3年ほど前に始まったTSCMはちょっと古いイタリア車やフランス車好きの集まり。月に一度の週末、第三京浜都筑PAの隅っこに愛車を並べて、なんとなく会話を楽しむマッタリ系のゆるいミーティングである。そのゆるさが受けたのか、主催者のサイトーさんの人徳なのか、回を重ねるごとに参加台数が増えてしまい、公共の場であるPAから場所を移すことになった。
新たな会場となったのは東名厚木ICからほど近い「アツギトレリス」というショッピングセンターの駐車場だ。今回は「アニメで活躍する名車達」というテーマを掲げ、シトロエン2CV、フィアット500、そして生誕40周年を迎えたフィアットパンダがテーマ車に選ばれた。
東名の渋滞を避けるために少し早めに出たのが幸いし、横浜の自宅から1時間もかからずトレリスに到着した。
会場ではスタッフが1台1台誘導してくれた。どこかで見たことがある人だな、と思ったら前々回の連載で紹介した赤い右ハンドルの2CVに乗っているタナカさんだった。そう、都筑の常連さんたちがボランティアとして、時節柄の検温や受付で活躍していたのである。あの、ゆるかったTSCMの後継イベントとは思えない(失礼!)立派な運営ぶりに驚いた。
テーマ車のうちフィアット500はすでに結構な台数が到着していた。2CVは自分も含めてまだ数台ほど。似たような車だけどオーナーの気質が違うのだろうか(笑)。2CVが好きな人ならかなりの確率で500も好きに違いない。筆者もその一人だ。
今年で40周年を迎えたフィアットパンダもボチボチ集まっている。この連載の初回に書いた2CVとの購入を迷った車のリストに入れ忘れたが、パンダも当時、欲しかった車の一台だ。現代(70年代後半における)の2CVを目指して開発されたパンダは2CVとは対極的な直線デザインだがプリミティブな魅力という点では共通している、なんてことは他の記事で散々書かれていることだから深くは書くまい。
まだ、人のまばらな会場を歩いていたら本連載のレギュラーメンバーである友人、モリヤさんを見つけた。最近変えたばかりのLEDのウインカーランプを見せてもらう。目で見ると確かに光り方がLEDであったが、残念ながら写真にすると全くわからなかった。なのでLEDウインカーの掲載は割愛する代わりに謎のメーターだらけのインパネを載せてみることにしよう。
隣にはちょっと古い2CVが止まっていた。オーナーのエンドウさんは425cc、602ccの2CVを経て、7年ほど前にこの白い1968年の2CVを手に入れた。元は某女優さんの事務所の車だったという説もあるこの2CVは、6ライトになった直後のまだ遠心クラッチや慣性ダンパーが付いている425ccモデルだ。
自分の最終型と比べると細いバンパー、小さなテールランプを配したリアの佇まいが優美だ。インパネもシンプルで清々しい。
そして、エンドウさんが見せてくれた1965年制作と思われる2CVの冊子(カタログ?)がどれほど珍しいものかわからなかったので、会場にいるはずの日本シトロエンクラブのゼンジさんを電話で呼び出した。ゼンジさんは、昨年9月に行われたシトロエン100周年イベント「CITROËN CENTENARY GATHERING(シトロエン・センテナリー・ギャザリング)」の際、アークヒルズカフェに飾られていたカタログやミニカーの持ち主だ。それらのカタログやミニカーは彼のコレクションのほんの一部に過ぎない。しかし、ゼンジさんもこの冊子は見たことがないという。美しい写真に彩られた旅行記風の冊子がこちら。舞台はアフリカだ。
後日、気になって調べたところ、この冊子は「通常の意味でのカタログではなく、パリからチュニスを経由してケープタウンまで行く男の子と女の子の旅行日記。2人の旅行者からのコメントとともに、2CVが遍在する素晴らしい写真を通して保証された風景の変化。デリリウムと生命を混ぜ合わせたテキストは、実際にはクロードロワによって書かれました。」(出典:http://leroux.andre.free.fr/catalogue2cv.htm)というものだった。
原文サイトがフランス語だったのでGoogle翻訳に頼ってみたが、大体の意味は伝わるだろうか。クロード・ロワはフランスの作家で詩や小説のほかに評論や紀行文も多数残している。ライターとして作家を立てるあたりに広告代理店の影がちらつく。写真といい文章といいプロの仕事だ(と調べてみてから思った)。
そうこうしているうちに、会場には2CVや500、パンダなどのテーマ車以外にも、素敵な車たちが集まってきた。
真ん中のCXシリーズ2は「シトロエン・センテナリー・ギャザリング」にも展示されていたゼンジさんの愛車だ。
トラクシオン・アヴァンの奥にはいい感じのビートル、そして黒いパナールの姿もチラッと見える。
国産勢も負けていない。コスモスポーツや117クーペ、そして数百台しか生産されなかったリーザスパイダーの姿も。このあたりの車種のバラバラさ加減が、このミーティングの愛すべきところだ。
初回から数多くの旧車が集まったアツギスマイルカフェミーティング、まだまだ紹介したいことが盛り沢山につき、次回に続きます。