今作は東海テレビ制作、フジテレビ系で4月期に放送された『ミッドナイト屋台~ラ・ボンノゥ~』の続編。天才シェフ・遠海翔太と寺の元副住職である方丈輝元の“最強バディ”が横浜を舞台に、夜な夜な屋台を訪れた人のお腹と心を満たすヒューマンドラマ。
生真面目なビルの警備員、鏑矢丈二を演じている勝村。クランクインは輝元との共演シーンだった。控え室から制服に身を包んだ勝村が登場。スタッフからの拍手に帽子を取って一礼し、撮影が始まった。しかしここから中村はもちろん、多くのスタッフも思いもよらなかった「勝村劇場」の幕が開いたのだった。
この日撮影するのは、星羅(永瀬ゆずな)が姿を消したと聞かされた鏑矢が、慌てて探しに行こうとする第1話のシーン。立ち位置などを確認した上で、中村と勝村のリハーサルがスタート。探しに行こうとする鏑矢を輝元が「もう見つかったんで大丈夫です!」と制止し、鏑矢も一安心…という流れになる予定だったのだが、中村のセリフの後も勝村はアドリブを繰り広げ、中村の制止を振り切り走り出す。予想外のアドリブに中村も大慌て。
「いいですねぇ、じゃあ、もう一度やってみましょう」と監督に促され、先ほどの勝村の動きを意識しながら2度目のリハーサルに臨んだ中村だったが、そこは百戦錬磨の勝村。今度はまったく逆の方向へと走って行く。予想もしなかったその動きに、「ちょっと!ちょっと!!」と言いながら追いかけるので精いっぱいだった。
この後のシーンでも、気付かぬうちに勝村に真後ろに立たれて中村が本気で驚くなど、勝村のアドリブ満載で撮影が進む。中村を翻弄(ほんろう)するように全力で動く勝村の演技に、「そうだった!鏑矢さんはどんな時でも一生懸命なんだ!」と言いながら天をあおいだ中村。実はこのシーンの撮影前に、監督から「盛り上げてください」と耳打ちされていたという勝村。最初のシーンからアクセル全開で演じてくれたが、「仕事に忠実すぎて傍から見るとちょっとヘンな」鏑矢丈二というキャラクターが、こうして撮影初日に確立された。
第3話では、そんな鏑矢のちょっぴりビターな過去が明かされることになる。
――ビルの警備員・鏑矢丈二役ですが、どんなことを心がけて演じていますか?
鏑矢さんは職務をまっとうするプロフェッショナルな方なんですね。ビルの警備でも、常に一生懸命。自分としてはあまり目立たないように演じようと思っていたのですが、クランクインの日に監督がやって来て、「盛り上げてください、コミカルに」って、耳元で囁いて去っていったんです(笑)。
――神山さんや中村さんとは初共演とのことですが、印象は?
すごくちゃんとしてる2人ですよね。撮影に熱心に取り組むのはもちろん、休憩時間にも気遣ってくれるんです。現場の近くにおいしいコーヒーのお店があるんですけど、「よかったら、コレ飲んでください」って、サラッとそのコーヒーを差し出してくれるんですよ。そんな気遣いを年上の僕にだけでなく、たくさんの人にしているんですよね。あの2人が一番忙しいはずなのに…。ウチの娘と同世代なんですけど、「いやぁ、しっかりしてるなぁ」と思いましたね。
――勝村さんはご自身でも料理をされるんですか?
中学生の頃からずっと部活動をやっていたから、猛烈に空腹で帰宅するわけです。それで「毎日母親に作ってもらうのも悪いなぁ、だったら自分で作っちゃえ!」みたいな感じで、自炊がスタートしました。余っていたご飯を使って、チャーハンを作ったのが最初かな。市販の「チャーハンの素」を使うと劇的においしくなったので、しょっちゅう作っていましたね。だから今でも料理はしています。
――第3話では鏑矢にスポットが当たりますが、見どころは?
第3話では鏑矢の過去が明らかになります。リストラされて現在はビルの警備員をしているわけですが、以前の職場のお客さまに気付いてもらえず、ショックを受けるんですね。心の底では昔のことを忘れられずにいる鏑矢に、翔太と輝元がどう寄り添うのか。鏑矢の悲しみや喜びといった心の動きを上手に物語にしていただいているので、そんなところに注目してもらえればと思います。
――視聴者の皆さんへのメッセージをお願いします。
勝村 「食」って、人にとっての基盤になっているわけじゃないですか。それは栄養面はもちろん、「誰と、何を食べたのか」という思い出という意味でもいえると思います。うれしかったことや悲しかったことなど、料理には人生が投影されていますよね。翔太と輝元にもそれがいえるわけですが、彼らは料理で誰かを浄化するだけでなく、自分たちも浄化しているというのが、このドラマの魅力だと思います。皆さんもこのドラマをご覧になって、そんな気持ちになってもらえればとうれしいですね。
■第3話あらすじ
翔太(神山智洋)と輝元(中村海人)の屋台はなかなか売上が伸びず、月末には家賃の支払にも事欠く始末。輝元は大家の桂華(浅野ゆう子)から警備員のアルバイトを命じられ、鏑矢(勝村政信)の指導の下で働くことに。それまでは鏑矢のことを「真面目に働く警備員さん」程度にしか考えていなかった輝元だが、一緒に働いてみると鏑矢が細部にまで気を配り、お客さまやビルで働く人たちが気持ちよく過ごせるよう環境を整えていたことに気付かされる。
実は以前の鏑矢は、横浜の老舗ホテルで40年以上働いていたベテランのドアマン、まさに気遣いのプロだったのだ。そんなある日、ホテルをよく利用していた老夫婦を見かけた鏑矢は思わず声をかけるが、彼らが自分を覚えていなかったことにショックを受ける。「誰も自分のことなど気にも留めていなかったのか…」。すっかり落ち込んでしまった鏑矢のために、翔太と輝元は彼の好物である卵を使った料理で鏑矢のことを励まそうと考えるのだった。