小手先の修正では誰も納得しない。問題の深刻さに見合った抜本的な改革が必要だ。
 岸田文雄首相は滞在先のブラジルで記者会見し、政治資金規正法改正について「今国会中の改正に向けて全力を挙げる」と重ねて強調した。
 6日にも党政治刷新本部メンバーと面会し、改革の方向性を協議する予定である。
 事の発端は、自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件だ。
 安倍派では、パーティー券収入のノルマを超えた分を議員側に還流する一方、政治資金収支報告書には記載せず、裏金化していたとされる。派閥が組織ぐるみで規正法を「悪用」していたことになる。
 抜け道が多く「ザル法」といわれてきた規正法の問題点が、裏金事件を契機にして次々にあぶり出された。

 論点として浮上しているのは政治家本人の責任を問う連座制の導入、パーティー券購入者の公開基準の引き下げなど、多岐にわたる。
 多額の裏金不記載が発覚しても収支報告書を訂正し、政治資金として届け出ればおとがめなしというのでは、「ザル」そのものだ。
 自民党が幹部らに支出している政策活動費も問題が多い。議員個人への寄付は原則禁じられているが、政党からの支出は例外的に認められている。
 二階俊博元幹事長には在任中の5年間で約50億円が渡った。何に使ったかの報告義務もない。

 総じて現行法に決定的に欠けているのは透明性である。
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 1994年の政治改革で、企業・団体献金の仕組みが見直された。
 「5年」「年間50万円」を限度に政治家の資金管理団体への献金を認める一方、「5年後の禁止」で合意し、その代わりに政党に公費を助成する政党交付金制度が導入された。
 だが、自民党の意向をくむ形で、99年の法改正でも、政治家が代表を務める政党支部への献金は認められた。
 献金を迂回(うかい)する抜け道がつくられたのである。
 民間の政策提言組織「令和国民会議」(令和臨調)がまとめた緊急提言は、抜け道をつくることによって改革が骨抜きにされることがないよう、資金の不透明なやりとりをなくすための抜本的な改革を打ち出している。

 独立性が高く強力な行政処分権限を持つ第三者機関の設置については、ぜひ各党協議で取り上げ、検討してもらいたい。
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 安倍晋三元首相の下で圧倒的な政治力と資金力を誇り、巨大派閥に発展した安倍派。
 政治資金パーティーの華やかさの裏で、組織ぐるみの「裏金」づくりを行っていたというのだから驚きだ。
 誰がどのような理由でいつから還流を始めたのか。
 安倍派の幹部は派閥の総会でも国会でも「知らぬ存ぜぬ」の一点張りだった。
 真相は依然として謎のままだ。

 岸田首相には真相を究明する責任がある。この問題をうやむやに終わらせてはならない。