■快速が増便される埼京線、されない京葉線
近年、JR各線からはダイヤ改正の度に、朝の快速の減便や通勤快速の廃止のニュースが流れている。2024年3月ダイヤ改正で通勤快速が廃止され騒動になった京葉線も例外ではなかった。しかし、今度の2026年3月ダイヤ改正では埼京線・川越線で早朝に通勤快速が珍しく増発されることになった。
埼京線は新宿などの副都心から埼玉県の大宮へ至る路線で、川越まで乗り入れている。すでに通勤快速が朝5時台~9時半まで(川越駅基準)、夕方16時前~23時前まで(新宿駅基準)と幅広い時間帯で15~20分間隔で走っているが、今回のダイヤ改正では早朝にさらに1本追加されることになった(川越6:09発・新宿7:03着)。
その一方で、24年に通勤快速が全廃された京葉線は自治体からの継続的な復活の要望もむなしく、今度のダイヤ改正では変化なしとなった。
一体なぜ両者でこんなにも扱いが違うのだろうか。
■20分の時短効果を持った快速が廃止され各駅停車のみに
京葉線は東京駅から千葉市の蘇我駅までの43.0kmを結ぶ路線だ。一部の列車がその先の外房線・内房線・東金線へ乗り入れており、並走する総武快速線と併せて、房総半島から東京方面への重要な通勤ルートだ。総武快速線との違いとして、臨海副都心の玄関口である新木場駅を通る点、西船橋方面から武蔵野線列車が流入してくる点が挙げられる。大規模なイベント会場になることが多い幕張メッセがある海浜幕張駅も京葉線である。
その京葉線の通勤快速が、2024年3月のダイヤ改正以降、夕方ラッシュ帯以降の快速と通勤快速が全廃され、各駅停車のみとなってしまった。
■京葉線のダイヤは複雑すぎる
なぜJRはすでに充実していると言っていい埼京線の快速をさらに充足させる一方で、京葉線には冷たい対応を取るのか。
第一に「京葉線には並行して走る総武快速があるからだ」といった声があるが、これは理由にならない。埼京線にだって同じく宇都宮線や高崎線などの実質快速列車が走る並行路線がある。にもかかわらず、通勤快速は充実の本数で存続している。
筆者が考える京葉線の「冷遇」の理由の一つは、その複雑すぎるダイヤだ。
JRは、通勤ラッシュ帯の快速廃止の理由の1つに、快速があることによって新木場駅のホームが極端に混雑してしまう「混雑偏重」を挙げている。だが、筆者からするとこれらは本当に快速のせいなのかというと、極めて怪しい。むしろ利用者の視点で見れば、一定の間隔ごとに列車種別や方面別の列車が到着する「パッケージ型ダイヤ」になっていない点が問題である。
■京葉線のダイヤは「不整脈」
埼京線は15~20分の間に通勤快速1本、各駅停車3本といった具合に一定のリズムで列車が来る「パッケージ型ダイヤ」であるのに対して、京葉線は場当たり的に入れられるところに列車を追加し続けたようなダイヤ運用だ。そのため、快速も各駅停車も武蔵野線も、快速運転時間帯を中心に5分後に来たり15分後に来たりといった「不整脈」が生じている。間隔が偏れば特定の列車・タイミングに混雑が偏るのは当然だ。
パッケージ型にできない理由として、京葉線は蘇我駅や武蔵野線から貨物を含む列車が乗り入れてくることを考慮しなければならないとの指摘もあるが、埼京線だって池袋や大崎から貨物を含む列車流入がある点では同じで、その中でも整ったダイヤ設計を実現している。
だが、これは埼京線が線路設備条件面や列車間隔を詰めやすい最先端の信号システムにより、やりやすかったからできているという側面が強く、JR首都圏の中では珍しいケースと言える。
■追加費用を払えないと乗れない「有料特急」の存在
もう1つ、埼京線との大きな違いは、京葉線を走る有料特急の存在だ。これもJRが主張する混雑偏重を生んだ原因の1つと筆者は考える。乗車券・定期券しか持たない利用者が使えない列車を間に挟むことによって、そこだけ運転間隔が開くからだ。しかも、東京駅を特急と房総直通の快速が連続で出るという、後続の各駅停車への悪影響必至のダイヤ設定であった。
では、どうすれば利便性を向上することができるのか。
■グリーン車付き快速を導入すればどうか
このような特急列車は、中央線や東海道線でも導入されているグリーン車付きの快速に置き換えれば一定間隔のダイヤができる。京葉線内は通勤快速の停車駅、外房線・内房線内は特急の停車駅とした「通勤特快」と称した列車になるだろうか。過去には総武快速線でホームライナーを置き換える形で列車を増発し、乗車券・定期券しか持たない利用者も乗れるようにした実績がある。
利用者の視点で埼京線のようにするなら、海浜幕張にも停まる通勤快速を復活させ、武蔵野線直通の列車本数(1時間あたり朝8本・夕6本)に合わせて各駅停車と通勤快速が走るパターンダイヤにすればいい(図表1、2)。
そうすれば新木場駅ホームでは、どの方面に行く乗客も一定の長さの行列で収まり、快速列車の設定があっても混雑の危険度は大きく減るはずである。
京葉線の通勤快速は利用低迷も理由の一つに廃止されたが、そもそも停車駅が少な過ぎて使えるターゲットが狭いことに原因がある。埼京線の通勤快速が武蔵浦和にも停まってさいたま市南部の人が使えるように、京葉線の通勤快速も海浜幕張に停めて千葉市西部の人も使えるようにしていれば、埼京線のような未来になっていたかもしれない。これは千葉市長も提言していたことだ。
■「競争相手がいない」JRの問題点
一方で、JR東日本にはダイヤよりももっと根本的な問題がある。
それが、「JRに利便性・速達性を持たせた沿線価値向上のモチベーションが湧かない」点である。
京葉線には競合と言える並行路線がない。京成は都心への速達性では比較にならない。総武快速線は自社線であり、快速といえどもラッシュ時の東京―蘇我間の所要時間は京葉線の各駅停車と変わらない。少なくともスピード競争だけで言えば努力をする必要がない。
私鉄各社は沿線人口・沿線価値を増やすための武器として、速達性や利便性の高いダイヤを目指すが、その競争相手は並走路線だけでなく、山手線を跨いだ向こう側の各線も含まれる。
ところがJRのように東京から四方八方に路線網を持つ企業にとっては、地方から出てきた人が東海道線に住もうが京葉線に住もうが変わらないし、中央線の住民が京葉線に移り住んだところでお客が増えるわけでも減るわけでもない。
■競争原理が働く仕組みが必要
JRは完全民営化達成により、地域の声より利益拡大が優先になった。私企業なのだから当然といえば当然であるし、反対に自治体側も公共インフラとはいえ私企業のものにあれこれ口を出しにくい側面が強まったと言える。ただJRのような国力や地域の盛衰にも関わる重要インフラ企業を完全な私企業にしてしまって良かったのだろうか。
最近勢力を拡大している参政党は、郵政、水道、NTT、鉄道等の行き過ぎた民営化を見直し、再公営化を進めることを掲げている。筆者としては、JRの再国有化まではせずとも、民間の良いところを活かすため、JR株の半分を国が買い取り、転売禁止を条件に、沿線の各都道府県知事や市区町村長に持たせるなどのやり方もあるのではないかと思う。最近では京都府亀岡市が自主的に公費でJR西日本株を取得した例がある。
今回の京葉線のようなケースは、起終点が同じ鉄道路線を同一事業者が独占経営していることが原因の1つであるように思える。何らかの規制をかけ、並行路線の片方を上下分離とし、別会社に運営させる制度がなければ競争原理が働かず、京葉線のように片方の路線の地域が割を食う構造になる。ちょうど京葉線は駅構造上、JRの他線と改札を分離する改造がしやすい構造だ。
■自治体とJRの溝は埋まりそうにない
当時、遺憾の意を表した千葉県、千葉市、一宮町に改めてJR東日本の姿勢について尋ねてみた。
だがそのために彼らが何をしているのかというと、JRとの「協議・要望・意見交換」といった言葉ばかりが並び、「あくまでJR頼み」の感が拭えない。一方で、鉄道にとっての商売敵である「高規格道路の整備」はせっせと進めている印象である。これでJRの心を動かすことなどできるのだろうか。
極端なダイヤ変更で生活を一変させられた京葉線直通快速列車の沿線住民。1月には作業ミスによる停電で山手線と京浜東北線が約8時間運転を見合わせるなど、トラブルが頻発している。ある京葉線の運転士からは「ダイヤ改正の度に『経費節減だ』と乗務キロが削られ、士気低下に繋がっている」との声も聞かれる。
経営陣は不動産にはやる気満々だが、鉄道事業に対しては、今はやりの「静かな退職者化」しているのではないだろうか。JR東日本の「当たり前を超えていく」というスローガンが「当たり前を壊していく」とならないことを祈るばかりだ。
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北村 幸太郎(きたむら・こうたろう)
鉄道ジャーナリスト
1989年東京生まれ。2008年昭和鉄道高等学校運輸科卒業、2012年日本大学理工学部社会交通工学科マネジメントコース卒業。乗り鉄、ダイヤ鉄。
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(鉄道ジャーナリスト 北村 幸太郎)

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