※本稿は、和田秀樹『60歳からこそ人生の本番 永遠の若さを手に入れる恋活入門』(二見書房)の一部を再編集したものです。
■テストステロンをしっかり分泌させる睡眠方法
質の高い睡眠は、テストステロンの生成と分泌に重要な役割を果たします。質の高い睡眠とは、寝床についてからあまり時間をかけすぎずに入眠でき、途中で覚醒することが少なく、熟睡感がある睡眠です。
このような睡眠が得られると、朝は気持ちよくすっきりと目覚め、日中も眠気や疲労感がなく活動的に生活できるようになります。つまり「眠活で恋活力を高める」のです。
図表1にある、睡眠レベルが深い「ノンレム睡眠」のあいだに、テストステロンは分泌されます。
ノンレム睡眠時には、成長ホルモンも分泌されます。成長ホルモンは、コラーゲンやヒアルロン酸など、皮膚のハリや、うるおいを保つ成分の生成に関わっています。
年齢とともに肌の細胞を再生させる「ターンオーバー」の周期は長くなり、20代では約18日、60代以降では100日前後となります。
傷の治りが遅くなったりするほか、シワ、たるみ、くすみは老化の表れです。
睡眠時間が6時間未満になると、テストステロンレベルが著しく低下する可能性があります。
テストステロンをしっかり分泌させるポイントは、就寝時間と起床時間を一定に保つことです。できれば同じ時間に寝床に入り、同じ時間に起きるように、生活リズムを整えましょう。
■恋活するならまず寝床に入りなさい
男性ホルモンは夜中の1~3時ごろに多くつくられます。LED(発光ダイオード)の光は、交感神経を刺激して睡眠をさまたげるので、男性ホルモンをつくるためにも、就寝前は寝室を暗くして、スマートフォンやパソコンの使用を控えましょう。
また、就寝の数時間前のカフェインやアルコールの摂取は避けたほうが熟睡できます。寝酒は睡眠が浅くなり、中途覚醒の原因になります。
また、睡眠時無呼吸症候群などの睡眠障害も、テストステロンレベルの低下と関連する可能性が指摘されています。いびきがうるさい・呼吸が止まっていると指摘された方は、医師に相談してみましょう。
今は、CPAP(シーパップ/持続陽圧呼吸療法)といって、機械で圧力をかけた空気を鼻から気道(空気の通り道)に送り込んで、気道を広げて睡眠中の無呼吸を防止する治療法があります。1998年に健康保険適用になりました。
規則正しい睡眠習慣を維持する「眠活」によって、さまざまなホルモンバランスの改善につながります。単にテストステロンレベルを上げるだけでなく、全身の健康維持にも役立つのです。恋活するならまず寝床に入りなさいというのは、そういうことなのです。
■「何時間寝るといいか」の最終結論
睡眠の話でいえば、私は患者さんによく「何時間、寝るのがいいでしょうか?」という質問を受けます。じつは、そこには答えがありません。適切な睡眠時間は、人それぞれ、みな異なるからです。
では、自分に合った適切な睡眠時間を見つけるには、どうしたらいいでしょうか。答えは「実験」です。
歳をとってヒマになったら、いくらでも実験する時間はあります。睡眠に関するさまざまな本を図書館から借りてきて、自分で実際に試してみるといいのです。やる前から答えが出ているものは紛(まが)いものの宗教であって、やってみないと答えがわからないという発想が、科学です。
かのアインシュタインは、10時間以上寝る、いわゆるロングスリーパーでした。
「何時間、寝るのがいいでしょうか?」と質問されたら、私は「5時間、6時間、7時間……10時間と寝てみて、何時間寝た翌日がもっとも調子がよかったか、何時間後に自然に目覚めるか、実験してみるといいですよ」と答えるようにしています。
「目覚めたら、まだ朝4時だった」「二度寝できない」「よく眠れない」という方も、もしかしたら今の睡眠時間が、もっとも適切なのかもしれません。
すべてが実験であり、すべてが失敗かもしれませんが、1つくらい新しい出会いや発見があれば御(おん)の字、と思えれば、人生が楽しくなります。
■ときめく対象を見つける恋活は、幸運な偶然を引き寄せる
睡眠に限らず、実験しようとする精神、実験スピリッツは、恋活にも共通しています。実験すると、これまで「自分の好きな人・コト・モノはコレ」と決めつけていた固定観念から自由になって、まったく違うコトをやってみたら「ものすごく楽しかった」という、新しい発見があるものです。
そして、そこで発見するのは、恋活する人・コト・モノだけでなく、これまで自分の知らなかった自分を発見する、というのが、人生の素晴らしい側面です。
大切なことなので、もう一度繰り返します。歳をとってヒマになったら、実験はし放題です。人・モノ・コト、すべてが実験対象です。
こうして実験をすることで「セレンディピティ(Serendipity)」が起こります。セレンディピティとは、「思いもよらなかった偶然がもたらす幸運」という意味です。
ニュートンはりんごが木から落ちるのを見て、「万有引力の法則」を発見しました。
フレミングはシャーレのなかに発生した青カビを見て、ペニシリンを発見しました。
3M(スリーエム)の付箋(ふせん)「ポストイット」もセレンディピティです。スペンサー・シルバーという科学者が接着剤の研究をしているとき、粘着力の弱い失敗作をつくってしまい、その失敗から「はがすことが可能な状態」を発見し、ポストイットの開発につながりました。
セレンディピティを起こすには、まず動くこと、実験することが重要なのです。
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和田 秀樹(わだ・ひでき)
精神科医
1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、アメリカ・カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。国際医療福祉大学教授(医療福祉学研究科臨床心理学専攻)。一橋大学経済学部非常勤講師(医療経済学)。
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(精神科医 和田 秀樹)