大富豪はNISAブームをどう捉え、どう活用しているか。大手証券会社のプライベートバンキング部門で数多くの富裕層を担当していたZUU代表の冨田和成さんは「国が推奨するNISAには損益合算できなかったり、ブーム時に購入すると円安で高値掴みだったりと弱点がある。
※本稿は、冨田和成『世界の大富豪が実践しているお金の哲学』(三笠書房)の一部を再編集したものです。
■NISAに潜む大きな弱点
NISAに対して
一般人は、
投資入門のチャンスだと思っている
小金持ちは、
少額投資には興味がない
大富豪は、
確実性の高い投資に使う
世間では資産運用の好機であるかのように喧伝されているNISA(少額投資非課税制度。以下、NISA)。
NISAとは、年間360万円まで(成長投資枠が240万円、つみたて投資枠が120万円)の株式や投資信託の投資であれば、そこで得られた配当や売却益に対して税金がかからない制度です(非課税保有限度額は1800万円。成長投資枠は、そのうち1200万円)。
金融庁の大号令のもと各金融機関は国民の貯蓄を投資に回してもらおうと必死になっています。
資産運用の選択肢のひとつではありますし、投資初心者にはうってつけのように見えますが、どのような金融商品でもそのメリットとデメリットをしっかり理解しておく必要があります。
NISAのメリットは、言うまでもなく資産運用で得た利益(値上がり益や配当金・分配金)にかかる20%の税金が非課税になる点です。
とくに高配当株や利回りの高い株式投資信託のように、定期的に受け取れる配当金・分配金の比率が高い商品ほど、その利益がまるまる非課税になるため、メリットを実感しやすいでしょう。
しかし、運用がうまくいかなかったとき、NISAには大きな弱点があります。
■「ブームだから」と深追いするとリスクが伴う
たとえば、NISA口座で100万円を元手に運用して、20万円損をしたとします。
しかし、NISA口座での損失は通常口座と合算できないルールになっており、NISA以外に資産運用をしている場合、税金を多く払う可能性が出てきます。
これがデメリットの1点です。
また、NISAがブームになったタイミングは、円安の影響で株価、為替ともに非常に高値になっている時期でした。NISAは儲かったときに税金がかからない、というだけであって、商品を安いときに買わなければメリットはありません。
ようするに、ブーム時にNISAを始めた人は、株価も為替も高値のときに商品をつかまされてしまったとも言えるということです。
他に対象商品の限定性も、デメリットとしてよく挙がります。
NISAに限らず、「ブームだから」と安直にそれを後追いすることには、往々にしてリスクが伴います。
大富豪は世の中に完璧な制度など存在していないことをわかっているので、長所短所をわきまえたうえで、その制度をうまく使いこなしているのです。
どんなブームにも
裏がある
■本当に優秀なFPは顧客第一で提案する
お金の相談で
一般人は、
金融機関の窓口に行く
小金持ちは、
誰にも頼らず自力で行なう
大富豪は、
紹介で知った一流のプロにお願いする
アメリカの大富豪には3人の専門家がついているといいます。
具体的には医師、弁護士、そしてファイナンシャルプランナー(以下、FP)。
日本でも同じことが言えますが、唯一事情が異なるのがFPの存在です。
アメリカと日本のFPの違いは、アメリカのそれは基本的に独立した職種であるのに対し、日本のFP資格保持者の大半は銀行、証券会社、保険会社など金融機関の社員であるか、自称フリーであっても、特定の金融機関に紐づいている代理店であるケースが多いということです。
そういったFPが行なう提案やアドバイスは、どうしても自社の利益につながることに寄ってしまいがちです。
もちろん、金融機関に紐づいているFPの全員が信用ならないわけではありません。本当に優秀なFPは顧客第一で提案をしてくれます。
その結果、顧客から信用され、他の大口顧客も紹介されるようになるのでノルマも楽々達成でき、新規開拓の必要もないので顧客のための提案NISAらに時間を使える、という好循環に入っています。
逆に言えば、優秀ではないFPほどノルマ達成のために顧客にとって利益が薄い提案をせざるを得ないことがあったりします。
■投資初心者が金融機関担当者と付き合うコツ
こういった背景があるので、大富豪は日ごろから横の連携を大事にして、優秀なブレーンがいれば紹介し合う相互補助の意識を強く持っています。
税金対策に欠かせない優秀な税理士や、仕事のトラブルがあったときに味方となってくれる弁護士を探すときも同じで、まったく知らない人に頼むようなリスクは取りません。
さて、税理士は守るべき資産がない限りお世話になることはありませんが、投資初心者が資産運用を始めるとき、お金の専門家のアドバイスを得たいと思ったらどうしたらいいでしょう。
紹介してもらうことが理想だとわかっていても、本当に優秀なFPやプライベートバンカーは大口の顧客を優先するので、500万円や1000万円くらいの資産だと動いてもらえない可能性が高いです。
ということは、資産を増やす最初の段階においては、各金融機関が送り込んでくる「おそらく最優秀層ではない担当者」と付き合うことになります。
そこで怪我をしないためには、自主的にファイナンスの知識を磨き、ある程度の理論武装をしないといけない、ということでもあります。決して担当者の言いなりになってはいけません。
金融機関担当者と付き合うコツは、彼らの持っている情報や知恵をうまく引き出すことです。彼らも当然プロですから、使い方次第で貴重な戦力になります。
もちろん、買う気がない顧客に情報を提供しつづけるほど暇ではないので、最低限の手数料を落としながら(少額でも金融商品を買いながら)、関係性を切らないことがポイントです。
それに猜疑心をむき出しにして、極端に否定的になっても相手のやる気がなくなってしまいます。
舐められない程度に丁重に接し、かつ他社にも声をかけて比較をしていることをさりげなくアピールしていけば、担当者も真剣に向き合ってくれるでしょう。
プロをうまく使える
プロになる
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冨田 和成(とみた・かずまさ)
ZUU社長兼CEO
神奈川県出身。一橋大学在学中にIT分野で起業。2006年大学卒業後、野村證券株式会社に入社。本社の富裕層向けプライベートバンキング業務、ASEAN地域の経営戦略担当等に従事。
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(ZUU社長兼CEO 冨田 和成)
大富豪は、長所短所をわきまえたうえで、その制度をうまく使いこなしている」という――。
※本稿は、冨田和成『世界の大富豪が実践しているお金の哲学』(三笠書房)の一部を再編集したものです。
■NISAに潜む大きな弱点
NISAに対して
一般人は、
投資入門のチャンスだと思っている
小金持ちは、
少額投資には興味がない
大富豪は、
確実性の高い投資に使う
世間では資産運用の好機であるかのように喧伝されているNISA(少額投資非課税制度。以下、NISA)。
NISAとは、年間360万円まで(成長投資枠が240万円、つみたて投資枠が120万円)の株式や投資信託の投資であれば、そこで得られた配当や売却益に対して税金がかからない制度です(非課税保有限度額は1800万円。成長投資枠は、そのうち1200万円)。
金融庁の大号令のもと各金融機関は国民の貯蓄を投資に回してもらおうと必死になっています。
資産運用の選択肢のひとつではありますし、投資初心者にはうってつけのように見えますが、どのような金融商品でもそのメリットとデメリットをしっかり理解しておく必要があります。
NISAのメリットは、言うまでもなく資産運用で得た利益(値上がり益や配当金・分配金)にかかる20%の税金が非課税になる点です。
とくに高配当株や利回りの高い株式投資信託のように、定期的に受け取れる配当金・分配金の比率が高い商品ほど、その利益がまるまる非課税になるため、メリットを実感しやすいでしょう。
しかし、運用がうまくいかなかったとき、NISAには大きな弱点があります。
■「ブームだから」と深追いするとリスクが伴う
たとえば、NISA口座で100万円を元手に運用して、20万円損をしたとします。
普通の投資(通常口座で行なう投資)では商品Aで利益が出ても、商品Bで損をしていたらその損益を合算できます。つまり税金が安くなります。
しかし、NISA口座での損失は通常口座と合算できないルールになっており、NISA以外に資産運用をしている場合、税金を多く払う可能性が出てきます。
これがデメリットの1点です。
また、NISAがブームになったタイミングは、円安の影響で株価、為替ともに非常に高値になっている時期でした。NISAは儲かったときに税金がかからない、というだけであって、商品を安いときに買わなければメリットはありません。
ようするに、ブーム時にNISAを始めた人は、株価も為替も高値のときに商品をつかまされてしまったとも言えるということです。
他に対象商品の限定性も、デメリットとしてよく挙がります。
NISAに限らず、「ブームだから」と安直にそれを後追いすることには、往々にしてリスクが伴います。
大富豪は世の中に完璧な制度など存在していないことをわかっているので、長所短所をわきまえたうえで、その制度をうまく使いこなしているのです。
どんなブームにも
裏がある
■本当に優秀なFPは顧客第一で提案する
お金の相談で
一般人は、
金融機関の窓口に行く
小金持ちは、
誰にも頼らず自力で行なう
大富豪は、
紹介で知った一流のプロにお願いする
アメリカの大富豪には3人の専門家がついているといいます。
具体的には医師、弁護士、そしてファイナンシャルプランナー(以下、FP)。
「健康」と「地位」と「資産」を守る鉄壁の布陣です。
日本でも同じことが言えますが、唯一事情が異なるのがFPの存在です。
アメリカと日本のFPの違いは、アメリカのそれは基本的に独立した職種であるのに対し、日本のFP資格保持者の大半は銀行、証券会社、保険会社など金融機関の社員であるか、自称フリーであっても、特定の金融機関に紐づいている代理店であるケースが多いということです。
そういったFPが行なう提案やアドバイスは、どうしても自社の利益につながることに寄ってしまいがちです。
もちろん、金融機関に紐づいているFPの全員が信用ならないわけではありません。本当に優秀なFPは顧客第一で提案をしてくれます。
その結果、顧客から信用され、他の大口顧客も紹介されるようになるのでノルマも楽々達成でき、新規開拓の必要もないので顧客のための提案NISAらに時間を使える、という好循環に入っています。
逆に言えば、優秀ではないFPほどノルマ達成のために顧客にとって利益が薄い提案をせざるを得ないことがあったりします。
■投資初心者が金融機関担当者と付き合うコツ
こういった背景があるので、大富豪は日ごろから横の連携を大事にして、優秀なブレーンがいれば紹介し合う相互補助の意識を強く持っています。
税金対策に欠かせない優秀な税理士や、仕事のトラブルがあったときに味方となってくれる弁護士を探すときも同じで、まったく知らない人に頼むようなリスクは取りません。
さて、税理士は守るべき資産がない限りお世話になることはありませんが、投資初心者が資産運用を始めるとき、お金の専門家のアドバイスを得たいと思ったらどうしたらいいでしょう。
紹介してもらうことが理想だとわかっていても、本当に優秀なFPやプライベートバンカーは大口の顧客を優先するので、500万円や1000万円くらいの資産だと動いてもらえない可能性が高いです。
ということは、資産を増やす最初の段階においては、各金融機関が送り込んでくる「おそらく最優秀層ではない担当者」と付き合うことになります。
そこで怪我をしないためには、自主的にファイナンスの知識を磨き、ある程度の理論武装をしないといけない、ということでもあります。決して担当者の言いなりになってはいけません。
金融機関担当者と付き合うコツは、彼らの持っている情報や知恵をうまく引き出すことです。彼らも当然プロですから、使い方次第で貴重な戦力になります。
もちろん、買う気がない顧客に情報を提供しつづけるほど暇ではないので、最低限の手数料を落としながら(少額でも金融商品を買いながら)、関係性を切らないことがポイントです。
それに猜疑心をむき出しにして、極端に否定的になっても相手のやる気がなくなってしまいます。
舐められない程度に丁重に接し、かつ他社にも声をかけて比較をしていることをさりげなくアピールしていけば、担当者も真剣に向き合ってくれるでしょう。
プロをうまく使える
プロになる
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冨田 和成(とみた・かずまさ)
ZUU社長兼CEO
神奈川県出身。一橋大学在学中にIT分野で起業。2006年大学卒業後、野村證券株式会社に入社。本社の富裕層向けプライベートバンキング業務、ASEAN地域の経営戦略担当等に従事。
2013年3月に野村證券を退職。同年4月に株式会社ZUUを設立し代表取締役に就任。
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(ZUU社長兼CEO 冨田 和成)
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