主人公・紫式部/まひろは、千年の時を超えるベストセラー『源氏物語』を書きあげた女性。
道兼といえば、初回放送で主人公・まひろ(吉高由里子)の母・ちやは(国仲涼子)を殺害したことで、一気に作中屈指のヒール的な存在に成り上がった。玉置は「事前に台本をいただいて、過去の第1回大河ドラマを見ていてもあまりない流れになるなと。
撮影に対してのプレッシャーはなかったものの「衝撃的なシーンではあるので(視聴者の中で)『今後もこういう描写が続くなら今回の大河ドラマは見なくていいや』と思われたら自分の所業がきっかけなので、第1回で切られちゃったら嫌だなと思っていました」という不安はあったという。それでも想定を超える反響だったといい「本当?って思いましたよ。本当に?って(笑)。自分でも返り血を浴びた道兼を見て『こいつ怖っ』て思ったんで(笑)」と笑顔で振り返った。
その後の道兼は、各回で見せる表情が違うほどに激動の生涯を送った。父・兼家(段田安則)の野心のため、一家の“汚れ役”を務めたものの、その努力は報われることなく、兼家は後継者に長男・道隆(井浦新)を指名。これには道兼も我慢ならず「この老いぼれが、とっとと死ね!」と不満を爆発させた。
父の死後、喪に服さず自暴自棄になっていた道兼。そんな中で救いの手を差し伸べたのは弟の道長(柄本佑)だった。「まだこれからではありませぬか。
「道長のおかげで、道兼は少しだけ真人間になれた」。疫病が蔓延するなか、道兼は道長へ「汚れ仕事は自分の役目」といい、救護施設である悲田院へ向かった。
そんな道兼だが、その代償として病に倒れてしまう。そして迎える最期。実は、道兼と道長のシーンは、本来の台本では直接的な接触が予定されていなかったという。それを柄本の「道長は兄に寄り添うはずだ」というアイデアによって、道長が道兼の背中をさするという、強固な絆を感じさせるシーンとなった。
「道長は自分という存在をブレずに貫いてきた人物。
そう感慨深く回想した玉置は「自分が死ぬシーンを撮影したとき、実はカメラが止まってからも咳が止まらなくなっちゃったんですよね。それを佑くんがカメラも止まってるのにずっと背中をさすってくれて『つらいよね、つらいよね』って言ってくれたことを今でも覚えています。そのときに自分の役割、道兼の死というものを全うできたと思えて、とても幸せな気持ちになりました」とうれしそうな表情で撮影秘話に花を咲かせていた。