■実は便利な“謎ボタン”
多くの電卓には、画面に表示される数字とは別に、数字を一時的に記憶できる「メモリー」機能がある。「M+」は計算結果をメモリーに加算し、「M-」は減算するボタンだ。複数の商品代金を合計したり、合計額から値引き分を差し引いたりする場面で活躍する。
「1回計算して『M+』を押すと、その結果がプラスの箱に入ります。続けて計算して『M+』を押せば、またプラスの箱に入る。そこから引きたい時は『M-』を押します。最後に『MR』(メモリーリコール)を押すと、足した分と引いた分が合算された答えが出てきます」(カシオ計算機・玉本真一さん/以下同)
たとえば「100×5+50×6−20×5」を計算する場合、手順は以下のようになる。
1)「100×5」「M+」と押し、メモリーに500を加算。
2)「50×6」「M+」と押し、300を加算。
3)「20×5」「M-」と押し、100を減算。
4)最後に「MR」を押すと、答えの「700」が表示される。
一方、「M+」「M-」とは少し違う働きをするのが「GT(グランドトータル)」だ。「M+」「M-」が足すか引くかを自分で選ぶのに対し、「GT」は「=」を押した計算結果を自動的に積み上げていく。
「100×5+50×6+20×5」という計算なら、「100×5=」「50×6=」「20×5=」とそれぞれ計算するだけで、内部に500、300、100が積み上がる。最後に「GT」を押せば、合計の「900」が表示される仕組みだ。
■ ほとんど使われていないのに「なくならないワケ」
便利である半面、一般にはあまり使われていないというこれらの機能。それでも電卓からなくならないのはなぜなのか。
「ある程度の操作手順を覚えなければいけないため、広く行き渡らない面はあります。ただ、会計や簿記などをされる専門職の方には必須の機能として使われているため、今も残っています」
つまり、誰もが使うわけではなくとも、細かな数字を扱うプロフェッショナルにとっては現在も欠かせない機能なのだ。
では、こうした計算をする際、パソコンの「Excel」よりも電卓のほうが便利と言えるのだろうか。
「細かい数字の和や差を計算する際、効率が良いのはExcelです。入力履歴が残り、間違いにも気づきやすいため修正も容易です。
■ 「M+」「M-」「GT」以外にもある、知られざる機能
電卓には、これら以外にも意外と知られていない便利機能が搭載されている。そのひとつが「桁下げ」だ。
「→」や“黒い右向き三角”などで表示されているキーで、1回押すと入力した数字の末尾を1桁だけ消すことができる。
「数字を打ち間違えた時、『AC(オールクリア)』を押して全部消してしまう方も多いと思いますが、『桁下げ』を使えば間違えた1桁だけを修正できます。あまり知られていませんが、使ってみると非常に便利です」
このほかにも「税計算」や「時間計算」といった機能がある。
「税計算は主に販売員の方が使われます。決済の前に電卓で税込価格を出し、『この金額になります』とお客様に提示する使い方が最も多いですね。一方、時間計算はニッチですが、アルバイトやパートの時給計算によく使われます。『何時から何時まで働き、何分休憩があったか』を計算して時給を出す際に重宝されています」
スマホやパソコンで簡単に計算ができるようになった現代でも、電卓には電卓ならではの「使いやすさ」がある。「M+」「M-」「GT」をはじめ、普段は意識しないボタンにも、それぞれ使われ続ける理由があった。
(取材・文/水野幸則)
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