新党「中道改革連合」の設立で、創価学会員票は立憲民主党出身の議員に流れるのか。ジャーナリストの須田慎一郎さんは「創価学会の選挙戦略に関する内部文書を入手した。
比例区は『中道』に投票するよう呼び掛けているが、小選挙区とは温度差がある。学会員票が自動的に立憲出身議員に流れるとは考えにくい」という――。
※本稿は、須田慎一郎氏のYouTubeチャンネル「ただいま取材中」の一部を再編集したものです。
■創価学会の内部文書を入手
1月19日、高市早苗首相は記者会見を行い、23日に召集される通常国会で衆院議員を解散する意向を示した。衆院選の告示は1月27日、投開票は2月8日で行われる。
この記者会見の前日、筆者は驚くべき資料を入手した。そこから読み取れることを本稿でお伝えしたい。
手元にあるのは、1月18日に創価学会内部で配布された文書である。現場の責任者である「地区部長」限定で共有されたものだ。内容は、16日に公明党と立憲民主党が合流する形で結成された「中道改革連合」が、今後の選挙戦をいかに戦うかという基本方針が示されたものと言える。
タイトルには「支援の取り組みについて」と記されている。その内容は「全国どこでも比例区は中道改革連合」とし、「小選挙区については原則として中道の候補へ」というものである。

「自分史上最高の拡大で全国に支持を広げよう」との文言が続く。「全活動家が私の挑戦、目標を決め出発」とも記されている。ここでの「出発」とは、創価学会内部で「活動開始」ということ意味する用語である。まず個々人が具体的な活動目標を最初に定め、取り組みを開始せよという指示だ。
さらに「本友(ほんとも)対話に飛び出そう」との方針も示されている。具体的には友人ネットワークとの対話を通じて、支持を広げていく活動を指している。
あわせて電話やSNSのフル活用も掲げられているが、特に比例区に関しては「中道を丁寧に浸透させよう」と星印付きで強調されている。資料の全体像から、今回の選挙において比例区を最重点に置いている姿勢がうかがえる。
■比例区重視の選挙
注目すべきは、小選挙区が「絶対」ではなく、「原則」とされている点だ。
小選挙区への言及は、いわば付け足しのような印象を受ける。中道改革連合が本格的に始動していないため比例区が先行していると思われるが、選挙区に関しては「原則として中道の候補に投票すること」という、極めて弱いトーンの指示に留まっている。
1月18日から19日にかけて、現場の責任者である地区部長が集う「地区部長活動者会」が開催された。
これは選挙戦に向けた打ち合わせや意思統一を図るための会合である。つまり、実質、選挙戦はスタートしたと言ってもいい。にもかかわらず小選挙区については、ほとんど言及がないということが大きな特徴となっているのだ。
■当てが外れた立憲民主党
また、資料には2次元バーコードが記載されており、そこから「公明党サブチャンネル」で配信されている動画を視聴できるようになっている。動画の内容は、斉藤鉄夫代表が新党結成の舞台裏を語るというものだ。
この動画には、中道改革連合がどのような性格を持つ組織なのか、あるいは今後どのような戦略で選挙戦に臨むのかを知るための重要な示唆が含まれている。資料内では、この動画を視聴することが強く推奨されている。これを見て、意思統一を図り、選挙活動をしてくれというメッセージである。
この資料から読み取れる公明党の意図が明らかだ。
つまり、今回、中道改革連合は立憲民主党の衆議院議員と公明党の衆議院議員が離党して新しい政治勢力、新党を結成した。そして、公明党に所属していた衆議院議員は比例区に、立憲民主党に所属していた衆議院議員は小選挙区と住み分けをすることになるなかで、公明党の支援組織である創価学会が重点的に選挙活動を行うのは基本的に比例のみだということだ。
中道改革連合に所属したからといって、立憲民主党系の候補者を創価学会員が自動的に応援するわけではないのだ。
これまでどういう活動をしてきたのか、どのような抱負があるのか、今後の方針はどのようなものか。あくまで人物本位、「中身」次第なのである。組織としては、小選挙区について意思統一は図らないということを明言しているのだ。
■学会員から評判が悪い3議員
昨今、自民党から離れた公明党支持層や創価学会の票が、そのまま立憲民主党系の候補者に上乗せされるとの見方があるが、実際はまったく違う。まるで当選が決まったかのように、余裕を見せている議員もいるが、現実はそんな甘いものではない。斉藤代表が掲げる5つの方針、これにどう向き合っていくかが問われているのである。
公明党は自民党と26年間にわたって連立を組んできた。地方議会などでは自民党と公明党の連携が継続している現状もあり、小選挙区において誰を支援するかは、個別の人間関係も含めて判断されることになる。
繰り返しになるが、立憲民主党側が「中道改革連合に所属すればオートマチックに学会票が獲得できる」と考えているのであれば、それは大きな誤りであると言わざるを得ない。
公明党議員を取材していると立憲民主党系の左派リベラル層、例えば、蓮舫氏や小西洋之氏、辻元清美氏ら(全員、参議院議員のため今回は対象外だが)に対して、創価学会員からは非常に冷ややかな目が向けられている。
表面上、平和安保法制への認識を違憲から合憲に唱えるなど「宗旨替え」をしたとしても、それだけでオートマチックに学会票が上乗せされるわけではない。言葉の体裁を整えることよりも、これまでの経緯を含めた活動実態や、今後の行動という「中身」が厳しく問われることになる。

今回入手した内部文書という裏付けを共有することで、中道改革連合の実態をご紹介させていただいた。

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須田 慎一郎(すだ・しんいちろう)

ジャーナリスト

1961年東京生まれ。日本大学経済学部を卒業後、金融専門紙、経済誌記者などを経てフリージャーナリストとなる。民主党、自民党、財務省、金融庁、日本銀行、メガバンク、法務検察、警察など政官財を網羅する豊富な人脈を駆使した取材活動を続けている。週刊誌、経済誌への寄稿の他、TV「サンデー!スクランブル」、「ワイド!スクランブル」、「たかじんのそこまで言って委員会」など、YouTubeチャンネル「別冊!ニューソク通信」「真相深入り! 虎ノ門ニュース」など、多方面に活躍。『ブラックマネー 「20兆円闇経済」が日本を蝕む』(新潮文庫)、『内需衰退 百貨店、総合スーパー、ファミレスが日本から消え去る日』(扶桑社)、『サラ金殲滅』(宝島社)など著書多数。

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(ジャーナリスト 須田 慎一郎)
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