NHKでは、30日深夜に『山口一郎 “うつ”と生きる 紅白完結編』(深2:18)を届ける。

 5人組ロックバンド「サカナクション」が、NHK紅白歌合戦に帰ってくる。
2015年に発表した代表曲「新宝島」、そして今年大ヒットした「怪獣」を披露する。実に12年ぶり、2回目の出場となる紅白だが、サカナクションのフロントマン・山口一郎さんのこれまでの道のりは決して楽なものではなかった。

 2022年7月から、サカナクションは、2年間にわたり活動を休止していた。ボーカルを務める山口が、うつ病を患ったためである。山口はこの間、うつ病を抱えながらどう音楽を続けていくか、模索してきた。そこで生まれたのが、今年2月に発表され、アニメ「チ。 ―地球の運動について―」(NHK)のオープニング曲・主題歌となった「怪獣」。

 番組では、NHKスペシャル「山口一郎 “うつ”と生きる~サカナクション 復活への日々~」(2024年5月5日放送)、そして「山口一郎 “うつ” からの再出発~サカナクション「怪獣」との格闘~」(2024年10月25日)で、うつ病を抱えながら音楽活動を続ける山口に密着し、その中で「怪獣」の創作活動に取り組む姿をドキュメントした。結局、番組では、「怪獣」を完成させることができず、ワンコーラスのわずか2分3秒の演奏という未完のパフォーマンスで終わり、無念のラストシーンで終わる。

 今年11月14日、「第76回NHK紅白歌合戦」の出場歌手発表の知らせを聞いて、再び山口の取材を始めた。前回の取材から1年半あまり、現在は“うつ”とどのように向き合い音楽活動を続けているのか、未完の「怪獣」はどのように完成に至ったのか、そしてサカナクションは紅白でどんなメッセージを伝えようとしているのかー。山口は紅白出場の発表当日、自身のSNSで「山の尾根の上を歩くように、上がったり下がったり揺れ動いてきたここ数年の葛藤」という表現でこれまでの日々を振り返っている。


 番組では、山口に独占ロングインタビューを行い、心の稜線を描いていく。さらに、サカナクションの紅白本番に向けたリハーサルにも密着取材を行い、メンバーの思いにも迫る。日本では、15人に1人がうつ病を抱えていると言われる。山口の“うつとともに生き、歌い続ける姿は、今を生きる私たち自身の物語でもある。

■山口一郎
今回のドキュメンタリーで「自分たちがどう生きてきているか」、「どんなふうに音楽を作ってきているか」という背景にあるストーリーをたくさんの人に観ていただいたことで自分たちの曲の聴かれ方が変わることを実感しました。

しんどい日々の中で作ってきた音楽がたくさんの人に聴かれることになったのは本当に報われましたし、感謝の気持ちが強いです。紅白歌合戦のステージでは“うつ”という同じ病気で苦しんでいる人たちだったり、病気ではなくても今本当に苦しんでいる人たちに対して、サカナクションの音楽を少しでもお届けできたらと思っています。
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