群馬県の高崎市から新潟県の長岡市を結ぶJR上越線土合駅に、無人駅グランピング施設「DOAI VILLAGE」が期間限定オープンを経て本格開業。注目を集めている。
土合駅の一日の平均乗降客数はわずか20名ほど。お世辞にも賑わっているとは言えないこの駅に、なぜ宿泊施設がオープンしたのか?
その謎と魅力を紐解いてみよう。
JR東日本グループが仕掛ける「無人駅活性化プロジェクト」の一環

今回の計画を主導したのは、ご存知JR東日本グループだ。
彼らの管轄内には現在約1600の駅があり、そのうちの約4割が終日駅員不在の「無人駅」だそう。国土交通省の集計によれば、全国に9465駅あるうち無人駅は4564駅と全体の48.2%を占める。
たとえ駅員を配置しなくても、清掃や修繕など無人駅の維持管理費はかなりのもの。せっかくの駅周辺スペースも遊ばせておいてはもったいない。

このような背景から、彼らはベンチャー企業とタッグを組み、無人駅をさまざまな形で活用する実験的な試みをスタートした。
プロジェクトの選定基準は「JR東日本グループとシナジーが生み出せるか」「新規性があるか」「事業継続性があるか」の3点。現在、この条件を満たす4つの無人駅活用プロジェクトが進行中で、土合駅のグランピング施設「DOAI VILLAGE」もそのひとつってわけだ。
最大の特徴は「日本一のモグラ駅」にあること

土合駅がプロジェクトの場に選ばれた最大の理由は、駅としての純粋な魅力にある。実はこの土合駅は「日本一のモグラ駅」として電車好きの間では言わずと知れた超個性派無人駅なのである。
「モグラ駅」とは地下トンネル内にある駅の総称で、土合駅は地下70mと全国に数あるモグラ駅の中でもダントツの深さに位置する。地上の改札から地下のホームまでエスカレーターやエレベーターはなく、462段にも及ぶ階段を約10分かけて下りなければならない。
階段の途中には休憩用のベンチが設置され、地上への出口には「お疲れさまでした」と書かれていることも納得のキツさだ。

宿泊は最新鋭のインスタントハウスで

宿泊施設は、このテントである。
これは開発されたばかりの最新鋭のインスタントハウスだそうで、空気で膨らませたドーム型テントに発砲ウレタンを吹き付けて形を作っている。大人4人で持ち運べるほど軽量だが、頑丈かつ高い断熱性を誇る画期的な構造だ。

雪が降り積もる昨冬~春に実験的に営業したときも、外気温が余裕で氷点下を下回る中、室内は快適な温度が保つことができたそう。室内からは地上を走る電車を眺めることもできる(地下ホームは下り線で上り線のホームは地上にある)。

そのほかも楽しめる仕組みあり

かつて駅の切符売り場だったスペースは、宿泊者の食堂兼カフェとして使われている。カウンターや黒板は駅に残っていたものがそのまま活用しており、電車好きにはたまらない空間になっている。
また、屋外に設置されたフィンランド式の野外ロウリュサウナの利用も可能。例年、雪が降り積もる豪雪地帯なので、熱々のサウナのあとは真っさらな新雪にダイブ! なんて楽しみ方もできる。

ちなみに、土合駅の立地は、上質なパウダースノーがスノーサーファーに人気の谷川岳の麓。
都内からは車で約2時間、電車は約3時間で手軽にアクセスできる。

すでに直近の予約が埋まりつつあるほどの人気だが、年内は少しお得な料金で宿泊できるキャンペーンを開催中。
この冬の旅先候補として検討してみてはいかが?
[問い合わせ]
DOAI VILLAGE
JR上越線土合駅(群馬県利根郡みなかみ町湯檜曽218-2)
https://villageinc.jp/doaivillage/
※予約はウェブサイトから(電話不可)
池田 圭=取材・文