YouTubeチャンネル「貴ちゃんねるず」を立ち上げ、テレビ全盛期と変わらぬ活躍を見せる芸人・石橋貴明さん。
今年還暦を迎えるという石橋さんに、格好いい大人について聞いてみた。
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還暦の今年、大人を考える
「格好いい人というのは、着ているものや顔つきなど、生き様が滲み出てくるものです。自分が芸能界に入ったときの先輩たちは、本当に格好良かった。
いざ、自分がその年になってみたけれど……、一向に大人になっていないですね(笑)。お前は何を見てきたんだって話で」。
いやいや、石橋さんの後ろ姿を追いかける後輩たちが、たくさんいるじゃないですか! だから、今もなお、人気YouTuberでもあり続けられるのだから。
「僕は非常に恵まれているのかなって。芸能界はイス取りゲーム。何もキャリアを積まない僕たちが、いつの間にかそのゲームに参戦していたんです。
目の前のイスが空いていて、たまたま座れた。たいてい次のゲームでは座れなくなるものなのですが、僕らは、次もその次も座り続けられた。
テレビのレギュラー番組が終わると告げられたときは戦力外通告かなと覚悟を決めていたんですが、マッコイ(斎藤さん)から、YouTubeやろうって。またゲームが始まったんです。

仲間とともに、何か面白いことをするという過ごし方は、小学生から変わってないという石橋さん。脚光を浴びたのは、高校3年生で出場した素人お笑い番組だ。
「そこで、僕は日本一面白い素人になれたんです。実際自分以上に面白い素人はいなかったと思っていて。そのまま前職のホテルマンを続け、普通に過ごそうと思ってたんですが、あれよあれよと60歳まで続いてきた。
でも、最近思うんです。俺、18歳のとき、日本でいちばん面白い素人だったよね。面白いから残ってきたんじゃないかなって(笑)」。
お笑い界というものがあるならば、そのトップ数人に数えられるほどの存在でも、よりどころのない思いとともに過ごしているのは、どこか新鮮でもある。が、その奢らない姿があるからこそ、多くの後輩に慕われているとも思わされる。
「最近、ゴルフ練習場で舘ひろしさんにたまたま会い、『俺、60ですよ、今年』と伝えたら『ふふっ』と一笑に付されて、『60歳? まだまだ鼻垂れだよ』って。舘さんは、70歳とのこと。格好良すぎる!
だから、読者の皆さん、大人への道のりはまだまだ険しいぜよ」。
石橋貴明●1961年、東京都生まれ。昨年6月、盟友のディレクター、マッコイ斎藤さんをはじめとするスタッフたちと立ち上げたYouTubeチャンネル「貴ちゃんねるず」は、早くも約157万人の登録者数。
柏田テツヲ=写真 倉科裕子=スタイリング 門脇直也(OFFICE SHOJI)=ヘアメイク 髙村将司=文