※本稿は、井上皓史『無敵の早起き』(三笠書房)の一部を再編集したものです。
■ベッドに入る時刻を固定する
私自身や私のまわりにいる多くの人たちの睡眠時間は、7時間です。
7時間寝て、毎朝5時に起きるためには、22時に寝る必要があります。
まず、この「22時に寝ること」を固定してください。これは早起きを習慣にするための、とても重要なコツなのです。
朝型の生活をしようとする人は、最初、毎朝5時に起きることに必死になります。しかし、ここに早起きを続けられない誤解が潜んでいます。がんばらなければならないのは、毎朝5時に起きることではなくて、毎晩22時に寝ることです。
毎晩22時に寝ることさえできれば、あとは適切な7時間の睡眠時間を取って、朝の5時にスッキリと目覚めることができるのです。
睡眠時間を削って、睡眠負債を増やしながら毎朝5時に起きようとしても、長く続きません。仮に朝の5時に起きる生活を続けたとしても、ベッドに入る時間が、ある日は23時、別の日は24時と違っていれば睡眠不足となり、頭は冴えずに集中力を欠くことになります。
繰り返しますが、起床時刻ではなく就寝時刻を固定してください。
22時に寝て5時に起きることを実践していけば、朝型の生活は2、3週間もすれば習慣になります。習慣になれば、それが当たり前のリズムになります。自分のリズムになってしまえば、早起きをするのに固い意志を必要とするなどということはなくなります。
なお、ここでは仮に睡眠時間を7時間として話を進めています。
■8時間寝たいなら21時半就寝で5時半起きを
しかし先にも触れたように、適切な睡眠時間は人によって異なります。いろいろなパターンを試してみた結果、どうしても8時間必要だという人もいることでしょう。
その場合は、8時間の睡眠時間を優先してください。22時に寝て5時に起きることを優先させると、睡眠負債が溜まり、眠気と疲労でせっかくの朝型の生活が無意味になります。
8時間の睡眠時間が必要となると、21時に寝て5時に起きるという生活になるかもしれません。ただし会社で働いている人が、毎晩21時に就寝するのは難しいことだと思います。
その場合は、たとえば21時半に寝て、5時半に起きるというリズムをつくります。
適切な睡眠時間だけでなく、朝の支度にかかる時間、通勤時間、会社の始業時刻など、朝の時間割は個人の事情によることが多くなります。
「22時に就寝、5時に起床の7時間睡眠で朝の自由な時間を2時間取る」、これをベースにしながら、それぞれの事情によって微調整を加えていくのがよいと思います。
無理のないように就寝時刻を固定してください。それが自分に合った体内リズムをつくることにつながります。
もっとも重要なのは、ベッドに入る時刻を固定すること。
あとは、状況に応じてカスタマイズする。
■夜の時間配分を決める
毎日22時に寝るためには、夜の時間配分をしっかりと決めておくことが大切です。
たとえば19時半に退社して20時に帰宅、食事と風呂を済ませて、22時に就寝といった流れになりますが、もう少し具体的に見ていきましょう。
私の生活スタイルも交えつつ、ご説明します。
帰宅したら、食事を取って、風呂に入ります。
風呂は一時的に体温を上げて頭をクリアにする効果があります。
残りの時間は翌朝の準備と、就寝時刻までのリラックスに使います。
私の場合は、朝バタバタしないように、翌日に着る服を夜のうちに準備したり、少し時間に余裕があるときは、ちょっとした洗濯をしたりします。
また、翌日のために簡単な朝食の準備をすることもあります。
そして21時を過ぎたら部屋を間接照明にして眠気を促します。
私の場合、21時以降は、テレビ、パソコン、スマホなどにはいっさい触れません。電話で誰かと話すこともなければ、メッセージを返信することもありません。
多くの人が、寝る直前までスマホでメッセージを送ったり、動画を見たりしています。これらは眠気を促すどころか、反対に頭を冴えさせてしまいます。
寝る時間に頭が覚醒していると、睡眠時間がどうしても減ってしまい睡眠不足になりがちです。
■家ではいっさいアルコールを飲まない理由
また、家での飲酒もなるべく避けたいところです。
私は、晩酌や寝酒の一杯を含めて、家ではいっさいアルコールを飲みません。アルコールを飲んでいると、ついつい夜の時間配分が狂います。
早く寝るために飲酒する人がいますが、あまりお勧めしません。たしかに少量の飲酒は寝付きをよくすると聞きますが、就寝時刻を一定にするほうが寝付きにも健康にもいいと思います。
また、飲酒をすると夜中や早朝に目が覚めることがあります。これは睡眠中に体内からアルコール分が抜け、そこで脳が覚醒してしまうからだそうです。アルコールに頼らず、寝付きをよくするよう心がけましょう。
22時に寝るためには、夜こなすべきことがたくさんあり、相当に多忙となります。
そのうえ、晩酌もする、テレビも長時間見る、友だちにメッセージも送る、SNSも見るということでは、とても就寝時間を固定することはできません。
ベッドに入る時刻を固定し、それを習慣化するために、夜の時間帯ではやることを最小限に絞り、「何を何時にするのか」という時間の配分を決めることが大切なのです。
夜の時間帯に、行うことを決めておく。
やることをやったら、スパッと寝る。
■コンフォートゾーンを抜け出す必要性
夜の時間配分に沿って自分の行動を円滑に進めるためには、19時には退社することが重要になります。
現在の日本では「働き方改革」の流れもあって、夜遅くまで残業することを改めるようになってきています。朝早く出社して夜も早く退社することは、基本的には受け入れられる方向にあると思います。
しかし表面上はそうであっても、職場によっては相変わらず「残業をするのが美徳」という傾向があるかもしれません。現に、私の在籍した会社も夜遅くまで残業するところであったことは、すでに触れた通りです。
こういう場合には、次のやり方で現状を打破していく必要があると思います。
それは、「コンフォートゾーンを抜け出す」ということです。
コンフォート(comfort)とは、快適さという意味です。コンフォートゾーンとは自分にとって都合がよく居心地のよい所ということです。この本では、コンフォートゾーンという言葉を「勇気を発揮しなくても済む、楽ができる環境」くらいの意味で使っています。
残業を美徳もしくは当たり前のこととしている職場では、早く帰るのには勇気が要ります。上司や同僚の目を気にしながら、毎日早々に仕事を切り上げて帰宅の途につくのは難しいことかもしれません。
そのような職場にいると、上司や同僚に合わせて適当な時間まで残業をしていることが、自分にとって実は楽であり、コンフォートゾーンにいることになります。
しかし、コンフォートゾーンに留まっていては現在の生活を変えることはできませんし、朝型の生活スタイルにして自己肯定感を高めていくこともできません。
もっとも、朝型の生活を奨励してくれる職場であれば問題ありません。また成果が出ていればどのような勤務スタイルでも構わないという理解のある会社も、とくに問題はありません。
■上司と真剣に話し合う
そうではなく、19時以降であっても席にいなければならないような会社で働いている場合には、やはり職場の上司と相談する必要が出てくると思います。
なかなか相談しにくいことかもしれません。
私も、当時の上司に「2時間早く出社するので、2時間早く帰っていいですか」と相談したときには、とても勇気が要りました。
しかし、いまにして思えば、そのような申し出をしてコンフォートゾーンを抜け出さなければ、現在の私は存在しませんでした。
また職場はチームで動いているものですので、会議の設定時間などで、19時の退社が阻まれることも充分に考えられます。2時間早く出社して、自分の仕事の責任を果たしていても、会議を欠席して帰宅することはできません。
自分の都合だけで一方的に主張しにくいことが、職場には当然あります。
しかし、そういうことがあっても、自分で自分の時間をコントロールしたいのであれば、繰り返しになりますが、上司と真剣に話をする必要があると感じます。たとえば、「会議はなるべく就業時間内に設定したい」と提案するのもひとつの手です。
このような話し合いを避けている限り、早寝早起きによって自分のもつパフォーマンスを最大限に発揮することはできません。上司とのコミュニケーションによって、19時には退出できるようにしておくことが大切です。
19時以降も帰れない場合は、上司と真剣に話をする。
■朝の支度をてきぱきとこなす
夜の時間配分が決まり、19時前に退社するための上司とのコミュニケーションも無事に取れました。あとは朝の支度をいかに円滑に進めるかを考えましょう。
先ほども触れたように、私は21時を過ぎたらスマホを触りません。スマホのアラームを朝の5時にセットして居間に置きっぱなしにします。寝室には置きません。
自分の手の届かないところに目覚ましを置いておくのは、重要なポイントです。
翌朝、布団から出て歩くことで、ぼんやりとでも、目が覚めることになります。
続いて、風呂場でシャワーを浴びます。これでかなり目が覚めます。髪を乾かし、朝ご飯を食べて歯をみがき、着替えれば、いつでも外出できます。全部で30分から40分あれば充分です。
この一連の動きをルーティンにしてしまえば、二度寝をすることはありません。
外出のためにスーツなどに着替えてから、再び布団に入ることはまずありません。
5時にアラームを止めに行くことから、着替えまでを一気にやってしまうことがコツです。
その後は、その日のスケジュールによって変わります。人と会ってモーニングをする予定の日は朝食を食べずに外出します。そうでないときは、前の晩の21時以降はスマホを見ていないので、メッセージの返信やSNSのチェックなどを行うこともあります。
また曜日によっては、朝起きてからシャワーを浴びずにそのままランニングに出る日もあります。目覚めてからたっぷりとランニングで体を動かし、朝の日を浴びます。その後にシャワーで汗を流し身支度をしても、まだ7時前です。とても爽快な気分になります。
朝の時間帯も夜の時間帯と同様、やることをルーティン化することです。
そうすれば焦ることもなく円滑に支度ができ、気持ちよく一日のスタートを切ることができます。
朝の時間帯にやることも
夜と同様、なるべくルーティン化する。
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井上 皓史(いのうえ・こうじ)
朝活コミュニティ「朝渋」代表、Morning Labo取締役
1992年、東京都生まれ。朝活コミュニティ「朝渋」代表。株式会社Morning Labo取締役。2児の父。2016年より朝活コミュニティ「朝渋」を東京・渋谷で立ち上げ、読書や英会話、ゲストを招いたトークイベントなどさまざまな活動を行う。これまで3万人以上に「早起き」のメソッドを伝えている。著書として『昨日も22時に寝たので僕の人生は無敵です』(小学館)がある。
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(朝活コミュニティ「朝渋」代表、Morning Labo取締役 井上 皓史)