2月3日、週刊文春電子版が、高市早苗総理の「日曜討論」欠席は放送2日前の金曜日から検討されていたと報じ、旧統一教会問題から逃げるための「ズル休み」ではないかとの批判が起きている。実際はどうだったのか。
ジャーナリストの須田慎一郎氏は「高市総理は自分からは依頼していないと経緯を説明している。両方の言い分を比較して、読者に判断してほしい」という――。
※本稿は、須田慎一郎氏のYouTubeチャンネル「ただいま取材中」の一部を再編集したものです。
■深夜に送った一通のメール
今回、緊急で記事を出させていただいた。その理由はこの記事を、ご一読いただき、納得いただいた方には、ぜひ、広く拡散していただきたいという願いがあるからだ。
一体何かと言えば、衆議院選挙のさなかに大きな話題となり、いま大炎上中の「高市早苗総理のNHK日曜討論ドタキャン問題」だ。
発端は2月3日、週刊文春電子版が報じた記事だ。先日、高市総理がNHKの「日曜討論」を欠席したことを受け、同誌は「様々な問題を抱える中で出席を回避したのではないか」「いわゆる『ズル休み』ではないか」という趣旨の記事を掲載した。
官邸関係者が今回の事案の真相を明かしており、「放送2日前の1月30日(金曜日)時点で、高市側から選対委員長を務める小林鷹之氏に対し、代打としての出演を打診している」というコメントが紹介されている。しかし、小林氏は日曜午前10時半から京都での遊説日程が入っていたため、調整がつかなかったという内容だ。
これまでの経緯では、高市総理は日曜討論の前日、街頭演説の際に支持者から手を強く引っ張られたことで負傷したとされている。もともと関節リウマチの持病がある中で強く引っ張られたために怪我をし、翌日曜の朝に急遽治療を受けなければならなくなった。
その治療を優先したためにNHKの日曜討論を欠席した、という流れであった。
しかし、週刊文春の記事はこれに異を唱えるものだ。「怪我をする前からすでに代役をアテンドしていたのだから、怪我による欠席という理由は虚偽である」というニュアンスで報じている。
では、なぜ欠席しなければならなかったのか。週刊文春の記事は、同誌が報じた旧統一教会と高市早苗総理との関係について、日曜討論の場で追及されることを避けたかったのではないか、というストーリーで書かれている。つまり、追及を逃れるために怪我を理由に「ズル休み」をしたのではないか、という指摘だ。
果たしてそれは事実なのだろうか。本当に放送の2日前に代役を依頼しようとしていたのか。もし代役を頼んでいたことが事実であれば、これまでの説明が大きく覆されることになり、これは非常に重大な問題であると私も考えた。
そこで、返信があるかは分からなかったが、昨晩の深夜、高市総理に直接メールを送り、実際のところはどうだったのかを問い合わせた。
■「私からは誰にも依頼していません」
深夜という時間帯であることに加え、多忙を極める選挙活動中であることから、返信はないだろうと考えていた。「もし返信があれば幸い」という程度の思いであった。
その際、「事の真相については、X(旧Twitter)で公開されてはいかがでしょうか」という提案も添えておいた。
すると、しばらくした午前1時前、高市総理から1通の返信があった。このメールの内容について、皆様と情報を共有したいと思う。メールの文面をそのまま読み上げる。
高市総理からの返信内容は以下の通りである。
「私からは誰にも(代役を)依頼していません。選挙公示日から右手指関節が2本曲がり、腫れ上がっていたところ、木曜日(1月29日)と金曜日(1月30日)の演説会で手を強く引っ張られてアウトでした。私は関節リウマチ患者であるため、関節が弱く壊れやすい状態です。
金曜日から遊説のキャンセルを党本部に依頼していましたが、キャンセルはできないとのことで、日曜朝にようやく医務官に消炎処置とテーピングをしてもらい、午後から遊説を再開することになりました。多分、党本部がピンチヒッターとして田村憲久先生にお願いしてくれたと思います。今も毎朝、医務官に消炎処置とテーピングをしてもらいながら遊説を続けています。選挙後に病院でレントゲンを撮ります」

という返事が返ってきた。

■出演を前提に予定を組んでいた
さらに、続けて次のような回答もあった。
「総理秘書官に聞いたら、日曜朝はNHK出演のために演説出発を遅めにしていたので、膠原病(関節リウマチ)などの専門医である医務官に日曜朝に治療してもらえば(出演に)間に合うということで、NHK出演のために遊説を遅めにしていました」
もともと高市総理は、NHKに出演するために遊説の出発時間を遅めに設定していた。つまり、出演することを前提にスケジュールを組んでいたのである。遊説のスタートを遅らせてまで、出演の準備を整えていたということだ。
■「すみません、左手で打っていて変な文章になりました」
そして、さらに次のように続けている。
「私の症状を心配した官房長官(編集部注:木原稔氏)が、治療を優先すべきだとピンチヒッターを探してくれたそうです」
とのことである。つまり、日曜の朝しか治療の機会がなかったということだ。ここまでのメールで文章は乱れていて、次の文章を読んだ時に私は何とも言えない気持ちになった。高市総理はメールの最後にこう綴っている。
「すみません、左手で打っていて変な文章になりました」
もし文章がスムーズではないように感じられたとしても、それは右手が使えない状態だからである。右手が効かず、パソコンを打つことができないため、左手のみで返信を打っていたという事実が最後に明かされた。文章に多少の違和感やぎこちなさがあったのは、そのためだったのである。

■高市総理の説明に矛盾はない
週刊文春の指摘と高市総理の説明、どちらに信憑性があるのかについては、皆様ご自身に判断していただきたい。
週刊文春電子版が報じるように、旧統一教会問題を追及されたくないがために日曜討論を欠席し、「ズル休み」をしたのか。それとも、総理自身が説明するように、本当は出席するつもりで準備を進めていたのか。後者の証拠として、出演のために遊説の出発時間を遅らせていたという事実がある。
病状を心配した官房長官の判断も、相当に深刻な状態であったことを物語っている。右手で患部をかばい、不自由な左手でパソコンを打ったために文面が乱れてしまうほどの状況だ。こうした経緯を踏まえると、「治療を優先すべきだ」として代役を探したという説明に矛盾はないと私は考える。
■もう少し丁寧な取材が必要ではないか
とは言え、週刊文春側も高市、小林、田村の三氏に対して質問状を送付したはずである。それに対し、三者からは「党幹部の日々のやり取りの詳細については公表を控えたい」という旨の回答があったようだ。
そのため、あのような記事になったという経緯は理解できなくもない。しかし、形式的な質問状を送り、回答がないからといって、そのまま一方的に断定するのはいかがなものか。
本件は、場合によっては選挙結果にも大きな影響を与えかねない。
さらに、高市総理の名誉を大きく傷つけることにもなりかねない事案である。そうした状況を鑑みれば、もう少し丁寧な取材があってもよかったのではないだろうか。あまりにも簡略な反論取材で済ませてしまう姿勢には疑問が残る。そもそも、週刊文春が報じた旧統一教会の問題自体、現時点ではさほど大きな問題にはなっていない。
しかし、高市総理が旧統一教会問題を非常に気にしているという文脈やストーリーで記事を繋げようとしていたのであれば、週刊文春側としては「してやったり」という思いだったのではないかと勘ぐりたくもなる。
■読者の皆さんに判断してほしい
いずれにせよ、「2日前に代役を立て、NHKの日曜討論への欠席は既に決まっていた」という指摘については、先ほど紹介した高市総理自身の説明を聞く限り、事実ではない。確かに代役を探していた形跡はあるようだが、それは総理自身が依頼したことではないということだ。結局のところ、急な欠席はできないという前提で動いていたが、最終的にそのような結果になったのが真相のようである。
今日お伝えしたこの情報は、個人的に極めて重要だと考えている。物事を正しく判断していただくためにも、いわゆる両論併記ではないが、「週刊文春の主張」と「高市総理の説明」の両方を照らし合わせ、真実が一体どこにあるのかを考えていただきたい。
現状では情報があまりにも一方的であり、場合によってはこれが選挙結果にも影響を与えかねない。そういう意味で、総理はこのように説明しているという事実を伝えたい。
どちらに真実があるのか、どちらが正しいと考えるのか。一方的な情報だけで判断してはいけないと私は考えている。

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須田 慎一郎(すだ・しんいちろう)

ジャーナリスト

1961年東京生まれ。日本大学経済学部を卒業後、金融専門紙、経済誌記者などを経てフリージャーナリストとなる。民主党、自民党、財務省、金融庁、日本銀行、メガバンク、法務検察、警察など政官財を網羅する豊富な人脈を駆使した取材活動を続けている。週刊誌、経済誌への寄稿の他、TV「サンデー!スクランブル」、「ワイド!スクランブル」、「たかじんのそこまで言って委員会」など、YouTubeチャンネル「別冊!ニューソク通信」「真相深入り! 虎ノ門ニュース」など、多方面に活躍。『ブラックマネー 「20兆円闇経済」が日本を蝕む』(新潮文庫)、『内需衰退 百貨店、総合スーパー、ファミレスが日本から消え去る日』(扶桑社)、『サラ金殲滅』(宝島社)など著書多数。

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(ジャーナリスト 須田 慎一郎)
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