作曲家・久石譲による「スタジオジブリ フィルムコンサート」のワールドツアーファイナル公演が7月16、17日の両日、東京ドームで開催された。久石がコンポー ザー・イン・アソシエーションを務めるイギリスのロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団(RPO)との共演で、宮崎駿監督の『風の谷のナウシカ』(1984年)から最新作『君たちはどう生きるか』(2023年)まで全11作品の楽曲を演奏。
追加公演を含む3公演を行った。チケットは完売で、計13万人のキャパシティに118万枚のオーダーという大きな反響があった。

 1曲目は久石が初めて宮崎監督とタッグを組んだ『風の谷のナウシカ』。久石は指揮とピアノの“一人二役”でRPOを率いる。そこに東京混声合唱団とリトルキャロルのコーラス、ニューヨークから来日したブルックリン・ユース・コーラスの瑞々しい歌声が重なり、冒頭から観客を魅了した。

 『魔女の宅急便』は久石が考えた絶妙な映像の編集と音楽の構成によって、映画のストーリーを追体験できる構成。短い組曲でありながら、観客の感情は一気に高まった。続く『もののけ姫』では映画同様、印象的かつ神聖な太鼓の音でスタート。メインテーマでは、英・ガーディアン紙から「鍛え抜かれた鋼の強さとベルベットの優しいぬくもりを併せ持つ歌声」と称賛されたソプラノ歌手、エラ・テイ ラーがのびやかな歌声を響かせた。

 さらにマンドリンの音色が特徴の『風立ちぬ』では、マンドリン奏者、マリー・ビュルーが久石と息ピッタリの演奏。主題歌がヒットした『崖の上のポニョ』は、圧巻のコーラスと管弦楽で壮大な交響曲に昇華した。

 中盤、アリーナにはマーチングバンドの隊列が登場。
なんとこのツアーファイナルのためだけに集まった、陸・海・空の自衛隊約200人による合同音楽隊が『天空の城のラピュタ』をアリーナを歩きながら演奏。タイトなリズムと演奏に観衆から大きな拍手が送られた。

 その後、久石のピアノソロをフィーチャーした『紅の豚』『ハウルの動く城』に続き、『千と千尋の神隠し』で登場したのはボーカルの麻衣。『風の谷のナウシカ』で主人公ナウシカの少女時代を歌ったボーカリストが、透き通った歌声で聴衆の心をつかんだ。

 本編フィナーレは『となりのトトロ』。ステージに麻衣とエラ・テイラーが再び登場し、合唱団とともに主題歌を歌いあげると、会場の一体感も頂点に達した。

 終了後も観客の熱気は収まらず、久石が満面の笑みで歓声に応え、アンコール。1曲目に選んだのは 2023年公開の最新作『君たちはどう生きるか』のメインテーマ「Ask Me Why」。日本はもちろん世界でも演奏回数が極めて少ない曲。久石のピアノソロを軸とした特別バージョンが披露された。続いて『紅の豚』の「Madness」、『もののけ姫』の「アシタカとサン」を演奏し、熱狂に包まれたまま閉幕。東京ドームでオーケストラコンサートが行われるのは今回が初めてで、久石譲が音楽史に大きな歴史を刻んだ2日間となった。
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