「看板娘という名の愉悦」とは……
緊急事態宣言解除によって、飲食店でお酒が飲めるようになった。とはいえ、東京を含む7都道府県はまん延防止等重点措置に移行。
というわけで、勇んで向かったのは北区の十条駅。西口の駅前は再開発工事の真っ最中だった。
右手から始まる十条銀座商店街へ。

歩くこと5分で、目指す「ホルモン タンセイ」に到着。

店内は46席、最大16人の宴会スペースもある。

さあ、飲むぞ。おすすめのお酒を聞くと「私は“キンキン冷え冷え”の塩レモンサワーが好きです。ほかのお店のより飲みやすくて、お肉にも合いますよ」。473円。いただきましょう。

こちらは4月生まれの桜子さん(20歳)。

これは迷うな……。桜子さんが言う。
「とにかく、全部美味しいんですよ。個人的にはA5炙りユッケ、上タン塩、金モモ、上ハラミが好き」。

なるほど。では、「金モモ」(1650円)をいただこうかな。
一方で、ホルモンは丁寧に下処理を行い、部位によって保存方法を変えるというこだわりぶり。「濃厚ホルモン」のハーフ(528円)も注文した。

かくして、役者が出揃った。

看板娘が絶賛するお肉は、まず見た目が美しい。

これは「両面を3秒ずつさっと炙って食べてください」とのこと。

これだけでも十分美味しいのだが、なんとトリュフ入りの卵黄ダレが添えられている。

続いて「濃厚ホルモン」。

さて、桜子さんは大学2年生。しかし、コロナ禍の影響で授業はオンライン。大学にはほとんど登校していないという。
「上京したのも去年の8月。このお店は店頭の求人チラシを見て応募しました。店長をはじめ、みんな優しくてすっごい楽しいです」。
その店長、大森 直さん(24歳)が言う。
「人当たりがいいから飲食業、接客業に向いていますね。お客さんには常に笑顔で対応してくれるし、人と喋るのが好きなんでしょう。面接? 即採用ですよ。

桜子さんは140cm、大森さんは180cm。じつに40cm差の相棒だ。しかし、桜子さんいわく、「今年2mm伸びたんですよ。ふふふ」。その調子で行けば、50年後には150cmになりますね。
じつは桜子さん、大の肉好き。この職場を選んだのも美味しい賄い目当てでもある。

子供の頃の写真も見せてくれた。

「小学生時代は、おじいちゃんとおばあちゃんがやってる駄菓子屋さんに通っていたんです。AKBにハマっていて、とくに篠田麻里子が好きで、くじ引きのカードを毎日買っていました」。
南アルプス市といえば富士山のお膝元。

勉強は苦手だったが、「制服がかわいいから入りたい」という理由で猛勉強。甲府市内の県立高校を受験し、みごと合格した。軽音楽部に所属し、女子6人組のバンドを組んだ。
「バンド名は『Twinkle』で、キーボード担当でした。子供の頃からずっとピアノを習っていたんですよ。演奏するのは、ワニマとかいきものがかりとかのコピー曲です。たまに、合いの手とかは入れてました」。
合いの手というか、いわゆるコーラスですね。

高校時代の楽しかった思い出のひとつに修学旅行もある。
「沖縄に行ったんですが、ソーキそばやアイスのブルーシールが美味しくて感動しました。どっちも、甲府にないので」。

では、最後に読者へのメッセージをお願いします。

【取材協力】
ホルモン タンセイ
住所:東京都北区十条仲原1-25-13
電話:03-5948-9330
www.yakiniku-tansei.com/jujo/
好きな酒を置いている。食事がことごとく美味しい。雰囲気が良くて落ち着く。行きつけの飲み屋を決める理由はさまざま。しかし、なかには店で働く「看板娘」目当てに通い詰めるパターンもある。もともと、当連載は酒を通して人を探求するドキュメンタリー。店主のセンスも色濃く反映される「看板娘」は、探求対象としてピッタリかもしれない。
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石原たきび=取材・文