■店舗が激減、館内の至るところが立ち入り禁止
開くことのないシャッター。むき出しのまま、ガランとした空き区画。撤退したテナントに散乱する備品。買い物や食事を楽しむ人が少なく、ショッピングモールとしての賑わいが感じられない。
そんな「廃墟モール」が茨城県の土浦駅から車で約20分の場所にある。新治ショッピングセンターさん・あぴお(以下、さん・あぴお)だ。ここは2006年に土浦市と合併されるまで「新治村」と呼ばれていた。施設名に「新治」が入っているのはそのためだ。
駐車場に大きな穴が開き、白線はほとんど消え、外壁にヒビが入っている。
屋上駐車場は立ち入り禁止になっており、館内への出入り口は6つ中3つが閉鎖されている。館内も至る箇所が柵で閉鎖され、半分ほどが立ち入り禁止の状態だ。柵の向こうにショッピングモールらしい吹き抜けをのぞくことができ、かつての繁栄を感じさせる。だが、もう立ち入ることはできない。
当初は約40店舗あったが、現在営業しているのはスーパーのエコス、ウエルシア、ダイソー、洋服リフォームの銀の糸の4店舗のみ。加えて、デイサービスが入っている。
複数の看板に「食の街 よる9:00まで営業」と書かれているが、飲食店は一つもない。インド料理店やカフェの店名は、消されることなく残ったまま。かつて存在した持ち帰り寿司屋のショーケースも放置されている。
トイレは半分ほどが和式で、いくつかの便器や水洗蛇口が故障しており、壁や床の汚れも目立つ。施設のいたるところで老朽化を感じる。
■核店舗が撤退し、運営主体が破産
さん・あぴおにて店舗が大量に閉店し、館内の大部分が閉鎖されているのは、専門店を運営していた新治商業協同組合が2022年11月に破産したからだ。
閉店した店舗跡には、「運営会社の破綻のため閉店します」との旨を記した貼り紙が掲示されている。2022年11月のカレンダーが貼られたままの店舗もあった。
さん・あぴおがオープンしたのは、今から33年前の1993年4月。新治村の商店主たちで構成される新治商業協同組合が開発を主導し、村にできるものとしては日本最大級のショッピングセンターとしてオープンした。核店舗にスーパーの長崎屋を迎え入れ、約40の地元専門店が出店した。
ところが、2000年2月に長崎屋が会社更生手続きを申請。不採算店舗とされた新治店は、2002年2月に閉店することになった。さん・あぴおは核店舗を失い、残されたのは大きな空き区画だった。
長崎屋の跡には2002年12月にスーパーのエコスが出店し、現在まで営業を続けている。しかし長崎屋の撤退が引き金となり、他テナントは次々と撤退していった。2008年にはすでに、「6年前に中核テナントの長崎屋が経営破綻したことからテナントの退去が続き、今はオープン時の約半分に減少した」と報じられている。
ショッピングセンターの命運は、核店舗の存在と集客力に委ねられるといっても過言ではないのである。
■道路から駐車場、駐車場から店内へ行きづらい
さん・あぴおが衰退してしまう引き金となったのは「核店舗の撤退」だが、他にも大きく3つの要因があると分析する。
「施設内外の動線の悪さ」「商圏人口の少なさ」「施設規模の不適合」の3つだ。
まず、さん・あぴおは近くに国道125号(旧道)が通っているのだが、その国道に面していない。土浦駅方面から向かう場合、国道から一度右折し、さらに駐車場に入るにはもう一度右折しなければならない。
国道沿いには別の建物があり、さん・あぴおは隠れてしまっている。国道沿いには看板が立っているが目立たず、道路からの視認性が悪い。
駐車場は1500台分と豊富に用意されているのだが、いびつな形をしており、店舗入口付近にとめられる台数が限られている。
たとえば、さん・あぴおから車で4分ほどの距離にあるスーパーのカスミは国道に面していて視認性が良く、駐車場にも入りやすい。施設の前面に広い平面駐車場があるため、店内入口に近いところに車をとめて買い物できる。
さん・あぴおは、道路から駐車場、そして駐車場から店内までの動線に課題を抱えているのである。
■歩きにくすぎる館内構造
加えて、館内の動線にも問題がある。
さん・あぴおができる10年以上前の1981年の時点で、雑誌『商店界』では「メイン通路の他に、複通路をとり、テナントを張りつける」ことは基本を忘れた配置であり、失敗すると指摘されている。「複通路に面したテナントは、将来あまり成績が上がることは考えられない」のである。(『商店界』通巻769号 P.152)
古いショッピングセンターではさん・あぴおと同じような形が多々採用されていたものの、現在ではショッピングセンターの館内動線は「2核1モール」と「サーキットモール」が定石となっている。
「2核1モール」とは、施設の両端に集客力のある大型テナントを配置し、その間のメイン通路に専門店を並べる形式である。イオンモールではこのパターンが多い。
「サーキットモール」とは文字通り、メイン通路をぐるっと1周させ、その周りに店舗を配置する造りだ。
このようにショッピングセンターの動線は来店客がわかりやすいこと、館内を回遊することが重要だが、さん・あぴおは基本を欠き、来店客にとってわかりにくい造りになっているのである。
■“村”の商圏人口の少なさ
さん・あぴおが衰退してしまった要因として、「商圏人口の少なさ」も大きいと考えられる。
周辺に大きなマンションやアパートはなく、戸建てがぽつぽつと建っている。土浦北インターが近く、工場や物流センターが並んでおり、住宅街というより工業の街という印象だ。
さん・あぴおがオープンした当時の新治村の人口は約9500人。ショッピングセンターが立地する人口としては非常に少ない。2006年に合併して土浦市になったが、新治地区の人口は減少を続け、2025年10月1日時点で約7600人となっている。(土浦市「土浦市地区別及び年齢別人口」)
実際に街を歩いてみると、商圏がさらに縮小していることを感じた。さん・あぴお付近の国道125号(旧道)沿いで、レストランやマッサージ店など複数の商店が閉業していたのである。
ゴルフの打ちっぱなしも2025年5月で閉場しており、トヨタ自動車の販売店も2026年1月末で閉店すると掲示されていた。
■施設規模のジレンマ
新治村の人口が少なくても、商店主らがショッピングセンターをつくったのは、近隣の土浦市やつくば市、石岡市からの来店を期待していたからだ。しかし遠方から集客するには、約40店舗の規模では足りなかった。
ちょうどさん・あぴおがオープンした1993年前後から、各地で郊外大型ショッピングセンターの開発が盛んになった。その勢いは2000年以降さらに加速し、さん・あぴおの近隣市では、2008年にイーアスつくば、2009年にイオンモール土浦、2013年にイオンモールつくばといった約150~200店舗をそろえる大型競合店が次々にオープンしている。
遠方から人が来ないとなると、人口1万人の村において約40店舗のショッピングセンターは、かえって規模が過剰である。
つまり、さん・あぴおは「核店舗の撤退」「施設内外の動線の悪さ」「商圏人口の少なさ」「施設規模の不適合」により、廃墟さながらの状態となってしまったのだ。
■「日本一のショッピングセンター」だったが…
施設が衰退したと考えられる理由のうち、「施設内外の動線の悪さ」は運営者の問題だといえるが、そのほかの理由は外的要因が大きい。単なる運営ミスによって現状のような結果を招いてしまったわけではないだろう。
さきほども紹介した通り、さん・あぴおは「村にできるものとしては日本最大級のショッピングセンター」としてオープンしている。1992年10月9日付の流通サービス新聞には「オラが村のショッピングセンター(SC)は日本一⁉」という見出しでさん・あぴおを報じている。
村を盛り上げるための大規模な施設として開業したが、さまざまな要因が重なった結果、入り口の半分が閉鎖され、施設内の半分以上が立ち入り禁止になり、屋上駐車場はすべて封鎖されたまま営業するショッピングセンターになってしまった。
そんな「日本一のショッピングセンター」は今日も営業している。
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坪川 うた(つぼかわ・うた)
ライター、ショッピングセンター偏愛家
熊本県出身。熊本大学卒。新卒で大型SCデベロッパーに就職。小型SCデベロッパーへの転職を経て、フリーランスに。国内外で500以上の商業施設を視察済み。宅建・FP2級。
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(ライター、ショッピングセンター偏愛家 坪川 うた)

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