株式市場は高値圏が続く。オルカンやS&P500に投資を続けていいのか。
経済評論家の頼藤太希さんは「オルカンやS&P500だけでなく、3つの資産を併せ持つことでリスクを抑えながら資産を増やすことができる。そしていま絶好の買いのタイミングが到来している」という――。
■オルカン、S&P500だけでは危険
日米ともに株式市場は高値圏が続いています。その中で「いずれ暴落するのでは?」と心配している読者も多いのではないでしょうか。しかし、暴落はいつ来るかわかりません。そこで以前の記事では持ち続けるだけで安定的に資産が増える筆者独自のポートフォリオを紹介しました。
詳細は以前の記事で確認していただきたいのですが、簡単に言うと資産を無リスク資産とリスク資産に分け、リスク資産は3つの資産を均等に保有する方法です。3つの資産とは「世界株」(オルカン)、金(ゴールド、円ベース)、米国利付債(米国債)です。
オルカンやS&P500だけでは、株式市場の暴落で大きな損失を抱える可能性がありますが、3つの資産を持つことで特定の資産が値下がりしても他の資産が値上がりして補いながら資産を増やすことができます。このうち米国債は、株と反対の値動きをする傾向にある点や、保有中に利息という安定したリターンがある点から保有する意味のある資産です。そしていま、米国債に絶好の投資チャンスがやってきています。
■米国債を買う絶好のタイミング到来
2026年1月、米トランプ大統領はデンマーク自治領グリーンランドの領有権獲得に反対する欧州諸国に追加関税を課すという脅しを発信し、米国売りが再燃しました。
2025年4月にも、トランプ関税を発端とする米国株・米国債・ドルのトリプル安が起こりましたが、今回も同様に発生しています。
例えば、米国債10年利回りは1月9日4.171%→1月20日4.295%(+0.124%)、米国債30年利回りは1月9日4.819%→1月20日4.903%(+0.084%)と上昇しています。本稿執筆時点では株式市場も含め、乱高下が続いている状況です。
しかし、米国債投資をする絶好のタイミング再来とも言えそうです。米国債はそもそも世界一安全な債券です。それでいて金利が高いのが魅力。
債券投資の本質は、キャピタルゲインではなく、インカムゲインです。今後、米国は金利低下局面を迎える中、年利回りが上昇した今、長期債に投資・保有すれば満期まで高金利を得続けることができます。
たとえば、年金で生活する人にとっては、年金以外に定期的に収入があれば、生活が豊かになります。現役世代であっても有益な投資先です。将来のために資産形成することがすべてではありません。勤労収入とは別に定期的な収入があれば、今の生活の充実度を高めるために使えます。

■そもそも米国債って何?
米国債は、米国政府(米国財務省)が発行する債券です。日本が国の資金不足を補うために日本国債を発行するのと同様に、米国も米国債を発行しています。
米国債は発行額もケタ外れです。2025年の発行額は過去最高となる約30.5兆ドル。1ドル=155円で考えると約4728兆円です。2024年の発行額は28.3兆ドルなので、+2.2兆ドル(+341兆円)の増加です。
日本国債の発行額は2025年で約177兆円なので約27倍。規模の違いがよくわかります。米国債は、世界経済の中心である米国政府が元本や利子の支払いを保証しているため、高い信用力を誇っています。
米国債は、日本国債よりも高い金利が期待できる投資先です。債券利回りは、政策金利の見通しなどによって決まります。近年、米国ではインフレを解消するために政策金利を引き上げてきたこともあり、現在も高い水準が続いています。
日本もこのところ、政策金利の引き上げによりジリジリと上昇していますが、米国金利と比べるとまだ低い状況です。
■米国経済は依然として強い
米国のGDPは約29兆ドル。2位の中国(約18兆ドル)を引き離して世界一です。かつて世界2位だった日本は4位で約4兆ドルです(以上すべて2024年時点)。
日本は人口減少が進んでいますが、国連の推計によると今後中国やインドでも人口が減少します。しかし、米国は主要先進国の中で唯一人口が増加。2026年時点で約3.5億人、国連の推計によれば2050年に約3.8億人、2100年には約4.2億人になると予想されています。
人口が増えると、経済活動が行われ、経済成長が続くことが見込まれます。名目GDP上位5カ国の推移・見通しを見てみると、米国は右肩上がりで、力強さが際立っています。
実際、米国には世界的な企業がたくさんあります。マグニフィセント・セブン[グーグル・アマゾン・フェイスブック(現メタ)・アップル・マイクロソフト・テスラ・エヌビディア]をはじめ、身近なところにも米国生まれの商品・サービスがたくさんあります。世界的に使われる商品・サービスを生み出し続けられる限り、米国は、世界トップであり続けるでしょう。

トランプ関税などで地政学リスクの影響は続くものの、米国経済は好調を維持していくと予想できます。
■米国債は円高で買う? 円安で買う?
米国債は円高のときに買うのがいいか、円安のときに買うのがいいか。結論からいうと、米国債を購入する際に為替レートを気にする必要はありません。米国債に限らず、外貨建ての商品は円高のときに購入して、円安になったときに売却すれば、為替差益を得ることができます。
しかし、米国債は円高のときには債券利回りが低くなっているため、投資のうまみがありません。米国金利が低水準で、これから金利が上がっていくフェーズだとしたら、景気が上向くということですから、米国債よりも米国株を買ったほうがよいでしょう。過去を振り返っても、景気拡大局面は株式のリターンの方が債券のリターンを圧倒しています。
米国債投資のうまみは高金利にあります。ただ、為替水準はドル金利が高いがために円安になっているはずですし、現状は円安水準です。今後、米国金利が下がり、円金利との差が縮小していく見通しなので、円高方向に向かうことが予想されます。
今後円高になるならば買い控えるという判断は早計です。なぜなら、ドルを円に換えるタイミングは自分で選べるからです。
円に換える際に円高になっているのであれば、すぐに換えるのではなく、円安になるのを待ってから換えるようにすればよいでしょう。
円高による損失が怖いという方は、「損益分岐点為替レート」をチェックしましょう。米国債が償還したときに、利益と損失の境目となる為替レートのことです。損益分岐点為替レートを把握しておけば、為替レートがある程度円高になっても安心して保有できます。証券会社によっては、取り扱いのある米国債の損益分岐点為替レートが計算できます。
ただし、為替レートは気にしすぎると、円に戻しづらくなります。ライフイベントでお金を使う際は、損益分岐点為替レートを上回っていればよしとするくらいのスタンスがいいかもしれません。
■米国債には2つの種類がある
米国債には、大きく分けて「利付債」と「ストリップス債」があります。
利付債は、保有中に利子が受け取れ、償還日になると投資した元本が戻ってきます。売買はもちろん、利子や元本のやりとりもすべてドルで行います。米国債の場合、年2回利子をドルで受け取ります。この利子は、そのままでは再投資されません。
したがって、利付債は単利の商品です。利子は生活などのために使うこともできますし、次の投資に回すこともできます。
ストリップス債は、あらかじめ複利現価率で割引された価格を参考に、需要と供給のバランスで決まる価格で販売され、満期になると額面金額が受け取れる債券。米国財務省が開発した債券で、利付債の元本と利子を切り離し、それぞれをストリップス債の形で取引できるようにしています。
ストリップス債は、利子が元本に組み込まれ、償還日には額面の金額が戻ってきます。したがって、購入金額と額面の差額が利益になります。利付債のように保有中に利子をもらうことはできませんが、複利効果が得られる(搭載されている)のがメリットです。
■金利と債券価格の関係は?
債券の金利と債券価格の間には、シーソーのような関係があります。市場金利が上がると債券価格は下がり、市場金利が下がると債券価格は上がるしくみになっています。
たとえば、金利が4%の債券を1万円分持っていれば、1年間で400円の利子が得られます。しかし、市場金利が5%になったとしたら、以後は金利(利率)が5%の債券が発行されることになります。誰もが4%の債券よりも5%の債券を欲しいと思うでしょう。金利が5%の債券を1万円分買えば、1年間で500円の利子が得られるからです。こうして、金利が4%の債券の魅力が薄れ、欲しい人が減り、債券価格が下落するのです。
反対に、金利(利率)が4%の債券の発行後に市場金利が3%になったとしたら、4%の債券の価格は上昇します。4%の債券の魅力が増して欲しい人が増え、債券価格が上昇するのです。
■金利低下局面で選ぶべき債券は?
債券の情報には「利率」と「利回り」があります。利率とは、債券の額面に対して毎年得られる利子の割合のこと、利回りとは、購入金額に対する収益の割合のことです。投資するにあたっては「利回り」が重要指標です。自分がいくらで購入するかによって、利回りも変わります。
米国は現在、金利低下局面を迎えています。2025年12月に0.25%の利下げを決定し、政策金利は3.5~3.75%となっています。金利低下局面では、発行される債券の利率が低下していきます。ですから、なるべく償還期限が長く、利回りの高い債券を選びます。市場金利が低下していっても、保有債券からは高い金利(利率)で利息を受け取ることができます。
たとえば、図表5のような(1)~(3)の利付債があったとしたら、おすすめは(1)です。
ここに挙げた3つの債券のなかでは一番残存期間が長く、利回りが高くなっています。
また利率も高いですし、単価も100を切っています。
金利低下局面では、利回りが高く、残存期間が長いものを選ぶ、近辺の債券と比べ価格が割高になっていないものを選ぶことで、その後市場金利が下がったとしても、高い金利を受け取り続けることができます。
債券購入後はそのまま満期まで保有を続けるのが基本戦略ですが、必ずしも満期まで保有を続ける必要はありません。市場金利の低下は、債券価格の上昇を意味します。残存期間が長く、利率が高いものほど大きく値上がりするので、売却益を狙うこともできるでしょう。
値上がり益を狙った米国債投資がしたいならば、「利付債」よりも「ストリップス債」がベターです。
なお、米国債の購入価格には注意しましょう。償還時に100になるため、高すぎるものを買うと償還時に損をします。価格とのバランスも見ての投資が鉄則です。
■ストリップス債は、相続税対策にもなる
生きている間に他の人に財産を無償であげることを「生前贈与」といいます。自分の財産をあげるのですが、その際には贈与税という税金が発生します。課税方法には「暦年課税」と「相続時精算課税」があり、どちらかを選んで利用します。
相続時精算課税は、年間110万円の基礎控除と2500万円までの贈与であれば税金がかからず、相続時に先送りできる制度です。相続時にかかる相続税は、贈与を受けたときの金額で計算します。そのため、相続時精算課税を活用して贈与を受けたお金でストリップス債を購入しておけば、将来値上がりしても支払う税金は贈与時の金額で計算するのでお得というわけです。
たとえば、2050年5月15日満期のストリップス債(利回り4.677%、単価31.33ドル)を2500万円分購入した場合、利子はありませんが償還日には7978万円が得られるので、トータルの利益は約5478万円となります。しかし、相続税の課税価格は贈与時の2500万円です(償還時の利益は所得税の対象にはなります)。
相続時精算課税を活用して、将来値上がりの期待できる財産を早めに贈与すれば、相続税を抑えることができます。
■間接的に米国債投資する方法も
米国債へ直接投資をしなくても、投資信託やETFを通じて間接的に米国債に投資することもできます。
米国債ETFを利用すると、残存期間が一定の米国債に少額から投資できます。米国債ETFのなかには毎月分配金を出す商品もあるので、キャッシュフロー資産として活用しやすいのがメリット。ただし、NISAは毎月分配型が対象外なので、NISAで投資する場合は隔月分配型や四半期分配型になります。
東証上場ETFや投資信託の場合、為替変動が基準価額などに自動的に反映されてしまいますが、米国ETFの場合は分配金・償還金をドルでもらえるので、円に両替するタイミングを自分でコントロールできます。
米国債投資について気になった人は、拙著『マンガと図解でよくわかる 最高の米国債投資術』(ソシム)を参考にしてください。米国債の特徴やリスクをはじめ、投資戦略やモデルケース別の購入例、口座開設から注文方法、売却や取り崩し戦略までをマンガと図解でわかりやすく紹介しています。

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頼藤 太希(よりふじ・たいき)

経済評論家・マネーコンサルタント

Money&You代表取締役。中央大学商学部客員講師。早稲田大学オープンカレッジ講師。ファイナンシャルプランナー三田会代表。慶應義塾大学経済学部卒業後、アフラックにて資産運用リスク管理業務に6年間従事。2015年に現会社を創業し現職へ。日テレ「カズレーザーと学ぶ。」、フジテレビ「サン!シャイン」、BSテレ東「NIKKEI NEWS NEXT」などテレビ・ラジオ出演多数。ニュースメディア「Mocha」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」運営。『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)など書籍110冊超、累計190万部。日本年金学会会員。ファイナンシャルプランナー(CFP®)。1級FP技能士。日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)。宅地建物取引士。日本アクチュアリー会研究会員。X(@yorifujitaiki)

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(経済評論家・マネーコンサルタント 頼藤 太希)
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