■次の総理を決める総裁選で語られない女性天皇の是非
「愛子天皇実現」は多くの国民の願いだ。
皇位継承者が秋篠宮悠仁さんしかいない(秋篠宮は辞退する意向といわれている)というのは、悠仁さんにとっても“重荷”であろう。
しかし政治はまったく動いていない。今回総裁選に出ている候補者たちも、自民党支持の保守層や参政党に恐れをなし、女性天皇について触れることさえしない。
候補者5人(小林鷹之、茂木敏充、林芳正、高市早苗、小泉進次郎)は、皇位継承問題については現行の「男系男子」による継承を維持する方針で一致している。その上で、喫緊の課題である「皇族数の減少」への対策として2つの案についての見解を表明している。
1.女性皇族が結婚後も皇室に残る案
この案は、結婚により皇籍を離れる女性皇族が、結婚後も皇室にとどまり、皇族としての活動を継続できるようにするものだ。小泉は昨年の総裁選では「選択肢を広げるべき」と積極的だったが、今回は「自民党として結論が出ておらず、拙速な判断はしない」と慎重な姿勢に転じてしまった。
ウルトラ保守の高市早苗は、女系天皇につながる可能性に懸念を示し、旧宮家の男系男子の皇籍復帰を優先すべきだと主張。他の3人も概ね慎重な立場だが、皇族数確保策の一つとして議論の対象となる可能性は否定していない。
■父親とは違う小泉進次郎
2.旧皇族の男系男子を養子として皇籍に戻す案
戦後に皇籍を離脱した旧宮家の男系男子を養子として迎え、皇籍に戻すことで皇族数を確保する案だ。高市はこの案を最も重視しており、男系継承を維持するためには必須の方策だとの考えを示している。
茂木、林、小林もこの案を皇族数確保策の有力な選択肢の一つとして検討すべきだという立場。小泉はここでも旧皇族の皇籍復帰は国民の理解を得るのが難しい可能性があるとして、慎重な姿勢だ。
小泉の父親の純一郎は首相時代、女系女性天皇も認める皇室典範の改正をする意向だった。改正直前までいったのだが、秋篠宮家に悠仁さんが生まれたことでそのままになってしまった。だが、息子はこの問題について「何も考えていない」ように見える。
石破茂はもともと女性天皇を容認するとたびたび口にしてきた。石破が続投していれば、愛子天皇実現の可能性はゼロではなかったが、それも今は虚しい。
もし、石破の“亜流”である林芳正が総理になったと仮定しても、党内の保守派とぶつかるようなテーマに手を付ける度胸がないのは、総裁選の発言からもうかがえる。
■宮内庁長官会見に見る天皇のお気持ち
今年24歳になる愛子さんは日赤の仕事をやりながら公務に励み、今年31歳になる秋篠宮佳子さんも公務をこなしている。二人とも自分の「ライフプラン」さえ描けない状況に置かれたままである。
2024年10月に国連の女性差別撤廃委員会(CEDAW)は、日本の皇位継承制度が男系男子のみを継承者と定めていることに対し、女性差別撤廃条約に違反するとして皇室典範の改正を勧告した。
だが、日本政府は呆れ果てたことに、「皇位継承資格は基本的人権に含まれないとして、委員会に勧告の撤回を求めた」のである。これこそ日本の常識は世界の非常識である以上に、日本人として恥ずかしい。
こうした政治家の人権無視に、天皇が声を上げるのではないかと女性自身(10月7日号)が報じている。
宮内庁関係者は、皇室の未来に暗雲が立ち込める中、こう話している。
「9月11日に、宮内庁の西村泰彦長官は定例の記者会見で、皇族数の減少について『大変危機感を持っている』『国会における議論が進展することを望んでいる』などと発言しました。
悠仁さまが成年式を終え、皇室は戦後初めて、未成年の皇族がいない状態になりました。にもかかわらず、長く継続してきた皇族数確保のための制度改正に向けた国会の議論は、一向に進んでいません。長官は、両陛下のご様子などを拝察しながら発言しています。危機感のない政界の動きには、皇室の方々もそろって不安をお感じになっているはずです」(=女性自身)
■本質的な解決策は1ミリも進展していない
前国会まで皇族数の確保策を巡る議論は、それをリードしてきた自民党と立憲民主党が「女性皇族が結婚した夫とその子供に皇族の身分を認めるのか」という論点で対立を深め、その隔たりが埋まらないまま結論は先送りに。石破茂首相が退任して総裁選一色になってしまった。
もちろん、誰が総裁に選ばれても、「少数与党となった政権運営のために、強硬な保守層の支持をつなぎとめる必要性があります。皇室の課題に対する自民党のスタンスは、これまで以上に柔軟さがなくなっていくとみられています」(全国紙政治部デスク=女性自身)
総裁選の多数派工作や国会での勢力維持に明け暮れる自民党が無視し続ける皇室の危機。
神道学者で皇室研究家の高森明勅氏は、次のように懸念を示した。
「2005年の小泉政権下で設けられた有識者会議が女性・女系天皇を容認する報告書を示してから20年がたちました。しかし皇族数減少や安定した皇統を維持するための本質的な解決策について、国会の議論は何度も振り出しに戻りながら、1ミリも進展していません。
2016年8月に上皇陛下がご退位の意向を示されたビデオメッセージは、決して望まれたことではなかったものの、数少ない選択肢として行われ、そのお気持ちを国民は受け止め、政治が動かざるをえない状況を作り出しました。
あのときと同じように、政治による問題解決の先送りがこれ以上続けば、『再び天皇陛下によるおことばがなければ、政治は動かせないのか』という憤りの声が国民から上がりかねないほど、危機的な状況ともいえるのです」(=女性自身)
■天皇が下す「人生二度目のご決断」
先の宮内庁関係者が思い起こすのは、天皇が皇太子時代の2004年5月、突然、意を決して述べた「人格否定発言」のことだという。
「陛下は欧州歴訪前の記者会見で、《それまでの雅子のキャリアや、そのことに基づいた雅子の人格を否定するような動きがあったことも事実です》と述べられ、国内外に衝撃が走りました。
お世継ぎへのプレッシャーを受け続け、この当時の雅子さまはご体調を崩されてお務めもままならず、当時の皇太子家は厳しいお立場にあったのです。雅子さま、幼い愛子さまを守るため、穏やかで感情的にならない陛下がご自身の人生でただ一度、お怒りを形にされたご発言でした。
お立場が憲法で定められているばかりでなく、国会で与野党が対立している問題に対して意見を表明されることは、陛下のご性格からしても考えにくいでしょう。しかし陛下の、“愛子や女性皇族の未来を守らねば”というお気持ちは非常に強いものがあると拝察しています。皇族数を確保する方策すら放置され続ければ、人生二度目となるご決断を下さざるをえないとも限らないのです」(=女性自身)
今の憲法を順守するといっている天皇が、そのようなことをするのはあり得ないことだとは思うが、我が子を思う親の心は誰も同じである。まして愛子さんは雅子皇后との間に生まれたたった一人の女の子なのである。
実は、悠仁さんの「成人式」後の内宴(晩餐)が帝国ホテルで行われることが発表された時、成城大学の森暢平教授はサンデー毎日(9月7日号)でこういう見方をしていた。
「天皇陛下と秋篠宮さまが、『皇位継承は直系継承が相応しく、愛子さまへの継承の道を作りたい。皇室からのメッセージの一貫として「悠仁さま祝宴」は皇居外でしよう』と決め、宮内庁幹部と相談して、今回の措置になっていたのなら、それは歓迎すべきことだ」
■国際的に恥ずかしい皇位継承制度
もちろん、森教授も、現実はそうではないし、秋篠宮任せで事が進んだだけだとしているが、秋篠宮の中に「愛子さんを天皇に」という思いがあり、それを兄である天皇に秘かに伝えたのではないかと、私のような愛子天皇待望論者は、深読みしてしまうのだが。
先の高森明勅氏は、週刊女性(10月7・14日号)で、「皇室の安定的な存続を望むのであれば、次の継承者は愛子さまでなければならない」とも語っている。
さらに続けて、「今の陛下や秋篠宮殿下のお子さま方の代で皇位継承者の有資格者はおひとりしかいらっしゃらない。このような危機に陥った原因は、皇位継承者を男系男子に限定するというルールの欠陥があるからと言わざるを得ません。(中略)皇位継承者を男系男子に限定するというのは、側室制度をセットにして初めて成り立つものだったのです。2つあわせて機能するルールのうち片方だけを残して運営していくのは不可能でしょう」(=週刊女性)
参政党は「側室制度復活」などともいっている。なぜ、日本の#MeToo運動の人たちは、大きな声を上げて、国際的に恥ずかしい皇位継承制度を批判し、選挙の争点にしないのだろうか。
■政治家に欠けている視点
内心、複雑な葛藤を抱えているであろう愛子さんと秋篠宮佳子さんは、それぞれの秋を迎えているようである。
今年5月3日、東京で行われた「第23回世界災害救急医学会」の開会式に出席した愛子さんは、公務で初めての「おことば」を述べた。実に堂々として、「全ての人の尊厳が守られ、適切な医療や保健サービスを受けられる体制の構築は、非常に重要であると考えます」と語った。
私のような親愛子派は、愛子さんの尊厳も守ってほしいと考える。
愛子さんは仕事に公務に忙しい日々を送っているようだ。ジャーナリストの友納尚子氏は、文春WOMANでこんなエピソードを記している。
学習院女子高等科からの親友の一人は「今は仕事や公務に携われることが楽しくて仕方ないといった感じです。結婚よりも仕事が優先で、様々な方と出会ったり、知らないことを学んでいると、時間が足りないのだとお話になっていました。いつも『眠る時間がもっと欲しい、眠い!』と言いながら笑っていらっしゃいます」と明かしている。
仕事と公務に明け暮れる日々。これに好意を持つ方との逢瀬が加われば、愛子さんの青春はもっと充実したものになるのだろうが。
政治家たちは、皇室にもほかの人とは変わらない生身の人間たちが暮らしているということを、忘れてしまっていると思わざるを得ない。
■紀子さまと眞子さまの厳しい関係
一方の秋篠宮の佳子さんは結婚適齢期真っただ中である。
母親の紀子さんが59歳の誕生日に出した長文の文書の中に、天皇皇后への感謝の言葉がないことが話題になった。デイリー新潮によれば、紀子さんは秋篠宮家への風向きを何とか変えようと、懸命だという。
「紀子さまは悠仁さまの慶事を機に、長女・眞子さんの結婚騒動以降、秋篠宮家を苛んできた不評を払拭なさろうとお心を砕かれている。目下、ご家族の円満ぶりをアピールなさるべく躍起になられているのです」〔さる宮内庁関係者=デイリー新潮9月29日(月)5:52配信〕
先の誕生日の文書の中でも紀子さんは、小室夫妻に新たな家族が誕生したことを喜びつつ、
〈よいタイミングで日本を訪れてくれたら〉
〈木香薔薇のアーチがある庭を一緒にゆっくりと歩いたり、ピクニックをしたりするのはどうかしらと思いをめぐらしています〉
などと眞子さんに呼びかけていた。
だが、逆効果ではないかと見る向きもある。
「木香薔薇は、内親王時代の眞子さんのお印。紀子さまは2022、23年の文書でもこの文言を用いて眞子さんへの思いをつづっておられました。ですが、ご両親の猛反対に遭い、追い出されるような格好で渡米した眞子さんにとって、騒動は忌まわしい記憶でしかない。手のひらを返したように“ラブコール”を送られても、本人はかたくなになるだけです」(同上)
秋篠宮や悠仁さんと一緒のお出かけも増えている。特に最近、次女の佳子さんを伴っての外出が目立って増えているというのだ。
■秋篠宮家の気になるイメージ戦略
「紀子さまと佳子さまは8月10日から私的旅行で広島県を訪問されました。戦後80年の節目にあたり、直前の7月下旬には原爆犠牲者慰霊のため、ご夫妻で広島を訪問なさっている。そこから間を置かず同じ県に、折り合いがよろしくないとされてきたお二方が連れ立って“ご旅行”されるというので、庁内でも臆測が飛び交ったのです」(前出の宮内庁関係者=デイリー新潮)
現地で2人は、7月にはご訪問がかなわなかった原爆養護ホームを訪れられ、被爆少女を題材にしたミュージカルを鑑賞。だが、「ご訪問先に、お二方が来られると連絡が入ったのは数日前でした。急ごしらえの旅程だったわけですが、その一方、私的なご旅行であるのに各所で取材設定がなされたことから“母娘でのご旅行自体をお見せになりたいのでは”との声も上がっていました」(前出の記者=デイリー新潮)
こうした“演出”を宮内庁OBで皇室解説者の山下晋司氏はこう見ている。
「悠仁親王殿下のご成長を思えば、秋篠宮家に対する世間の悪い印象に紀子妃殿下が心を痛めておられるのは理解できます。“ご一家は不仲である”といった印象なども打ち消したいと願われていることでしょう。
ただし、そのお気持ちに佳子内親王殿下がお応えにならなければ、ご一緒のお出ましは実現しません。母に寄り添うことで、一家のマイナスイメージが少しでも軽減できるなら――いずれ皇室を離れる身である佳子内親王殿下も30歳となられ、こういった心境の変化が母娘でのお出ましとして表れているのだと思います」(=デイリー新潮)
秋篠宮家のイメージ戦略も大事だろうが、母親として娘の将来を憂い、皇室を早く離れたいと考えているといわれる佳子さんの想いを実現させてあげるために何ができるのかを、紀子さんには考えてほしいと思う。
総裁選で選ばれ、新首相になった人物には、皇族の一人一人にも人権があり、幸福を追求する権利があることを真剣に考え、早急に手を打ってほしいと切に望みたい。
----------
元木 昌彦(もとき・まさひこ)
ジャーナリスト
1945年生まれ。講談社で『フライデー』『週刊現代』『Web現代』の編集長を歴任する。上智大学、明治学院大学などでマスコミ論を講義。主な著書に『編集者の学校』(講談社編著)『編集者の教室』(徳間書店)『週刊誌は死なず』(朝日新聞出版)『「週刊現代」編集長戦記』(イーストプレス)、近著に『野垂れ死に ある講談社・雑誌編集者の回想』(現代書館)などがある。
----------
(ジャーナリスト 元木 昌彦)
「愛子天皇実現」は多くの国民の願いだ。
皇位継承者が秋篠宮悠仁さんしかいない(秋篠宮は辞退する意向といわれている)というのは、悠仁さんにとっても“重荷”であろう。
しかし政治はまったく動いていない。今回総裁選に出ている候補者たちも、自民党支持の保守層や参政党に恐れをなし、女性天皇について触れることさえしない。
候補者5人(小林鷹之、茂木敏充、林芳正、高市早苗、小泉進次郎)は、皇位継承問題については現行の「男系男子」による継承を維持する方針で一致している。その上で、喫緊の課題である「皇族数の減少」への対策として2つの案についての見解を表明している。
1.女性皇族が結婚後も皇室に残る案
この案は、結婚により皇籍を離れる女性皇族が、結婚後も皇室にとどまり、皇族としての活動を継続できるようにするものだ。小泉は昨年の総裁選では「選択肢を広げるべき」と積極的だったが、今回は「自民党として結論が出ておらず、拙速な判断はしない」と慎重な姿勢に転じてしまった。
ウルトラ保守の高市早苗は、女系天皇につながる可能性に懸念を示し、旧宮家の男系男子の皇籍復帰を優先すべきだと主張。他の3人も概ね慎重な立場だが、皇族数確保策の一つとして議論の対象となる可能性は否定していない。
■父親とは違う小泉進次郎
2.旧皇族の男系男子を養子として皇籍に戻す案
戦後に皇籍を離脱した旧宮家の男系男子を養子として迎え、皇籍に戻すことで皇族数を確保する案だ。高市はこの案を最も重視しており、男系継承を維持するためには必須の方策だとの考えを示している。
茂木、林、小林もこの案を皇族数確保策の有力な選択肢の一つとして検討すべきだという立場。小泉はここでも旧皇族の皇籍復帰は国民の理解を得るのが難しい可能性があるとして、慎重な姿勢だ。
小泉の父親の純一郎は首相時代、女系女性天皇も認める皇室典範の改正をする意向だった。改正直前までいったのだが、秋篠宮家に悠仁さんが生まれたことでそのままになってしまった。だが、息子はこの問題について「何も考えていない」ように見える。
石破茂はもともと女性天皇を容認するとたびたび口にしてきた。石破が続投していれば、愛子天皇実現の可能性はゼロではなかったが、それも今は虚しい。
もし、石破の“亜流”である林芳正が総理になったと仮定しても、党内の保守派とぶつかるようなテーマに手を付ける度胸がないのは、総裁選の発言からもうかがえる。
■宮内庁長官会見に見る天皇のお気持ち
今年24歳になる愛子さんは日赤の仕事をやりながら公務に励み、今年31歳になる秋篠宮佳子さんも公務をこなしている。二人とも自分の「ライフプラン」さえ描けない状況に置かれたままである。
2024年10月に国連の女性差別撤廃委員会(CEDAW)は、日本の皇位継承制度が男系男子のみを継承者と定めていることに対し、女性差別撤廃条約に違反するとして皇室典範の改正を勧告した。
だが、日本政府は呆れ果てたことに、「皇位継承資格は基本的人権に含まれないとして、委員会に勧告の撤回を求めた」のである。これこそ日本の常識は世界の非常識である以上に、日本人として恥ずかしい。
こうした政治家の人権無視に、天皇が声を上げるのではないかと女性自身(10月7日号)が報じている。
宮内庁関係者は、皇室の未来に暗雲が立ち込める中、こう話している。
「9月11日に、宮内庁の西村泰彦長官は定例の記者会見で、皇族数の減少について『大変危機感を持っている』『国会における議論が進展することを望んでいる』などと発言しました。
悠仁さまが成年式を終え、皇室は戦後初めて、未成年の皇族がいない状態になりました。にもかかわらず、長く継続してきた皇族数確保のための制度改正に向けた国会の議論は、一向に進んでいません。長官は、両陛下のご様子などを拝察しながら発言しています。危機感のない政界の動きには、皇室の方々もそろって不安をお感じになっているはずです」(=女性自身)
■本質的な解決策は1ミリも進展していない
前国会まで皇族数の確保策を巡る議論は、それをリードしてきた自民党と立憲民主党が「女性皇族が結婚した夫とその子供に皇族の身分を認めるのか」という論点で対立を深め、その隔たりが埋まらないまま結論は先送りに。石破茂首相が退任して総裁選一色になってしまった。
もちろん、誰が総裁に選ばれても、「少数与党となった政権運営のために、強硬な保守層の支持をつなぎとめる必要性があります。皇室の課題に対する自民党のスタンスは、これまで以上に柔軟さがなくなっていくとみられています」(全国紙政治部デスク=女性自身)
総裁選の多数派工作や国会での勢力維持に明け暮れる自民党が無視し続ける皇室の危機。
神道学者で皇室研究家の高森明勅氏は、次のように懸念を示した。
「2005年の小泉政権下で設けられた有識者会議が女性・女系天皇を容認する報告書を示してから20年がたちました。しかし皇族数減少や安定した皇統を維持するための本質的な解決策について、国会の議論は何度も振り出しに戻りながら、1ミリも進展していません。
2016年8月に上皇陛下がご退位の意向を示されたビデオメッセージは、決して望まれたことではなかったものの、数少ない選択肢として行われ、そのお気持ちを国民は受け止め、政治が動かざるをえない状況を作り出しました。
あのときと同じように、政治による問題解決の先送りがこれ以上続けば、『再び天皇陛下によるおことばがなければ、政治は動かせないのか』という憤りの声が国民から上がりかねないほど、危機的な状況ともいえるのです」(=女性自身)
■天皇が下す「人生二度目のご決断」
先の宮内庁関係者が思い起こすのは、天皇が皇太子時代の2004年5月、突然、意を決して述べた「人格否定発言」のことだという。
「陛下は欧州歴訪前の記者会見で、《それまでの雅子のキャリアや、そのことに基づいた雅子の人格を否定するような動きがあったことも事実です》と述べられ、国内外に衝撃が走りました。
お世継ぎへのプレッシャーを受け続け、この当時の雅子さまはご体調を崩されてお務めもままならず、当時の皇太子家は厳しいお立場にあったのです。雅子さま、幼い愛子さまを守るため、穏やかで感情的にならない陛下がご自身の人生でただ一度、お怒りを形にされたご発言でした。
お立場が憲法で定められているばかりでなく、国会で与野党が対立している問題に対して意見を表明されることは、陛下のご性格からしても考えにくいでしょう。しかし陛下の、“愛子や女性皇族の未来を守らねば”というお気持ちは非常に強いものがあると拝察しています。皇族数を確保する方策すら放置され続ければ、人生二度目となるご決断を下さざるをえないとも限らないのです」(=女性自身)
今の憲法を順守するといっている天皇が、そのようなことをするのはあり得ないことだとは思うが、我が子を思う親の心は誰も同じである。まして愛子さんは雅子皇后との間に生まれたたった一人の女の子なのである。
実は、悠仁さんの「成人式」後の内宴(晩餐)が帝国ホテルで行われることが発表された時、成城大学の森暢平教授はサンデー毎日(9月7日号)でこういう見方をしていた。
「天皇陛下と秋篠宮さまが、『皇位継承は直系継承が相応しく、愛子さまへの継承の道を作りたい。皇室からのメッセージの一貫として「悠仁さま祝宴」は皇居外でしよう』と決め、宮内庁幹部と相談して、今回の措置になっていたのなら、それは歓迎すべきことだ」
■国際的に恥ずかしい皇位継承制度
もちろん、森教授も、現実はそうではないし、秋篠宮任せで事が進んだだけだとしているが、秋篠宮の中に「愛子さんを天皇に」という思いがあり、それを兄である天皇に秘かに伝えたのではないかと、私のような愛子天皇待望論者は、深読みしてしまうのだが。
先の高森明勅氏は、週刊女性(10月7・14日号)で、「皇室の安定的な存続を望むのであれば、次の継承者は愛子さまでなければならない」とも語っている。
さらに続けて、「今の陛下や秋篠宮殿下のお子さま方の代で皇位継承者の有資格者はおひとりしかいらっしゃらない。このような危機に陥った原因は、皇位継承者を男系男子に限定するというルールの欠陥があるからと言わざるを得ません。(中略)皇位継承者を男系男子に限定するというのは、側室制度をセットにして初めて成り立つものだったのです。2つあわせて機能するルールのうち片方だけを残して運営していくのは不可能でしょう」(=週刊女性)
参政党は「側室制度復活」などともいっている。なぜ、日本の#MeToo運動の人たちは、大きな声を上げて、国際的に恥ずかしい皇位継承制度を批判し、選挙の争点にしないのだろうか。
■政治家に欠けている視点
内心、複雑な葛藤を抱えているであろう愛子さんと秋篠宮佳子さんは、それぞれの秋を迎えているようである。
今年5月3日、東京で行われた「第23回世界災害救急医学会」の開会式に出席した愛子さんは、公務で初めての「おことば」を述べた。実に堂々として、「全ての人の尊厳が守られ、適切な医療や保健サービスを受けられる体制の構築は、非常に重要であると考えます」と語った。
私のような親愛子派は、愛子さんの尊厳も守ってほしいと考える。
愛子さんは仕事に公務に忙しい日々を送っているようだ。ジャーナリストの友納尚子氏は、文春WOMANでこんなエピソードを記している。
学習院女子高等科からの親友の一人は「今は仕事や公務に携われることが楽しくて仕方ないといった感じです。結婚よりも仕事が優先で、様々な方と出会ったり、知らないことを学んでいると、時間が足りないのだとお話になっていました。いつも『眠る時間がもっと欲しい、眠い!』と言いながら笑っていらっしゃいます」と明かしている。
仕事と公務に明け暮れる日々。これに好意を持つ方との逢瀬が加われば、愛子さんの青春はもっと充実したものになるのだろうが。
政治家たちは、皇室にもほかの人とは変わらない生身の人間たちが暮らしているということを、忘れてしまっていると思わざるを得ない。
■紀子さまと眞子さまの厳しい関係
一方の秋篠宮の佳子さんは結婚適齢期真っただ中である。
母親の紀子さんが59歳の誕生日に出した長文の文書の中に、天皇皇后への感謝の言葉がないことが話題になった。デイリー新潮によれば、紀子さんは秋篠宮家への風向きを何とか変えようと、懸命だという。
「紀子さまは悠仁さまの慶事を機に、長女・眞子さんの結婚騒動以降、秋篠宮家を苛んできた不評を払拭なさろうとお心を砕かれている。目下、ご家族の円満ぶりをアピールなさるべく躍起になられているのです」〔さる宮内庁関係者=デイリー新潮9月29日(月)5:52配信〕
先の誕生日の文書の中でも紀子さんは、小室夫妻に新たな家族が誕生したことを喜びつつ、
〈よいタイミングで日本を訪れてくれたら〉
〈木香薔薇のアーチがある庭を一緒にゆっくりと歩いたり、ピクニックをしたりするのはどうかしらと思いをめぐらしています〉
などと眞子さんに呼びかけていた。
だが、逆効果ではないかと見る向きもある。
「木香薔薇は、内親王時代の眞子さんのお印。紀子さまは2022、23年の文書でもこの文言を用いて眞子さんへの思いをつづっておられました。ですが、ご両親の猛反対に遭い、追い出されるような格好で渡米した眞子さんにとって、騒動は忌まわしい記憶でしかない。手のひらを返したように“ラブコール”を送られても、本人はかたくなになるだけです」(同上)
秋篠宮や悠仁さんと一緒のお出かけも増えている。特に最近、次女の佳子さんを伴っての外出が目立って増えているというのだ。
■秋篠宮家の気になるイメージ戦略
「紀子さまと佳子さまは8月10日から私的旅行で広島県を訪問されました。戦後80年の節目にあたり、直前の7月下旬には原爆犠牲者慰霊のため、ご夫妻で広島を訪問なさっている。そこから間を置かず同じ県に、折り合いがよろしくないとされてきたお二方が連れ立って“ご旅行”されるというので、庁内でも臆測が飛び交ったのです」(前出の宮内庁関係者=デイリー新潮)
現地で2人は、7月にはご訪問がかなわなかった原爆養護ホームを訪れられ、被爆少女を題材にしたミュージカルを鑑賞。だが、「ご訪問先に、お二方が来られると連絡が入ったのは数日前でした。急ごしらえの旅程だったわけですが、その一方、私的なご旅行であるのに各所で取材設定がなされたことから“母娘でのご旅行自体をお見せになりたいのでは”との声も上がっていました」(前出の記者=デイリー新潮)
こうした“演出”を宮内庁OBで皇室解説者の山下晋司氏はこう見ている。
「悠仁親王殿下のご成長を思えば、秋篠宮家に対する世間の悪い印象に紀子妃殿下が心を痛めておられるのは理解できます。“ご一家は不仲である”といった印象なども打ち消したいと願われていることでしょう。
ただし、そのお気持ちに佳子内親王殿下がお応えにならなければ、ご一緒のお出ましは実現しません。母に寄り添うことで、一家のマイナスイメージが少しでも軽減できるなら――いずれ皇室を離れる身である佳子内親王殿下も30歳となられ、こういった心境の変化が母娘でのお出ましとして表れているのだと思います」(=デイリー新潮)
秋篠宮家のイメージ戦略も大事だろうが、母親として娘の将来を憂い、皇室を早く離れたいと考えているといわれる佳子さんの想いを実現させてあげるために何ができるのかを、紀子さんには考えてほしいと思う。
総裁選で選ばれ、新首相になった人物には、皇族の一人一人にも人権があり、幸福を追求する権利があることを真剣に考え、早急に手を打ってほしいと切に望みたい。
----------
元木 昌彦(もとき・まさひこ)
ジャーナリスト
1945年生まれ。講談社で『フライデー』『週刊現代』『Web現代』の編集長を歴任する。上智大学、明治学院大学などでマスコミ論を講義。主な著書に『編集者の学校』(講談社編著)『編集者の教室』(徳間書店)『週刊誌は死なず』(朝日新聞出版)『「週刊現代」編集長戦記』(イーストプレス)、近著に『野垂れ死に ある講談社・雑誌編集者の回想』(現代書館)などがある。
----------
(ジャーナリスト 元木 昌彦)
編集部おすすめ