外のトランギア製品を見たことがない読者のために、ここでは彼らの代表的なモデルにいくつか触れてみよう。
キャンプ道具は「価格が高い」「重い」「扱いづらい」とイメージされがちだが、北欧の厳しい自然環境の中で育まれたトランギアの道具には、そんな心配は無用。誰でも気軽に使える実力派が揃っている。
半世紀以上、世界で売れ続けるアイデア商品
トランギアを語るうえで外せない代表作が、こちらの「ストームクッカー」シリーズ。名前のとおり、嵐の中でも調理が楽しめるギミックが盛り込まれたアルミ製のクッカーセットで、1951年の発売以来、ほぼ形を変えることなく世界中で愛され続けているロングセラー商品である。
セット内容はアルコールストーブ、フライパン、ポット×2、ハンドル。台座とその上に載せるアルミ製の風防兼ゴトクには、小さな穴がいくつも開けられていて、これこそがミソとなる。
アウトドアでの調理において風は大敵。このクッカーは上の写真のようにバーナーを風から守り、安定した火を提供する構造になっている。
そればかりか、台座の穴から引き込まれた空気が上部にセットしたアルコールバーナーの熱により上昇。大量の酸素がバーナーに供給され続け、安定した高火力での調理を可能にするという目からウロコな仕組みになっている。
本国スウェーデンでは、これ1つ持って家族で近くの森や山にピクニックに出かけるそうだ。3、4人分の調理なら、十二分に賄えるだろう。
通常よりも強度の高いアルミニウムを採用したシンプルな造りなので、故障知らずで飽きがこないことも魅力だ。
ちなみに、火力調整用の蓋がついているが、使用途中で何度も細かい調整ができるものではない。手の込んだものよりも、シンプルなスープや煮込み調理に向いている。
世界中のどんな僻地でも、これさえあれば
アルコールバーナーも、トランギアを代表するロングセラー商品だろう。
燃料は風や低温に強い液体アルコール。ガスが手に入らない島や僻地でも燃料が手に入りやすく、シンプルな構造で故障しづらいため、世界中の冒険家や軍の装備に採用されてきた。
使い方は、2/3ほど燃料を入れて着火するだけ。
当然、利便性はガスバーナーには及ばない。しかし、ギア好きにはたまらない独特な魅力があるため、今も世界中で売れ続けているロングセラー商品なのだ。
ちなみに、この10年ほど日本では多くのガレージブランドが個性的なアルコールバーナーをリリースしてきたが、トランギアのこのバーナーこそがそれら全ての原型であることは言うまでもない。
アルミニウム+αの素材と互換性の高さに注目
トランギア製品は創業時からアルミニウム素材を基本としているが、消費者の声に合わせて徐々に進化。現在は、ノンスティック加工を表面に施したモデルやステンレスを組み合わせて耐久性を高めたモデルなど、さまざまなバリエーションが用意されている。
吊り下げ調理に対応する「ビリーコッヘル・ノンスティック」は、内側にノンスティック加工を施しており、焦げつきを防ぎつつ、使用後の汚れ落としが楽な仕様となっている。
湯沸かしやスープなどの調理はシンプルなアルミで十分だが、少し手の込んだ料理を楽しみたいならば焦げつきを防ぐ表面加工は心強い味方となる。
また、ほかの製品との互換性の高さもトランギアならでは。例えば、2.5Lサイズのコッヘルにはストームクッカーやメッシュボウル、ほかのクッカーセットがすっぽり収まる設計になっている。
人数や料理に合わせてクッカーの組み合わせをああでもない、こうでもないと考える時間は、ギア好きにはたまらない時間だ。
幅広く展開している他のクッカーセットもそれぞれ互換性が高い。多くのモデルが、ストームクッカーを基準にその中に収まるか、もしくはストームクッカーを収められる規格で設計されているのだ。
サイズ違いでトランギア製品のクッキングギアを揃えるなら、この収納時の互換性を意識して選ぶと、さらに道具選びが楽しくなる。
オプションギアも年々ラインナップを拡充中
また、トランギアのラインナップは、どれもアルミの質感を活かしたシンプルな造りのギアが揃っていることも特徴だ。
メスティンも、そんなアルミ製品の1つ。上記のクッカーセットを持っているならば、食材を潰さずに持ち運ぶためのケースや温め直しができる弁当箱として使うのもいいだろう。
アルミケトルも隠れたヒット商品だろう。
勘の良い方はお気づきだろうが、注ぎ口が短く、ボトムが平らな独特なフォルムは収納性を高めるための形状。
また、直火にかけるときはハンドルのシリコンを取り外せるなど、細かいところまで気の利いた造りになっている(初めからノブがステンレスになった焚き火に強いモデルもあり)。
ハーフパイントマグも他にありそうでない商品だ。絶妙なサイズ感と佇まいの可愛さが人気で、何個も揃えたくなってしまう。ハンドルカバーは市販されているが、自作するユーザーも多いのだとか。
これ以外にも紹介し切れないほどたくさんのアクセサリーやバリエーションを、トランギアは展開している。しかも、北欧の厳しい自然環境に磨き上げられた製品は、どれもがシンプルで使い勝手が良く、スタイリッシュ。
メスティンだけを使って満足していちゃ、もったいないでしょう?
[問い合わせ]
イワタニ・プリムス
03-3555-5605
www.iwatani-primus.co.jp
「Camp Gear Note」
90年代以上のブームといわれているアウトドア。次々に新しいギアも生まれ、ファンには堪らない状況になっている。でも、そんなギアに関してどれほど知っているだろうか? 人気ブランドの個性と歴史、看板モデルの扱い方まで、徹底的に掘り下げる。 上に戻る
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池田 圭=取材・文 矢島慎一=写真