「アウトサイダー」(’20)/清春
コロナ禍になって実に4度目の4月を迎えた。10年前も20年前も毎年、当たり前のようにライヴに行き、いつも観ているアーテイスト以外の出会いの機会にもワクワクした。まさかこんなことになるとは思わず、あの年の2月24日“今年こそはワンマンが観たい! アーティスト5選”というコラムを書き、その2日後にライヴイベントの自粛が言い渡されることに…。
「GOOD BYE」(’96)/hide
春はhideを二段階で思い出す。《また 春に会いましょう》なんて言葉を残すから、寒さが和らぎ始めるとまるで草花が土の中で芽吹く準備をするかのように“春”を意識する。じゃあ、それって具体的にいつ? そう考えると、結局それは“5月2日”に行きつくんだよね。そして、告別式が執り行なわれた築地本願寺にて出棺の際流れたのが「GOOD BYE」。
「Thanx」(’95)/DIE IN CRIES
1995年に解散したDIE IN CRIESのことがたまらなく好きだった。Vo.KYO(現D'ERLANGER)、Gu.室姫深(元THE MAD CAPSULE MARKETS)、B.TAKASHI(元THE ACE)、Dr.yukihiro(現L'Arc~en~Ciel)からなるこのバンドと共に過ごせたのはわずか2年。今でも結論のでないことがある。
「桜の花咲くころ」(’01)/ ILLUMINA
綺麗な花はたくさんあるけれど、桜の花にこんなに日本人が胸を弾ませるのは、陽射しがやわらかになる季節であるとともに、きっと一年の中でほんのわずかな期間にしか出会えない美しさだから、より人の記憶に残るのだろう。その記憶と自分の思い出が重なったら、それは何倍も美しくも悲しくも楽しくも、胸に刻まれるに違いない。2001年にリリースされたILLUMINAの3rdアルバム『ACCIDENT』に収録されている「桜の花咲くころ」は、Vo.Naoが亡くなった祖母を想って作った曲だ。心のざわめきを畳み掛けるように高ぶらせるドラミングと、切なさが頂点に登り詰めるような文字通りの“泣きのギター”が、とても印象的なドラマチックなナンバー。そして、悲しい曲ではあるけれど素敵だなと思ったのは、歌詞に反映されたNaoの考え方。《愛する人のもとへ静かに》《不思議と涙こぼれてきたよ それが彼方の幸せでも》もちろんシチュエーションはそれぞれあると思うが、そんなふうに思えたら、きっと救われる人はたくさんいるんじゃないか、そう思ったのです。また《こんなに晴れた》《夜は雨になり》と、その“春の一日”を特定する描写が、よりリアルに切ない気持ちに拍車をかけて感情移入してしまう。さっき久しぶりに聴いてみたら、何を思い出したのか涙が勝手に流れていました。本日、窓の外は快晴の青空、そして夜は雨に。今日の日も、誰かの“桜の花咲くころ”としてインプットされたかもしれない。
「女神」(’21)/ALICE IN MENSWEAR
あれから一年が経とうとしている。昨年の4月15日、ALICE IN MENSWEARのKOJI(ex.La'cryma Christi)が旅立った。このコラムでもその後“追悼”の記事を書かせてもらったが、今年の春は特に、冷たい雨の降ったあの日を思い出す。このユニットはVo.michiとGu.KOJIからなっている。それゆえ、メンバー同士の絆や友情、喜びや悲しみetc..全てが“ふたり”での共有になるため、その結び付きは普通のバンド編成とは比べられないのだ。特にこのふたりにとって、その片方の翼をなくした残されたひとりの喪失感とツラさは計り知れない。2ndアルバム『GRAPPLE THE WORLD』収録の「女神」を聴くたびに、同じことを思う。michi.にとっての女神はKOJIだったのだと。この曲で、人間らしい弱みを曝け出すことを厭わず、愛や癒しへの枯渇を純粋に求めたというmichi.に、強がることも大事だし理想を追いかけることも大事だけど、時には素直な気持ちを曝け出すことで、心通わせたり強くなれる、という解釈で受け止めたKOJI。《君が笑う声で癒されて 僕の歌声で守る世界》という歌詞には、ふたりの笑顔しか重ならない。この一年を経て感じたのは、KOJI不在の今、ファンの存在がmichi.にとっての“女神”になっていること。とても美しく羨ましいほどの関係性だ。だから、“君”の居ない世界で生きたとしても、これからも“僕”の命は輝き続けてほしい、心からそう願っています。
TEXT:K子。
K子。 プロフィール:神奈川・湘南育ち。“音楽=音を楽しむ”ことを知り、好きな音楽の仕事がしたい!とOLをやめてオリコン株式会社に9年所属。旅行業界に転職後、副業で旅・エンタメ関連のWEBで執筆するも、音楽への愛が止められず出戻り人に。愛情込めまくりのレビューやライヴレポを得意とし、ライヴシチュエーション(ライヴハウス、ホール、アリーナクラス、野外、フェス、海外)による魅え方の違いにやけに興味を示す、体感型邦楽ロック好き。最愛のバンドがついに復活してくれてもう泣くしかない。