山田監督の91本目となる本作。
物語は、終活に向かう85歳のマダム・高野すみれ(倍賞)と、タクシー運転手・宇佐美浩二(木村)が“たった1日の旅”をともにする姿を描く。東京・柴又から神奈川・葉山の高齢者施設へ向かう道すがら、すみれは「東京の見納めに寄りたい場所がある」と浩二に依頼。幼少期からの思い出の地を巡るうち、すみれは初対面の浩二に自らの壮絶な人生を語り始める。やがて二人の心は通い合い、その出会いは互いの人生を大きく動かしていく。
東京国際映画祭のセンターピース作品は、オープニング、クロージングと並ぶ目玉枠であり、特別な存在感を示す作品として映画祭の中盤を彩る。山田監督は「今の東京を映し撮るように作った『TOKYOタクシー』を東京国際映画祭で上映できることをうれしく思います。先の見えないこの時代に、観る人の人生に寄り添い、光を灯すような映画であれば」とコメントを寄せた。
山田監督と東京国際映画祭との縁は深い。倍賞が出演した『男はつらいよ お帰り 寅さん』は第32回でオープニング作品として上映され、木村と監督がタッグを組んだ『武士の一分』は第19回のオープニング・イブを飾り、邦画として映画祭初のオープニング上映を果たした。