■支援事業の終了で光熱費の負担増は必至
やっと秋らしさが感じられるようになったものの、今年は例年よりも厳しい暑さが続いています。エアコンをフル稼働せざるを得ない状況で、多くの家庭では光熱費の負担が重くのしかかっているのではないでしょうか。
2025年7~9月の3カ月間、政府は「電気・ガス料金負担軽減支援事業」を実施し、光熱費の負担軽減を図ってきました。割引額は、電気代1kWhあたり2~2.4円、ガス代1m3あたり8~10円。標準的な家庭では月800円~1000円程度、3カ月で約3000円が電気代の合計金額から割り引かれる計算になります。
この支援事業は10月以降に終了する予定です。厳しい残暑が予想される今秋は、10月に入ってもエアコン代による電気代の高止まりが続く可能性があります。また、冬場は暖房費が加わるため、光熱費トータルで考えると夏場よりも負担が大きくなります。
さらに、再エネ賦課金(再生可能エネルギー発電促進賦課金)の値上がりにより、今年のほうが負担額は増えているのが現状です。万が一世界情勢が不安定になったり、為替に大きな変動があったりした場合、燃料費調整額も上がらないとは限りません。
支援事業終了後に備え、今こそ節電対策に取り組む時期といえます。
■電力消費量の多い家電から攻略すべし
家庭内での電力消費量を多い順に並べると、1位:エアコン、2位:冷蔵庫、3位:照明器具、4位:テレビとなります。ただし、洗濯乾燥機の乾燥機能を頻繁に使う家庭では、洗濯乾燥機が上位に入ってきます。
電気代を節約するには、ここに挙げたような電力消費量の多い家電から対策をすると効率的です。
■【エアコン】断熱対策で効率アップ
ポイントは「窓の対策」
エアコンの節電で最優先すべきなのが、部屋の断熱対策です。夏場は室温を低く、冬場は高く保つことで、エアコンの消費電力を抑えることができます。
室温に大きな影響を及ぼすのは、「窓」です。夏場に部屋が暑くなる原因の約7割は、窓から入る熱だと言われています。この熱を防ぐには、カーテンを閉めるだけでは不十分です。大切なのは、窓自体から放たれる輻射熱を防ぐこと。すだれやサンシェードなどを使い、窓の外側から日射を遮る工夫をします。
反対に、冬場は窓の内側から外側に熱が逃げていきます。そのため、カーテンを厚手に変えたり、窓の内側に断熱シートを貼ったりして、熱が逃げないようにします。
窓を二重サッシにするなど本格的に断熱対策をしたい場合には、国の補助金を活用した窓のリフォーム(「先進的窓リノベ2025事業」)を検討してみてはいかがでしょうか。1戸につき最大200万円の補助を受けられる場合があります。
フィルター掃除で電気代を25%削減
エアコンのフィルターは2週間に1回程度の掃除が理想的です。1年間掃除をしないと約25%も余計に電気代がかかると言われています。自動掃除機能付きのエアコンも、ダストボックスの清掃や定期的なメンテナンスは必要です。
風量やサーキュレーターで体感温度を低下
扇風機やサーキュレーターを併用することで冷気を部屋全体に行き渡らせ、体感温度を下げましょう。なお、室温が暑いと感じたら、エアコンの設定温度は下げず、風量を「強」にするほうが電気代を抑えられます。
■【冷蔵庫】冷気や放熱を「ふさがない」
冷気の通り道を確保すべし
冷蔵庫の節電のポイントは、冷蔵庫内に“冷気の通り道”をつくることです。物を詰め過ぎたり、冷気の吹き出し口を食品や飲料でふさいだりしないよう注意しましょう。反対に、冷凍庫は保冷効果を高めるために、ある程度物を詰めて入れるほうが効率的です。
学校のプリントは「側面」に貼らない
冷蔵庫は内部を冷やすために、側面と天井部分から放熱をしています。
節電のヒントは取扱説明書にあり
壁との間にどれくらい間隔を開ければ適切に放熱できるか、設置基準は取扱説明書に記載があります。また、チルドや野菜庫など、どの棚に何を入れれば効率的に冷却できるかも書かれています。冷蔵庫の取扱説明書には節電のヒントが詰まっています。
■【照明器具】LED化で年間3000円以上も節約
LEDの消費電力は白熱電球の10分の1ほど。1日6時間使用する場合、年間で3000円以上の節約になります。蛍光灯をLEDに変えるだけでも電力量が半分に抑えられるため、家中のライトをすべてLEDにすれば劇的な節電効果が得られます。LEDは発熱量も少ないので、夏場のエアコン効率向上にも貢献します。
照明器具は使用時間に比例して電気代がかかります。短時間離れるときでも、こまめにオン・オフをしましょう。
■【洗濯乾燥機】乾燥方式で電気代が変化
よく使うなら「ヒートポンプ式」がマスト
乾燥機付き洗濯機には、ヒーター式、ヒートポンプ式などの乾燥方式があります。
浴室乾燥の使いすぎに要注意
乾燥機つながりで注意してほしいのが、浴室乾燥機能です。実は2時間で100円程度の電気代がかかります。外干しできない場合は、浴室乾燥を使うより、除湿機を使ったほうが経済的です。
なお、除湿機はコンプレッサー式がおすすめ。ただし駆動音が大きいので、浴室などの閉め切った部屋に洗濯物と除湿器を置き、音が気にならないようにして利用するとよいでしょう。
■頻度は低いが消費電力は大きい家電の節電
ドライヤーや電子レンジなど短時間で大きな電力を消費する家電は、使用時間をできるだけ短く済ませましょう。ドライヤーならタオルドライを丁寧に行い時間短縮を。
電子レンジは消費電力量は大きいものの、下ごしらえに活用すれば調理時間が短縮でき、ガス代の節約につながります。トータルで光熱費が抑えられるので、うまく活用しましょう。
また、白米を炊飯器で4時間以上保温するのであれば、冷凍して電子レンジで加熱するほうが電気代を抑えられます。
■省エネ家電への買い替え効果は大きい
エアコン、冷蔵庫、照明器具、テレビ、温水洗浄便座といった家電は、古い製品と新しい製品とで大きく電気代が変わります。古い製品は思いきって買い替えてしまうのもひとつの手段です。
省エネ家電への買い替えに対しては、東京都の「ゼロエミポイント」をはじめ、秋田県の「あきた省エネ家電購入応援キャンペーン」、愛知県東海市の「東海市省エネ家電製品購入促進補助金」、広島県の「ひろしま省エネ家電購入応援キャンペーン」など、多くの自治体で買い替え費用の一部を負担してもらえます。
■【ガス代】お湯は水の3倍コストがかかる
給湯コストを意識する
ここで、ガス代の節約術も紹介しましょう。ガス代の節約ポイントは、お湯の使用量を減らすこと。なぜなら、家庭で使うエネルギーの約3割は給湯と言われており、お湯は水の約3倍のコストがかかっているからです。手洗いなど温水が不要な場面では、なるべく水を使うようにしましょう。
シャワーを1日1分減らせば年間3200円の節約
体を洗う際はシャワーを出しっぱなしにせず、1日1分間止めるだけでも年間約3200円の節約になります。シャワーヘッドを節水機能付きのものに交換すれば、こまめに止水ができて効果的です。節水シャワーヘッドは安価なものなら1500円ほどで購入できるため、すぐにもとが取れるでしょう。
なるべく「追い炊き」を使わない工夫を
お風呂の追い炊きは給湯よりも熱効率が悪く、コストがかかります。
■待機電力は気にしなくてよい時代に
なお、現代の家電は待機電力がほとんどかからないため、「こまめにコンセントからプラグを抜く」などの従来の節電対策は実はほとんど効果がありません。今回紹介した中で、すぐに実践できるものから始めてみてはいかがでしょうか。
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和田 由貴(わだ・ゆうき)
節約アドバイザー
日本女子大学家政学部卒。消費生活アドバイザー、家電製品アドバイザーなど、暮らしや家事の専門家として活躍。環境問題にも精通し、2人の子供を持つ現役“節約主婦”としてテレビ出演や、講演などで活躍。著書に『即実践! 即効果! 節約のプロがおしえる家計防衛術100』。
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(節約アドバイザー 和田 由貴)