個人的な悩みから社会的な不安にいたるまで、一人で考えていて限界を感じた時に、哲学者の言葉は一つの道しるべになる。第2次大戦中に若くして亡くなったフランスの哲学者、シモーヌ・ヴェイユの言葉を味わえる『シモーヌ・ヴェイユ まっすぐに生きる勇気』(鈴木順子著、ディスカヴァー・トゥエンティワン、税込み1430円)が発売された。
シモーヌ・ヴェイユはパリのユダヤ系の家庭に生まれ、アンリ四世高校というパリの名門校に進学、『幸福論』を書いたアランから哲学を学んだ。高等師範学校卒業後、フランス各地の国立女子高等学校で哲学を教えつつ、組合活動などの社会活動も並行して行い、労働者の実態分析のため工場労働に従事。戦争の実情を知る目的でスペイン内戦にも参加し、重傷を負った。第2次世界大戦勃発後は家族とアメリカに亡命したが、単身で戦闘の続くヨーロッパに帰り、レジスタンスに従事。すでに結核に侵されていたため、34歳で亡くなっている。
「ヴェイユの思想に興味はあるが、著作が難しそうで敬遠していた」「自分の気持ちに正直に生きたいけれど、できていない」と感じている人に、ヴェイユの言葉を生き方の指針として読み解いた一冊。不幸と苦しみ、権利と義務、教育や美、宗教など、幅広い分野にわたり思考の道筋をつけるヒントが見つかる。