仮に「有事」になれば、住民の生命や財産を守ることは極めて難しい。冷徹な現実が改めて浮き彫りになった。

 国民保護法に基づく避難実施要領について、県内の6割超の市町村が実効性に疑問を持っていると本紙のアンケートに回答した。策定した市町村自身が、「机上の空論」と半ば認めたに等しい。
 「短時間で着弾するミサイルの種類を特定するのは困難」「情報伝達や移動の手段が確保できるか不確定な要素が多く、現場の運用レベルまで落とし込めない」。市町村の担当者は、困惑を隠せない。
 そもそもどんな事態が発生するかによって、住民避難の在り方は異なる。
 消防庁が想定している住民避難は、大きく分けて「武力攻撃事態」と「緊急対処事態」の二つだ。
 武力攻撃事態は弾道ミサイル攻撃やゲリラ・特殊部隊による攻撃など4類型に、緊急対処事態は化学剤・生物剤による攻撃や航空機による自爆テロなど4類型に分かれる。
 日本がなぜ攻撃を受けるのか。どこからミサイルが飛んでくるのか。なぜ避難しなければならないのか。そうした疑問にふたをした上で進められる計画に、リアリティーはない。いたずらに危機感をあおっているのではないか。

 多くの自治体は、ただでさえ人員不足に悩んでいる。毎年のように起こる大雨や台風など自然災害への備えを優先するのは当然だろう。
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 政府は国民保護計画の実効性を高めようと、シェルターや公共インフラの整備を急ピッチで進めている。
 しかしどれだけ対策したとしても、武力攻撃を受けるような事態になれば、被害は免れない。まして米軍や自衛隊の基地が集中する沖縄は、リスクが高い。
 近隣の国から弾道ミサイルが発射されれば、沖縄までわずか10分ほどで届く。多くの住民は避難する時間的余裕はない。子どもやお年寄りならなおさらだ。
 政府は台湾有事などの際に、先島の住民ら12万人を6日間で九州・山口に避難させる計画だが、十分な数の輸送手段や運航スタッフを確保できるかは不透明。天候が荒れたり、海上封鎖されたりすることも想定される。
 避難先に到着したとしても、滞在が長期化した場合の生活支援をどうするかの議論は深まっていない。
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 「台湾有事」を巡る高市早苗首相の発言以来、中国との関係は冷え切り、改善の兆しは見えない。
北京で今月行われた米中首脳会談では、習近平国家主席が高市首相を名指しで批判したとも報じられた。
 高市氏は対話の重要性を強調するが、むしろ抑止力強化に傾いている。
 どんな精緻な計画を立てようと、いったん戦闘が始まれば、行政ができることはごく限られる。アンケートの結果は、そう示唆していると言えよう。外交努力で緊張を緩和すること以外に、国民を守る有効な手だてはない。
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