50歳でランニングデビュー。続ける秘訣は「自己ベストでなく今...の画像はこちら >>


「Running Up-Date」とは……

ランニングは歳を重ねてからも始められるし、楽しめるスポーツである。

そんな当たり前のことに気付かせてくれるのが、今回登場する金岡克宜さん。

アパレル畑を渡り歩いてきた、アラフィフランナーだ。


走る人は面白い。だから走る!

「走り始めた理由は、人なんです」と、金岡さん。

もう少し元を正すと、転職したアパレル関係の輸入代理店がスポーツやアウトドアの商材に強く、新たにランニングシューズの営業を担当することになったことが直接のきっかけだ。

「トポ アスレティックというブランドで、アメリカで2013年にスタートした比較的新しいシューズメーカーになります。ランニングシューズを扱うのであれば、もちろん走った経験があるほうがいいじゃないですか(笑)」。

50歳でランニングデビュー。続ける秘訣は「自己ベストでなく今日のベスト」を狙うこと

トポ アスレティックは、人間が本来備えている自然な足運びを促すナチュラルランニングのシューズ。その特徴からか、日本では大手のスポーツ用品店というよりも、ショップスタッフ自身がプレーヤーである小規模なアウトドアショップなどから関心を寄せられるケースが多い。

「トレイルランニングシューズもラインナップしていますからね。こうして知り合った取引先のランナーさんには、面白いというか、魅力的な人がとても多いんです。

そんなこんなで、誘われるまま走り始めました。だから走ることが目的というより、楽しい時間の過ごし方を教えていただいたという感覚です」。

50歳でランニングデビュー。続ける秘訣は「自己ベストでなく今日のベスト」を狙うこと

普段はロードを走っているが、より面白いのは月に1~2度走るトレイルだそう。

「高尾山に初めて連れて行ってもらったとき、都心での日常では目にすることのできない開かれた景色に身を任せた気持ち良さと、そこで交わす何気ない会話がとにかく新鮮で。

山を駆け下りる遊びのような感覚に、いい歳をして惹かれてしまいました」。


月間100kmへのチャレンジが毎月のルーティン

こうして“いっぱしのランナー”になったわけだが、50歳を超えて新たなスポーツに挑戦するフットワークの軽さは大いに見習いたいところ。

「長年サッカーをやっていて、チームで何かをやり遂げる達成感を魅力に感じてプレーしてきました。だから、正直に告白するとランナーって何を目標にして走っているのか、ピンときていなかったんですよね。

いざ自分が走るようになってからというもの、相手に対してではなく、自分に対してやり遂げるという意識なのだと気付きました。

ランニングの目標って人ぞれぞれでいいわけですし、そこに違いや面白味があると感じています」。

50歳でランニングデビュー。続ける秘訣は「自己ベストでなく今日のベスト」を狙うこと

年齢的なこともあって大会への出場や記録にはこだわらず、いつまでも楽しく笑いながら走り続けたい、と金岡さん。

「無理せず楽しく、がモットーです。強いて言えば長い距離を走れるようになりたいですね。ランナー特有の指標に月間走行距離というのがありますが、月に100kmを達成するのが最近の個人的な目標です。

平日であれば夕方~夜、大田区の多摩川沿いが定番のコースで、一度に走るのはだいたい1時間弱です。

月間100kmを達成するために、職場のある恵比寿から13kmの帰宅ランをすることもあります」。

50歳でランニングデビュー。続ける秘訣は「自己ベストでなく今日のベスト」を狙うこと

自分なりの壁を設定して、それをクリアするのが面白い。ファンランナーを自認しているが、なかなかどうして体育会系な熱血も感じさせてくれる。


自己ベストでなく、今出せるベストを目指すべし

「誰かと一緒に走ることが多いので、今までに付き合いのなかった人との出会いに恵まれるのがランニングのいいところですね。

おかげさまで仕事上での人付き合いにおいても、ランニングという共通の話題で会話ができるようになりました。レベルが違っても、ランナー同士であればお互いにリスペクトを持てるのがいい」。

50歳でランニングデビュー。続ける秘訣は「自己ベストでなく今日のベスト」を狙うこと

なかでも印象的だったのが、意識の持ち方をアップデートさせてくれた言葉との出合いだ。

「ランニングウェアブランド『エルドレッソ』の阿久澤さんと、ランニング系YouTuberのHAGIさんが始めた『ラウドランナーズ』の練習を見学させていただく機会がありました」。

その時、HAGIさんが発したというひと言が心に響いた。

「PB(自己ベスト)を狙うより、今出せるベストで走りましょうと声を掛けていたのですが、それって凄くいい考え方だなって。

毎回毎回、記録の更新を狙うばかりだと疲弊してしまいますし、そのときどきの心身の状態ってものがあるじゃないですか。

かたや、その日できる精一杯を尽くすかどうかは、心の持ち方次第で決まります。

他人と比べるのではなく、過去の自分といたずらに比較するのでもなく、今出せるベストに集中するわけです」。

50歳でランニングデビュー。続ける秘訣は「自己ベストでなく今日のベスト」を狙うこと

無理せず楽しく、自分の中のモノサシでやり遂げること。なんというか、50歳になってから走りはじめたランナーならではの、示唆に富んだスタンスではないだろうか。

自身が関わるトポ アスレティックの「ケガ無く長く走れるシューズ」というコンセプトと、どこか合致している点も興味深い。

自分らしく走るというのはやはり、それぞれに奥が深い。だから面白くって、不思議と飽きがこないのだ。

RUNNER’S FILE 40
氏名:金岡克宜 
年齢:52歳(1969年生まれ)
仕事:アパレル輸入代理店 シニアマネージャー
走る頻度:月間100km目標、約8km/回
記録:レースへの参加は特になし

連載「Running Up-Date」一覧へ

「Running Up-Date」
ランニングブームもひと昔まえ。体づくりのためと漫然と続けているランニングをアップデートすべく、ワンランク上のスタイルを持つ “人”と“モノ”をご紹介。街ランからロードレース、トレイルランまで、走ることは日常でできる冒険だ。 上に戻る

礒村真介(100miler)=取材・文 小澤達也=写真