もう限界-。教育現場からそんなSOSが聞こえる。

 公立の小中高校と特別支援学校で2024年度に精神疾患により休職した教員が7087人だったことが文部科学省の調査で分かった。全体の0・77%に当たり、過去最多だった前年度より減ったものの2年連続で7千人台となった。
 休職の要因は児童生徒の指導に関することが最も多く、職場の対人関係、業務内容に関することと続いた。
 沖縄県はより深刻で、過去最多を更新した前年度より減ったが、全体の1・56%に当たる247人で、割合は全国の倍である。
 沖縄が突出して多いのはなぜか。
 精神疾患で休職したことのある元中学校教諭の女性は、学級経営の他にも事務作業や生徒の問題行動への対応に追われ、家族との時間を犠牲にして働いたと振り返る。生徒のためという責任感から無理して業務をこなし、学校は「SOSを出しにくい場所だった」という。
 教育現場の長時間労働が問題になって久しい。経済協力開発機構(OECD)の調査によると、日本の教員は世界で最も長時間働いている。1週当たり小学校52・1時間、中学校55・1時間で、それぞれ国際平均を10時間以上上回る。
 国や自治体は、教育現場のこうしたSOSに真摯(しんし)に耳を傾けるべきだ。
 那覇市は「産業保健師」によるオンライン面談を実施している。
奈良県天理市は元校長らが保護者からの相談を受けるセンターを設置している。こうした取り組みを広げるとともに効果の検証が求められる。
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 職場環境の厳しさは教員採用試験の倍率にも表れている。25年度に採用された公立学校教員の選考試験競争率(倍率)は小学校2倍、中学校3・6倍、高校3・8倍でいずれも過去最低となった。小学校では7年連続で過去最低を更新している。沖縄は小学校2・8倍、中学校4・5倍だった。
 文科省は、大量採用時代の教員が退職したことに伴う採用人数の増加や、既卒の受験者が減ったことが主な要因と分析するが、働き方の問題と切り離せないだろう。
 教員は未来を担う子どもを教育するやりがいのある仕事のはずだが、「ブラック職場」のイメージを払拭できず、なり手不足に歯止めがかからない。
 事務作業などの外注化や共同化、部活動の地域展開(地域移行)など働き方改革を加速させるべきだ。
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 文科省は、教員不足の解消に向け教員免許を取得するために必要な大学の単位数を削減する案を中教審作業部会に示した。教員養成系の大学や学部以外でも免許を取得しやすい環境を整備し、多様な専門性を持つ教員の育成を図る。27年の国会での教育職員免許法改正を目指す。

 現場の教員は人手不足で、忙し過ぎると声を上げている。負担を減らすためには、大本の教員採用を増やすことこそ必要だ。
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