高市トレードで日経平均株価が最高値を更新する中で「これから投資をはじめるのは遅すぎる」と感じている人も多いだろう。ファイナンシャルプランナーの藤原久敏さんは「こんなときこそ、自分の投資スタイルを確立することが大事。
私は『赤いものを見つける実験』からスタートして、投資対象を2つに絞り込んだ」という――。
■芸人さんが、面白い話ができる理由
よく芸人さんが、トーク番組などで、身近で起こった「面白いエピソード」を披露していますよね。
そんな面白いエピソードを聞いては、「さすがは芸人さん、我々とは違って、いろいろと面白い体験をしているんだな」と私は感心していたのですが、以前、とある芸人さんの発言を聞いて、それは的外れな感想だと気付かされたのでした。
その芸人さんは、面白いエピソードを披露した後で、司会者から「やっぱり芸人さんは、いろいろと面白い体験をしてらっしゃるから、そんなにたくさんの面白いエピソードがあるんですね?」と聞かれて、次のように答えたのでした。
「たしかに僕ら芸人は、一般の人に比べて、いろいろと面白い体験をしているとは思います。でも、そんなに桁外れの面白い体験をしている芸人なんて、ごく一部ですよ。たくさんの面白いエピソードを披露できるのは、普段から『何かネタはないかな』といった意識を持っているからですよ」
これを聞いて、私はなるほど、と思いました。
我々も、その日常生活において、それなりにエピソードとして語れるような体験はしているはずです。
しかし、普段から「何かネタはないかな」との意識をしていないので、面白いこと(エピソードの元となるような体験)を見落としているのですね。もし、芸人さんが、我々と同じような生活をしていたとしても、おそらく、我々よりもはるかに「面白いこと」を捉えることができるのでしょう。
■赤いものを、見つけよう
さて、そんな芸人さんの発言から、私は以前、とあるビジネス書で読んだ「赤いものを見つけよう」の実験を思い出しました。
それは、以下のような実験です。

まず、何も意識せずに、目の前の景色を眺めてください。その後、いったん目を閉じて、次は「赤いものを見つけよう」との意識を持って、目を開けて、再び同じ景色を見るのです。
するとどうでしょう、看板、建物、車、信号、木の葉などなど、ビックリするくらいに、赤いものが目に飛び込んでくるのです。室内であっても、ポスター、本、筆記用具、ペットボトルなどなど、やはり赤いもので溢れているはずです。
いずれも、最初は見えてなかった(正確には見えてはいたが、意識に上がっていなかった)ものですね。この実験、機会あれば、というか、いますぐにでもできるので、一度、試してみてはいかがでしょうか。
■自己啓発系の定番メソッドだが……
この「赤いものを見つけよう」の実験の主旨は、明確な目的(赤いもの)を意識していれば、世の中の見え方がガラッと変わるということ、そして、世の中は、(その目的に関する)情報で溢れていることを実感してもらうことです。ちなみに冒頭の芸人さんの話であれば、「エピソードの元になるような体験」が、ここでの「赤いもの」にあたるわけですね。
さらに言うなら、何も意識せずに、ただただ漫然と過ごしていては、これだけさまざまな情報が溢れる時代においても、何も見えない(得られない)という批判も含まれているわけです。
なお、この「赤いものをみつけよう」は自己啓発系の定番メソッドらしく、多くの書籍やセミナーなどで用いられており、ご存じの方も多いかもしれませんね(書籍やセミナーによっては、「赤いもの」が、「青いもの」「丸いもの」などのバージョンもある)。
私自身も、この「赤いものを見つけよう」については、これまで何度も目に(耳に)してきました。ただ、初めて知ったときはそれなりのインパクトはありましたが、そのインパクトはその場限り。

「そりゃ、そうだよね」と、頭ではわかって納得しながらも、とくに実生活で実践することはなく、ただただ知識として、頭に入っているだけでした。そのような人も、多いのではないでしょうか?
つまり、「赤いものを見つけよう」の実験で得られるのは、あくまでも「プチ体験」であって、その理屈をしっかりと「腑に落とす」ためには、実体験が欠かせないのです。
■10年経ってようやく、腑に落ちた
私の場合、その実体験は、投資でした。投資をするようになってから、普段から「投資」の視点を意識するようになり、株価・為替・不動産・金などの相場はもちろんのこと、それらに影響を与える経済ニュースなどにも自ずと関心を持つようになり、物事の見方が大きく変わったのでした。
とはいえ、投資を始めたばかりのころは、「目に見える景色が変わった」というほどの効果があったわけではなく、せいぜい、「多少は、投資に関する情報が目に入るようになった」程度だったと思います。
なぜなら、行動が伴わなかったからです。本当に「目に見える景色が変わった」くらいの変化が起これば、それは自ずと、普段の行動も変わるはずですから。
一口に投資といっても、その範囲は膨大で、それゆえに当然、投資に関する情報もあまりにも膨大です。
ですので、投資をはじめたばかりのころ、すなわち、ただただ「投資をしている」段階では、本当に必要な情報がハッキリせず、(今思えば)まだまだ景色はぼやけていたわけですね。
ある程度自信を持って、冒頭の芸人さんくらいのレベルになった(目に見える景色が変わった)かな、と思えるようになったのは、すなわち、普段の行動にも変化が表われたのは、長年の投資経験を経て、自身の興味・関心がハッキリし、その投資スタンス(投資対象)が明確になったころでした。
その対象を絞りこむほどに、(必要な情報がハッキリするようになり)景色がクッキリとしてくるのでした。
■10年で行き着いた投資対象は
それは投資をはじめて10年程経って、ようやくのことでした。
ちなみに現在、私が最も興味・関心を持っている投資スタンス(投資対象)は、「株主優待」と「トルコリラ」です。
[株主優待]
私が投資を始めたきっかけは、株主優待でした。そして、それから30年近く、株主優待以外にも様々な投資を経験してきましたが、一周回って、今では原点に立ち返り、株主優待こそが、私の投資のメインです。
なお、優待実施企業は1500社以上もあり、しかも、優待の新設・変更等は頻繁に行われています。
すなわち、優待に関する情報の発掘にはほぼ終わりはなく、そして、新たな優待を見つけ出すワクワク感は、尽きることはありません。ちなみに、優待実施企業の多くは、我々の生活に身近な企業です。
ですので、私は普段の生活で、初めての(もしくは久しぶりの)お店に行ったり、商品を買ったり、サービスを受けたりしたときは、必ず、その企業を確認し、それがもし上場企業であれば、株主優待の有無・内容をチェックしています。
たとえば先日、スーパーで「ポケモンパン」を見かけました。子どもが小さいころ、よく買っていたな、懐かしいな……と思いつつ手に取って、すぐさま、どこの会社のものかを確認しました。
昔はそこまで確認することはありませんでしたが、株主優待という明確な投資スタンスを、普段から意識している今では、無意識にやってしまうルーティンです。パッケージには「第一パン」とのロゴが、調べると、企業名は第一屋製パン。
第一屋製パンは、東証スタンダード市場に上場する上場企業で、嬉しいことに、株主優待も実施していました。
しかも、昨年夏に、株主優待制度の再導入というレアなケースに、テンションも上がるのでした。
そして優待内容は、「焼き菓子の詰合せ」という、夢のあるものです。
これにはすぐさま、第一屋製パンの業績や諸々の投資指標、そして株価推移をチェックして、これならいけると判断し、購入しました。たまたま買物に行ったスーパーで、私は手に取ったポケモンパンではなく、その製造・販売会社である第一屋製パンを買ったのでした。
現在のところ、それから株価に大きな動きはありませんが、私は納得のいく投資先を見つけることができたと満足しております。
[トルコリラ]
超高水準が続くトルコの金利に惹かれ、私はトルコリラ投資(リラFX)にハマっています。
もちろん、ドルやユーロなども保有していますが、それらメジャー通貨と比べ、手を出している人はあまりいないというマイナーさも、天邪鬼な私の気質に合っているようで、私の外貨投資のメインとなっています。
ただ、長年続くインフレや、クーデター未遂などの経済・政情の不安定さなどから、近年においては、リラ安の進行が止まりません。
それでも私は高金利を享受し続けるために、そしてトルコ経済・政情の安定を願って、ひたすらにナンピン買いを続けております。その結果、保有するリラ残高は相当な額に積み上がり、ますます、トルコ関連のニュースには敏感になっております。
とはいえ、トルコ関連のニュースなど、普段、あまり目にしないですよね。たしかに、「直接的な」トルコ関連のニュースは少ないと思います。
しかし、リラ投資にのめり込むようになり、普段、ニュースなどでよく目にする国際情勢の中には、「間接的な」トルコ関連の情報も多いと気付いたのでした。
たとえば、ロシアのウクライナ侵攻。NATOの加盟国でありながらも、ロシアとも密接な関係にあるトルコの立場は重要で、ウクライナ情勢は、トルコの経済情勢、ひいてはリラ相場にも大きく影響します。
そして、緊迫する中東情勢。当然、トルコは地理的にも大きな影響を受けるわけですし、そして何より、イスラエルとの地政学的確執は、やはりトルコの経済情勢、ひいてはリラ相場にも大きく影響します。
それまでは、そのようなニュースを見ても、とくに国際情勢に関心を持っているわけではない私は、「ふ~ん」程度で終わっていましたが、リラ投資にのめり込むことによって、(トルコの視点から)大いに関心をもって見るようになりました。また、ネットや新聞、雑誌などで、積極的に情報を取りにいくようになり、また、(トルコの立場からの)考察記事やコメントなどもじっくり読むようになりました。
■投資の、もう一つの目的とは?
ところで、多くの人にとって、投資をする目的は、「資産を増やすため」でしょう。
しかし中には、「(投資を通じて)世の中の出来事に関心を持つため、世の中の出来事を把握するため」を目的に投資をする人も、一定数はいるかと思います。これはとくに、意識の高い人や、経済的・時間的に余裕のあるリタイア世代の人に、多く見受けられる傾向があります。
そして、そういった目的の究極こそ、「目に見える景色が変わる」境地とも言ってもよいかもしれません。
もっとも、その境地に至るには、(少なくとも私の体験では)長年の経験が必要となるわけですが、そんな長年の投資経験を経て、もし、そのようなその境地に至ることができれば、それは「明確な目的を意識することで、世の中の見え方がガラッと変わる」ことを理屈ではなく、自身の実体験として味わうことができるわけです。

そして、その実体験は、(投資に限らず)人生において、大きなアドバンテージとなるのではないでしょうか。

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藤原 久敏(ふじわら・ひさとし)

ファイナンシャルプランナー

1977年大阪府大阪狭山市生まれ。大阪市立大学文学部哲学科卒業後、尼崎信用金庫を経て、2001年に藤原ファイナンシャルプランナー事務所開設。現在は、主に資産運用に関する講演・執筆等を精力的にこなす。また、大阪経済法科大学経済学部非常勤講師としてファイナンシャルプランニング講座を担当する。著書に『株、投資信託、FX、仮想通貨… ファイナンシャルプランナーが20年投資を続けてみたらこうなった』(彩図社)など。

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(ファイナンシャルプランナー 藤原 久敏)
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