CD不況、インターネットの普及、iPodの登場、SNSの隆盛……ゼロ年代は音楽を巡る環境が激変した10年だった。そんな時代に音楽を聞いて育ち、現在音楽業界の最前線で活躍するアーティストたちは、ゼロ年代にどんな音楽を聴いてきたのか? ゼロ年代の音楽を特集した『ケトルVOL.44』で、こう答えている。


2012年4月、クリープハイプのVo.&Gt.としてデビューし、9月26日に5枚目のアルバム『泣きたくなるほど嬉しい日々に』の発売が決定している尾崎世界観が選んだのは、Hermann H. & The Pacemakersの『SIX PACKS』だ。

当時はお金がなく、ラジオをテープに録ったり、“レンタル落ち”のCDを50円、100円で買っていたという尾崎。『SIX PACKS』の中では『言葉の果てに雨が降る』というシングル曲が好きで、「メロディーはキャッチーだけど、展開がすごく複雑で。ただキャッチーなだけじゃ満足できないという、ひねくれた感受性の少年を包み込んでくれるような曲です(笑)」と語っている。

バンド結成10周年を締めくくる「きのこ帝国 10 th Anniversery Final」が9月20日(大阪・なんばHatch)、23日(東京・新木場STUDIO COAST)に公演予定のきのこ帝国の佐藤千亜妃は、CONDOR44の『Good Bye 44th Music』を挙げている。

ゼロ年代の後半はとにかく音楽のことで頭が一杯で、自宅でデモを作ったり、スタジオに入ったりし、さらに自分でライブをしたり、他人のライブを観たりするため、ライブハウスにほぼ毎日足を運んでいたという佐藤。CONDOR44のアルバムは、「サウンドや世界観にもちろん惹かれましたが、特に佐々木さんの声にハマった」そうで、中でも5曲目の『winter』は、移動時にヘビーローテションしているそうだ。

今年5月にアメリカツアーを行い、11月にはグラスゴー、マンチェスター、ロンドンなど7カ所のライブハウスを回るイギリスツアーを予定しているtricotの中嶋イッキュウが選んだのは、モーニング娘の『ベスト! モーニング娘。1』だ。

このアルバムが発売された2001年前後にモーニング娘に激ハマりし、モーニング娘のオーディションも受けたことがあるという彼女。当時、友達と一緒にこのCDを聴いたり、カセットにダビングしたり、ビデオに録画したりといった経験が、「楽曲やライブでのパフォーマンスの自由度をどう持つか、それとアーティストとしてどれだけ自由であれるか」という点で、今の音楽活動に活かされているそうだ。

◆ケトル VOL.44(2018年8月17日発売)
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