意見書では「現代において、企業は社会を構成する一員であり、企業の活動が市民生活等に様々な影響を及ぼすことから、近時、企業は、その社会的責任(CSR)を強く意識することが求められており、その一部とも言える説明責任は、企業が果たすべき重要な責務として、コーポレートガバナンス・コードにも盛り込まれている。説明責任を的確に果たすことは、企業における判断・意思決定過程の透明性を確保し、経営判断に対する信頼性を高め、企業の持続的な成長と企業価値の向上を図るためにも重要であり、不祥事対応においては、自浄作用・自主自律の現れでもある」と説明。
続けて「そのため、日本テレビにおいても、ガイドラインにおいて、透明性の確保などを謳っている。 他方、いくら透明性や信頼性を確保するためであっても、企業が保有する情報・把握している事実をすべて開示すればよいというものではなく、そこには自ずと制約がある。とりわけ、社会全体における人権意識の高まりを受けて、個人情報やプライバシーの保護が一層強く要請されている今日にあっては、より慎重な情報及び事実の開示が求められると言うべきである。この説明責任と人権擁護は、いずれも企業が果たすべき重要な責務でありながら、いわば二律背反の関係にあり、どのようにしてバランスを取るかは極めて難しい問題である」とした。
その後、人権・個人情報の保護などをめぐる最近の動向、プライバシー保護の考え方、ネット社会の傾向・特性などに触れながら「本件対応、とりわけ、プライバシー保護を理由として本事案の詳細だけでなく、コンプライアンス違反の種別に対する言及も避けた対外説明の適否について検討するに、本事案の内容を踏まえ、上記に掲げた様々な要素等を考慮した場合、コンプライアンス違反ということ以上に具体的な説明を行うことは難しく、本件に関する説明としてはやむを得ないものと思われる」と判断。
その上で「これに対して、隠蔽・矮小化ではないかとの指摘のほか、判断が恣意的ではないか、降板の理由が不明であり基 を示すべきではないか等の批判が向けられるところである。 この点、降板の判断に至るプロセスについては、前述したとおり、透明性・公正性は確保されており、隠蔽・矮小化・恣意的との批判は当たらないものと考える。また、基 に関しては、事案等に応じた判断とならざるを得ないので、明確に示すことは難しいものの、単にコンプライアンス違反というにとどまらず、社会常識と番組の趣向等に照らして、社会の公共財ともいえる放送に出演することがおよそ適切ではない場合という一定の指針を示すことは検討してよいのではないかと思われる」とした。
そして「また、報道機関として国民の知る権利に応える必要がある、日頃の報道では関係者を実名で報じることもあるのだから本件で何ら言及しないのはダブルスタンダードではないか、といった指摘もなされている。
委員長は長谷川充弘弁護士(前証券取引等監視委員会委員長)、委員は、鈴木秀美慶應義塾大学名誉教授、江黒早耶香弁護士、熊田彰英弁護士の2人となった。