「本当に使えるアウトドアスパイスは?」●さまざまな種類が続々と発売され、戦国時代真っ只中のアウトドアスパイス市場。どれを選べば良い? いちばん使えるのは? スパイス迷子中の人もきっと最強の1本が見つかるはず!
キャンパーたちに絶大な支持を得ている大人気のトップ3アウトドアスパイスは、果たしてどれほど使えるのか? スパイス料理でビブグルマンも獲得した「スパイスカフェ」のオーナーシェフ、伊藤一樹氏が各スパイスを本気でジャッジする。
各スパイスを使った、10分でできる簡単キャンプ飯のレシピも合わせて紹介!

東京・押上にあるスパイス料理カフェ「スパイスカフェ」オーナーシェフ。「ミシュランガイド2016」でビブグルマンに選出。食をテーマにした世界一周の旅を行い、3年半で48カ国を巡る! 世界各国で使われる多種多様なスパイスに精通。著書に「SPICE CAFÉのスパイス料理」(アノニマ・スタジオ)。来春にはアウトドア料理本も発売予定。ソロキャン好き。
発売1年で10万本売れた奇跡の万能スパイス「ほりにし」の実力は?

――まずはこの「ほりにし」。現在50万本以上も売れているほどの人気商品です。

伊藤 香りに対して最初に感じたのは、鶏出汁と野菜出汁。ブラックペッパーとハーブ、醤油の香りも感じるけど、とにかく旨味のインパクトが強いよね。

――スパイスってそうやって風味をチェックするんですね! なんか格好イイ……。
伊藤 ワインと同じように、ファーストアタック、中盤、余韻で表現できます。実際に食べてみると……これはチキンコンソメを凝縮したような味だね。
――チキンラーメンみたいな味ということですか?
伊藤 そう。旨味が強いから、これさえあれば出汁がなくても旨いスープやヌードルが作れる。ほりにしにお湯とヌードル入れたら、めちゃくちゃ美味しいはず。
――出汁いらずなんですね!
判定! 伊藤シェフがジャッジした「ほりにし」の味は?
「良くも悪くも“ほりにし味”」
伊藤 チキンコンソメのような、旨味がガッツリとくるスパイスで、1本で味が完結するという評判も納得です。
ただ、逆を言うと、どんな素材を使っても“ほりにし味”になるということでもあるのですが……。旨味が効いていて出汁がいらないので、僕なら「南インド風トマトスープ」を作ってみるかな。
――流行の南インド料理! でもちょっと難しそうな気が……。

伊藤 簡単、簡単! 5分でできちゃうから。

「南インド風トマトスープ」(2人分)の作り方
【材料】
ほりにし 小さじ1
トマト 大1個
レモン 1/4個
ニンニク 1個
香菜 適量
唐辛子 3本
サラダ油 大さじ1
【作り方】
1 鍋にサラダ油を入れて熱し、潰したニンニクと半分に割った唐辛子を加えて、茶色くなるまで炒める。2 ザク切りしたトマトを加えてさらに炒め、水分がなくなったら「ほりにし」を加えてよく混ぜる。
3 水(200ml)を加えて、鍋の縁の焦げ目をこそげ落とし、煮立ったら、レモンと香菜を加えて完成。
伊藤 はい、どうぞ!
――本当にすぐ出来るんですね。(実食!)お~、出汁がなくてもこんなにコクのあるスープになるなんて! レモンの酸味と唐辛子の辛味が効いていて「ほりにし」っぽくないと言うか、ワンランク上の奥深さ!
伊藤 ポイントはトマトをよく炒めること。
――なるほど! これはキャンプのみならず、家でも作りたい味です!
魔法のスパイス「マキシマム」。ひと振りで料理は美味しくなるのか!?
――続いては宮崎の食肉店が開発した、ひと振りで味がキマるという「マキシマム」です。


伊藤 これはコンソメ的な旨味じゃなくて、出汁のような香りがする。食べてみると……かつお出汁に野菜、ニンニク、胡椒を感じます。
――なんか、和食っぽいですね。
伊藤 そうそう。同じ旨味でも、「ほりにし」とは違う、和の旨味。スパイス感はちょっと弱いかな。
判定! 伊藤シェフがジャッジした「マキシマム」の味は?
「和出汁とニンニクの風味が旨味を立体化」
伊藤 洋風の味付けのスパイスが多いなか、和のテイストというのが面白い。しかもガツンとニンニクを効かせていて、味に深みを出しています。旨味は強いけれど、食材の味を活かすことができるので、和食を作ってみてほしい。
――キャンプで和食って、新鮮ですね!
伊藤 煮物もできるけど、アウトドアなら炒め物で。

「鶏肉ときゅうりの炒め物」(2人分)の作り方
【材料】
マキシマム 小さじ1/2
鶏肉(こま切れ) 200g
きゅうり 1/2本
長ネギ 1/4本
かいわれ大根 適量
日本酒 大さじ1
サラダ油 大さじ1/2
【作り方】
1 鶏肉に日本酒を混ぜ込んでおく。
2 鍋にサラダ油を入れて熱し、乱切りにしたきゅうり、縦切りした長ネギ、鶏肉の順に入れて、それぞれ焦げ目をつける。
3 「マキシマム」を入れて和え、皿に盛ったら、お好みでかいわれ大根を飾る。追い「マキシマム」もおすすめ。
――これもすごく簡単ですね! スパイス単独ではニンニク感が強かったけど、料理に使って味わうと、イイ塩梅になりますね。
伊藤 ポイントはやはり、食材に焦げ目がつくぐらいまで炒めること。白米に乗せて丼にしてもいいし、おつまみにもおすすめですよ。
「黒瀬のスパイス」が20年以上も愛され続ける理由とは?

――最後は福岡の鶏肉専門店による「黒瀬のスパイス」です。

伊藤 3本の中でいちばん、スパイスやハーブを感じますね。コリアンダーやマジョラム、オレガノ系の香りがします。
――結構、複雑な風味ですね。

伊藤 あとほのかに香ばしい香りがするんだよなぁ。
判定! 伊藤シェフがジャッジした「黒瀬のスパイス」の味は?
「ブラックペッパーの刺激と醤油の旨味がクセになる!」
伊藤 ブラックペッパーと醤油が結構効いているので、少しさわやかテイストの醤油だと思って使うといいですよ。後味はすっきりしているので、こってりとした食材と相性抜群。例えばバターと合わせてバター醤油風にしても面白いでしょう。
――バター醤油! これは誰でも大好きな組み合わせですね。
伊藤 椎茸とししとうのバター焼きがおすすめです!

「椎茸とししとうのバター焼き」(2名分)の作り方
【材料】
黒瀬のスパイス 小さじ1/2
椎茸 大きめ4個
ししとう 5本
レモン 1/4個
バター 25g
【作り方】
1 フライパンにバターを入れて弱火にかけ、溶けたところで、1/4にカットした椎茸を加えて、弱火のままじっくり炒める。
2 椎茸が少し炒まったところで、ししとうを加えてさらに炒める。
3 「黒瀬のスパイス」を加えてさらに炒め、焦げ目がついたら、レモン汁をかけて完成。
――バターとスパイスってこんなに合うんですね!

伊藤 旨味と胡椒のスパイシーさがまろやかになりますよね。これも焦げ目をつけて、メイラード反応を起こすのがポイントです。
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スパイスセンサーを舌に持つ、伊藤シェフによる各スパイスの味わい分析は、一般人では到底導き出せない奥深いものだった。
また、どの料理も簡単でいて、普通の調味料ではなかなか実現できない味ばかり。大人気のスパイスゆえに同じ味ばかり……とならないよう、伊藤シェフのアドバイスを参考にしながらワンランク上のキャンプ飯をレパートリーに加えてみよう!
次回は、話題沸騰中の新星スパイス4本をチェックし、伊藤シェフが星付けする。コチラもお見逃しなく!
林田順子=撮影・取材・文