味のある映画の登場人物は、往々にして意外なセンスが光る車に乗っている。いかにも“格好いい車”よりも、そのほうが案外、記憶にも残る。
たとえば、あの人が乗っていたこんな4台とかね。
■『デッド・ドント・ダイ』のアダム・ドライバーが乗っていた
スマート フォーツーカブリオ
映画『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』でダークサイドに堕ちたカイロ・レンを演じ、一気に世界的スターとなったアダム・ドライバー。彼がジム・ジャームッシュ監督の『デッド・ドント・ダイ』で乗っていた愛車が、スマートの「フォーツーカブリオ」だ。
全長約2.8mというマイクロカーに彼が乗って現れると、カンヌ映画祭の会場では笑いが起こったという。
パリッとした警官の制服を着て、真面目そうな眼鏡をかけた身長189cmの彼の頭は、カブリオでなければ天井につかえていたはず。コミカルでシュール。それこそがこのゾンビ・コメディである本作品の世界観を象徴するものでもあった。

アダム・ドライバーが乗ったのは2007年に登場した2代目モデル。1Lの小さなエンジンをリアに載せ、後輪を駆動させるRR。電動で開閉するソフトトップを備えている。
日本ではあまり売れなかったため中古車の台数は少ないが、100万円程度で十分買える。
■『トランスポーター』のジェイソン・ステイサムが乗っていた

ルノー 5(サンク)
映画『トランスポーター』といえば、どんな依頼品でも確実に運ぶ元特殊部隊で運び屋の主人公が、愛車のBMW 735iと演じるド派手なカーアクションが魅力のひとつ。
なのだが、実は主人公フランク・マーティン(ジェイソン・ステイサム)は、735i以外にもルノーの5をスクリーン上で運転していた。
劇中でいつもピカピカに磨いていた大切な愛車を敵に爆破された際、たまたま近くにあった5に乗って追いかける。

しかし、ルノーの中で当時最廉価なモデルとして開発されたサンクは、フランクの荒々しい運転に耐えられず、ついに白煙を上げてしまう。という手に汗握るカーアクションシーンだ。
最廉価モデルで社内デザインとはいえ、ヨーロッパでベストセラーになったサンク。1972年から1985年まで製造された。
後継モデルのシュペールサンクは、ランボルギーニ・カウンタックなど数々の名車をデザインしたガンディーニに託されたのだが、デザインはリファインする程度にとどめられた。
それだけサンクのデザインが完成されていたという証とも言えるだろう。現在は残念ながら中古車はほとんど流通していない稀少な存在。
■『探偵はBARにいる』で大泉 洋が乗っていた

光岡 ビュート
映画『探偵はBARにいる』シリーズでは、札幌市すすきののバーに入り浸る私立探偵を演じる大泉 洋。
その傍らには、松田龍平演じる助手の高田。彼の愛車が光岡ビュート(初代)、通称「高田号」だ。同映画は3作がリリースされているが、高田号は1作目からずっと出演している。
同映画はハードボイルドなストーリーの中に編み込まれるコミカルなやりとりが魅力だが、この高田号も話しかけないとエンジンがかからないなど、その演出にひと役買う重要な存在。
富山県に拠点をおく光岡自動車は、既存の車をカスタマイズして販売している企業。

ビュートは1993年に登場した同社の初期から続くモデル。
ジャガー Mk2をモチーフに,初代から現行型までずっと日産のマーチをベースとしている。マーチはもちろん日産のアップデートとともに変わっているのだが、ビュートの外観デザインは初代から現行の3代目までほとんど変わっていない。
ちなみに写真は現行型の3代目ビュート。
■『サンダーアーム/龍兄虎弟』でジャッキー・チェンが乗っていた

三菱 ミラージュ
大の車好きで有名なジャッキー・チェン。だからこそ、彼の映画には数々の車が毎回のように登場するのだが、特に三菱自動車が頻繁に活躍しているのはファンの間では有名な話。
本人も過去に三菱ファンを公言しており、かつて中国における同社のブランドキャラクターとしてジャッキーが起用されたこともある。
カーチェイスシーンが有名な『キャノンボール2』ではスタリオン、『デッド・ヒート』ではランサーエボリューションIIIやGTO、『プロテクター』にはパジェロやデリカなどが登場している。
コンパクトカーのミラージュも頻繁に登場しているが、特に『サンダーアーム/龍兄虎弟』では、2代目ミラージュをベースとしたコンセプトカー「ミラージュ・スパイダー」が選ばれている。
上の写真はその2代目ミラージュのハッチバックだ。

ちなみにミラージュ・スパイダーは愛知県岡崎市にある三菱オートギャラリーが所蔵しているとのこと。
籠島康弘=文