住人(アルジ)は、愛知県名古屋市に暮らす2人の小さな子どもがいる4人家族。
窓はほぼなく閉じた印象を受けるが、中に入ると一転、32帖のリビングダイニングにはL字の大きな窓があり、開放感は抜群。窓の外には、傾斜面を活かした岩の風景が広がり、家が自然と調和しているように見えるが、実はもともと、ここは家を建てられない土地だったという。
大手住宅メーカーの同期だったアルジ夫妻。結婚後は賃貸マンションで暮らしていたが、夫が独立するタイミングで家を建てることを決断した。土地の予算は1000万円以内と決めて探し始めたところ、800万円で古家付きの変形地を見つける。だが、道路に接する間口が狭く、40メートルも奥まったところに家がある、いわゆる旗竿地だった。しかも、竿にあたる細い道の部分が長すぎるという理由で建て替えができない「再建築不可物件」でもあった。そこで、隣接した手前の土地も購入し、竿の長さがほぼ半分になったことで建て替えが可能になったという。しかも土地は交渉の末、2つ合わせて、750万円で購入することができた。
しかし、今度は木が好きで「伝統工法で建てたい」という建築家の夫と、「今風な家がいい」という妻で意見が対立してしまう。そこでお互いが納得できる現代的な機能も備えた、木のぬくもりあふれる伝統工法の家を完成させた。
L字型の大きなキッチンは、夫が厳選した水に強い栗と桜の木を使って大工が使った特注品。そんな夫のこだわりがある一方、妻にとっても便利な設計になっていて、買い物帰りは玄関から直接キッチンへ荷物を運べるという楽な動線が作られている。さらに、妻が一番気に入っているのが、「ポットフィラー」というコンロの前の壁から直接水が出る水栓。わざわざシンクに移動しなくても、コンロの鍋に直接水が注げるのが、便利なのだそう。
木のぬくもりと機能性を兼ね備えた家。夫は「今は柱なども白っぽいですが、これもだんだんと年数が経つにつれて褐色っぽく変わっていくはずなので、そこが楽しみです」と木の家ならではの醍醐味を語る。