※本稿は、宮脇さき『世界の新富裕層はなぜ「オルカン・S&P500」を買わないのか 20代で純資産4億円をつくった超レバレッジ投資の極意』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
■バフェットが警告した「通貨の危うさ」
「通貨価値が下がるゲームは終わらない」
2025年5月、バークシャー・ハサウェイ株主総会にて、94歳となったウォーレン・バフェット氏は、こんな印象的な言葉を残しました。
「政府は本能的に通貨を薄める生き物であり、通貨価値が下がるゲームは終わらない」
つまり、現金をただ保有し続けること自体がリスクになる時代が来ている、ということです。
バフェット氏の近年の懸念は、アメリカの巨額な財政赤字と、それに伴う通貨価値の低下です。国家は経済成長や財政赤字の穴埋めのために、通貨を供給し続けざるを得ません。その結果、現金や預金といった「紙幣」に依存した資産構成は、長期的に見れば資産の実質価値を危険にさらすことになります。
私はこのバフェット氏を始めとした偉大な投資家たちから多くを学び、それを現在の状況に合わせて解釈し、実践可能な戦略として体系化しました。それが、本書で提唱する「ハードアセットマネー戦略」です。
■資産に「ハードアセット」を組み合わせる
この戦略では、単なる金融資産だけでなく、「実物資産」や「価値の保存性が高い非金融資産」にも注目します。紙幣や株式のような「ペーパーアセット」だけに偏るのではなく、金、不動産、インフレに強い商品、暗号資産などの「ハードアセット」を組み入れることによって、資産の安全性と成長性の両立を図る戦略です。
・ 金
歴史的に「究極の価値保存資産」。
・ 不動産
物価が上がれば家賃や土地の価格も上昇しやすい。特に国内外の一等地はインフレ耐性が高い。
・ ビットコイン
「デジタルゴールド」と呼ばれる新時代の資産。変動は大きいが、新富裕層の多くが分散の一部として保有している。
こうした現物資産は、インフレ時に本当の強さを発揮します。
■ハードアセットマネー戦略の「7つの行動原則」
ハードアセットマネー戦略を成功に導くためには、日々の判断や行動の指針となる7つの原則があります。
① 現金保持も投資の一つと考える
現金を持つこと自体は、インフレ下では資産価値の相対的な目減りにつながります。だからこそ、「すべてを現金で持つ」のは危険です。
しかし一方で、バフェット氏が巨額のキャッシュを常に手元に置いているように、現金には「投資のチャンスを逃さないための待機資金」という重要な役割があります。市場が大きく下落した時や優良資産が一時的に割安になった時に、すぐに動けるかどうかはその後の資産形成に大きな差を生みます。
現金は長期保有して守る資産ではなく、「ここぞ」という時に一気に投資を行うための武器と位置付けるべきなのです。
■金は「究極の価値保存資産」
② 金・ビットコイン・不動産など実物資産を保有する
インフレや通貨不安、地政学的リスクから資産の本質的価値を守るには、「現物」を持つのが一番です。以下に示すような、時代を超えて価値が認められてきた、あるいは新しい価値の保存手段として期待される資産でご自身の財産をしっかり守ることが大切です。
金は、歴史が繰り返し証明してきたように「究極の価値保存資産」です。金融システムが混乱する有事の際にも、その輝きを失うことはありません。通貨の信認が揺らぐ可能性のある現代において、ポートフォリオの一部に金を組み込むことは、資産を守るための極めて有効な手段となります。
同じく注目されるのが、「デジタルゴールド」とも呼ばれるビットコインです。発行枚数に上限があるため、希少性という点では金に通じる側面を持ちます。価格変動の大きさから敬遠する人もいますが、新富裕層の中には、インフレ対策や資産保全の一環として一定の割合を組み込む人が増えています。
さらに、不動産もインフレ局面で強さを発揮する代表的な資産です。特に世界の主要都市の一等地は、家賃収入や長期的な価格上昇が期待できる「本物の資産」と言えます。 私自身も投資を通じて、一等地の不動産が持つ堅牢性と成長性を実感してきました。
■「米ドルだから安全」ではない
③ 「米ドル依存」を減らし複数の通貨・国・地域に分散させる
世界最大級のヘッジファンド創業者であるレイ・ダリオ氏も強調していますが、今は「米ドルだから安全」とは限りません。
資産を円、ドルだけでなく、スイスフラン、シンガポールドルといった複数の通貨に分散させ、異なる法制度や経済圏を持つ国・地域に資本を配置することが重要です。
これにより、特定の国の経済不安、通貨価値の急落といった、いざという時のリスクを効果的にヘッジすることが期待できます。海外の銀行口座の開設や、海外法人を活用した資産管理も、この原則に沿った具体的な戦略と言えるでしょう。
■総資産の1~2割は「すぐ動かせる形」で置いておく
④ 「現金」は総資産の10~20%を目安にする
現金の重要性はお伝えしましたが、日々の暮らしの中での予期せぬ出費や、市場が大きく下がった際に冷静さを保つための「心のゆとり」としての現金は非常に大切です。これを「流動性バッファ」と呼びます。私自身も「絶好のチャンスが目の前にあるのに、資金が足りず指をくわえて見ていることしかできない」というリスクを、身をもって学びました。
資産の1~2割は現金や、短期国債、マネーマーケットファンドなど、すぐ動かせる形で置いておくことをお勧めします。これにより、予期せぬ出費や市場の短期的な混乱の際に、長期保有するべき資産を不利な条件で売却する事態を避けることができます。
⑤ 借入は、収益性の高い不動産×低金利ローンで
借入は資産形成を加速させる強力なツールとなり得ますが、ハードアセットマネー戦略においては、投機的な目的や高リスクな金融商品へのレバレッジは避けるべきです。
むしろ、安定したキャッシュフローを生み出す可能性の高い「収益性の高い国内外の一等地不動産」の取得に対して「低金利ローン」を活用することを推奨します。
プライベートバンクを通じた証券担保ローンも、優良資産を担保に資金調達し、さらなる投資に振り向ける一つのレバレッジ活用法です。
重要なのは、無謀なレバレッジやリスクの高い借金には絶対に手を出さないこと。
■iDeCoやNISAの税制優遇制度を活用する
⑥ 税金は合法的に最小化を目指す
税金は多くの人が「仕方なく払うもの」と考えがちですが、そうではありません。せっかく築いた資産の成長を鈍らせないよう、国内外の税の仕組みをきちんと理解し、タックスプランニングを学ぶことが重要になります。
例えば、iDeCo(個人型確定拠出年金)やNISA(少額投資非課税制度)といった国内の税制優遇制度や、法人化、資産の置き場所(国内か、海外か)、居住地の選び方(例えば、税制面で有利なシンガポールや香港、ドバイなど)まで含めて、トータルで検討することで、合法的な範囲で税負担を最適化していくことが求められます。
これらは非常に専門的な分野になるため、信頼できる国際税務に詳しい税理士や各種専門家とよく相談した上で、検討すると良いでしょう。ただし、あらゆる節税策は「合法的に」行うことが大前提であり、脱税行為は絶対に慎むべきです。
■学び続ける謙虚さと誠実な人付き合い
⑦ 知識とネットワークは究極のハードアセット
金や不動産などの現物資産も大切ですが、それ以上に価値があるのは「知識」と「ネットワーク」です。
金融や経済の知識、時代の流れを読む力、歴史から教訓を学ぶ洞察力、新しい投資を見つけるアンテナ。さらに、信頼できる税理士や弁護士、経験ある投資家の仲間やメンター、専門家とのつながり……。私自身、信頼できる投資家仲間や専門家との交流から大きな学びを得てきました。
有形資産が揺らぐ時代でも、学び続ける姿勢と人とのつながりこそが、もっとも大切な資産なのです。
まとめ:現金偏重からの脱却を
インフレや通貨不安の時代には、「現金だけに依存する」ことは最大のリスクです。
金融資産と実物資産をバランスよく組み合わせ、通貨や地域も分散する。そのうえで、学びと人脈という「究極のハードアセット」を磨き続けること。
これらを実践することで、より長期にわたる資産保全と資産成長を実現するための道筋となるでしょう。
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宮脇 さき(みやわき・さき)
個人投資家・YouTuber
1997年宮崎県生まれ。2020年お茶の水女子大学卒業。個人投資家・富裕層向け海外移住コンサルタント。アラブ首長国連邦(UAE)ドバイ在住。国内外に複数の不動産を所有、国外はジョージア、トルコ、UAEなどに投資。その他現代アートやアンティークコインなどの現物資産も保有。現在は、個人投資家として資産運用をしながら、富裕層、経営者、投資家への資産コンサルティングの他、海外移住のアドバイザーとしても活動。チャンネル登録者数10万人(2025年7月時点)のYouTubeチャンネル「さきの海外不動産しか勝たん」を運営。『週刊現代』『現代ビジネス』『日刊SPA!』など雑誌・Webでメディア掲載多数。
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(個人投資家・YouTuber 宮脇 さき)