「看板娘という名の愉悦」とは……

※本記事は緊急事態宣言発令前に取材したものです。

世の中にはその空間にいるだけで、ドキドキワクワクする店がある。

今回訪れた「エスディ コーヒー(Sd Coffee)」も然り。舞台は住みたい街ランキングで人気急上昇中の北千住だ。

北千住の電気&銭湯カフェで、看板娘“たち”が愛情たっぷりの接...の画像はこちら >>

さらに、旧日光街道を右折する。

北千住の電気&銭湯カフェで、看板娘“たち”が愛情たっぷりの接客をしていた
通称「宿場町通り」。

江戸時代、この地には江戸近郊最大の宿場町「千住宿」があったのだ。やがて、目指す「エスディ コーヒー」に到着。オープンは4年前だ。

北千住の電気&銭湯カフェで、看板娘“たち”が愛情たっぷりの接客をしていた
店構えからして、早くも胸が踊る。

この日も若者客で賑わっていたが、土日は表に行列ができるとのこと。ところで、カフェのはずだが、店内は昭和レトロなグッズで溢れかえっている。

北千住の電気&銭湯カフェで、看板娘“たち”が愛情たっぷりの接客をしていた
奥にイートイン用の席がありました。

店主の鈴木保幸さんは昭和ど真ん中育ちの47歳。しかし、この量は一体どういうことでしょう?

「コツコツ集めていったら、こうなりました。うちのテーマは電気屋と銭湯。実家がある静岡で父親が以前、『鈴木電気』という電器店を営んでいて、店名の『SD』はその頭文字です。

さらに、僕が銭湯好きなので『S(銭湯)d(大好き)』という意味も込められています」。

北千住は銭湯が元気で、現在も8軒ほどが営業しているそうだ。

北千住の電気&銭湯カフェで、看板娘“たち”が愛情たっぷりの接客をしていた
富士山のペンキ画の前で思いを語る鈴木さん。

「今、日本には銭湯絵師さんが3人しかいませんが、これはその中でも最高齢の丸山清人先生の作品です。『カフェの壁に描いたのは初めてだよ』と笑っていました」。

失礼、本物の昭和遺産でしたか。ところで、看板娘はどちらに……?

「じつは2人いるんですよ。どっちも甲乙つけがたいスタッフなので、両方一緒に紹介してもらってもいいですか?」

おっと。これまでにない展開だが、店主がそうおっしゃるならイレギュラー対応でOKです。

北千住の電気&銭湯カフェで、看板娘“たち”が愛情たっぷりの接客をしていた
まずはメニューを拝見。

「ホッピーも置いていますが、北千住っぽさを味わうなら『下町バイスサワー』でしょうね」。お値段600円。

さあ、看板娘コンビのご登場です。


看板娘、登場

北千住の電気&銭湯カフェで、看板娘“たち”が愛情たっぷりの接客をしていた
「お待たせしました〜」。

左はアルバイト歴1年半の美咲さん。

右は1週間前に入ったばかりの美結さん。どちらも21歳の大学生4年生だ。

フードは「つけナポリタンドッグ」(1350円)が気になる。まったくイメージが湧かないが、鈴木さんいわく「ホットドッグってフランクフルトを食べるための料理。このメニューにもフランクフルトが入っているので、ドッグの仲間というわけです」。

北千住の電気&銭湯カフェで、看板娘“たち”が愛情たっぷりの接客をしていた
想像の斜め上を行くビジュアルでした。

しかし、これが異常に美味しい。生パスタはモチモチ、つけだれはアツアツ、フランクフルトは超ジューシー。バイスサワーにもよく合う。テラス席に吹く春の風が心地いい。

さて、インタビューは先輩の美咲さんから。足立区出身で、小学5年生から大学1年生までダンスに没頭する。高3の文化祭では、メンバーと一緒に振り付けや演出を考えたヒップホップダンスを披露した。

北千住の電気&銭湯カフェで、看板娘“たち”が愛情たっぷりの接客をしていた
最前列の中央で踊るのが美咲さん。

「自分の日常や洋服を紹介する画像をインスタに載せていたら、いつの間にかフォロワーさんが1万人を超えていました」。

北千住の電気&銭湯カフェで、看板娘“たち”が愛情たっぷりの接客をしていた
「毎日が楽しい」というインスタアカウント。

現在は、ここと近所のローソンを掛け持ちして働いている。ローソンのおすすめ商品って何ですか?

「とにかく、生クリームが美味しいんです。とくに『プレミアムロールケーキ』は味もコスパも最高だと思います」。

北千住の電気&銭湯カフェで、看板娘“たち”が愛情たっぷりの接客をしていた
美咲さんが絶賛する至高のロールケーキ。

続いて美結さん。やはり足立区出身で、小学校高学年から高校まで吹奏楽部に所属し、トランペットを担当していた。

「演奏曲はそのときに流行っているJ-POPが多かったです。SEKAI NO OWARIの『スターライトパレード』とか進撃の巨人の主題歌とか」。

初バイトは大学1年生のとき。珈琲屋OBの保木間店でデビューを果たす。アイスティーが金魚鉢で出てくるデカ盛りサイズの有名店だ。

北千住の電気&銭湯カフェで、看板娘“たち”が愛情たっぷりの接客をしていた
こちらは「くりーむソーダ」(770円)。

意外だったのは、美結さんがプロのダーツプレイヤーを目指しているということ。

日々練習に励んでいる。

北千住の電気&銭湯カフェで、看板娘“たち”が愛情たっぷりの接客をしていた
現在のスタッツ(1投あたりの平均点)は55〜60。

2人同時に取材というのは初めてだが、微笑ましい光景にも出会えた。

北千住の電気&銭湯カフェで、看板娘“たち”が愛情たっぷりの接客をしていた
先輩の美咲さんが新人の美結さんに仕事を教えている。

お酒と料理をいただいたのちに、あらためて店内を回ってみた。オリジナルグッズの中では、「北千住復刻ペナント」(1600円)が人気だという。

北千住の電気&銭湯カフェで、看板娘“たち”が愛情たっぷりの接客をしていた
北千住のシンボル、お化け煙突、タコ公園、千住葱などが描かれている。

なお、鈴木さんのお気に入りは昭和の時代を風靡したスポーツ自転車だ。子供の頃に買ってもらえなかったので、大人になってから中古品の車体を購入。パーツを集めて作り直したという。

北千住の電気&銭湯カフェで、看板娘“たち”が愛情たっぷりの接客をしていた
ウン10万円をかけて仕上げた渾身の1台(非売品)。

また、ホンダの「モトコンポ」も飾ってあった。シティのトランクに入ることで話題になったバイクだ。

北千住の電気&銭湯カフェで、看板娘“たち”が愛情たっぷりの接客をしていた
中古でも人気は衰えず、状態が良いものは50万近くする。

再びテラス席に戻る。向かいには日用雑貨を扱う店。

北千住の電気&銭湯カフェで、看板娘“たち”が愛情たっぷりの接客をしていた
昔はこういう店が町のあちこちにあった。

目と鼻の先には、先ほどのペナントにも描かれたタコ公園で子供たちが遊んでいる。

北千住の電気&銭湯カフェで、看板娘“たち”が愛情たっぷりの接客をしていた
のどかなひとときだ。

よく考えたら、美咲さんと美結さん。花を「咲」かせて人の縁を「結」ぶ名コンビだ。二人ともおっとりとした話し方で、非常に癒されました。

最後に読者へのメッセージをお願いしますね。

北千住の電気&銭湯カフェで、看板娘“たち”が愛情たっぷりの接客をしていた
今回頼まなかったメニューにもさまざまな驚きがありそうです。

 

※本記事は緊急事態宣言発令前に取材したものです。

【取材協力】
エスディ コーヒー
住所:東京都足立区千住4-19-11 サーパスビル1F
電話番号:03-6806-1013
www.instagram.com/sdcoffee1010

「看板娘という名の愉悦」Vol.149
好きな酒を置いている。食事がことごとく美味しい。雰囲気が良くて落ち着く。行きつけの飲み屋を決める理由はさまざま。しかし、なかには店で働く「看板娘」目当てに通い詰めるパターンもある。もともと、当連載は酒を通して人を探求するドキュメンタリー。店主のセンスも色濃く反映される「看板娘」は、探求対象としてピッタリかもしれない。

上に戻る

>連載「看板娘という名の愉悦」をもっと読む

石原たきび=取材・文

編集部おすすめ