監督就任1~2年目はリーグ最下位だったが、3~4年目は同2位になりクライマックスシリーズに出場。昨秋は日本シリーズまであと一歩だった。
北海道日本ハムを率いる新庄剛志のリーダーとしての手腕を、その語録から経済ジャーナリストの桑原晃弥さんが紐解いた――。
※本稿は、桑原晃弥『常識を超えて結果をだす 新庄剛志の名言』(ぱる出版)の一部を再編集したものです。
■新庄剛志と松岡修造の共通点
自分の100%を80%の力で出すために、

120、130になるための

練習を重ねていくしかない

スリルライフ 天才ではないが、天然でもない
ある時、元テニス選手の松岡修造が受験生から「試験で120%の力を出すにはどうすればいいですか」と聞かれ、「本番で100%の力を出せるのは年に1回くらいしかない」と話していたのが印象に残りました。
たしかに持てる力のすべてを出し切るのは大変です。それこそ心技体のすべてが整い、かつ試合当日の環境なども整ってこそ100%の力が出せるわけで、現実には体調の問題や、相手選手次第で100%まではいかないのが本当のところなのでしょう。
では、どうすればいいかというと、70%の力をコンスタントに出せるようにすれば勝てるようになる、というのが松岡からのアドバイスでした。
新庄剛志も80%の力でプレーするようにアドバイスしています。
新庄によると、打席に立った時、「絶対に打たないと」と力んでいると、身体に向かってきたボールを避(よ)けることができず、デッドボールになることが多いといいます。守備についている時も、捕れるか捕れないかギリギリのボールにダイビングキャッチを試みると、後ろに逸らしたり、ケガにつながることがあるといいます。
反対にバッターに20%の余裕があると、ボールを避けたり、当たってもあまり影響のない場所にすることができます。野手にも20%の余裕があれば、冷静に判断して、適切なプレーができるのです。
つまり、100%目一杯の、余裕のないプレーはケガやエラーになりやすいというのが新庄の考え方です。

■手を抜かずに地力をつける
とはいえ、なかには「自分は100%でないと勝負になりません」と言う選手もいます。そんな選手に対し、新庄はこうアドバイスしています。
「自分の100%を80%の力で出すために、120、130になるための練習を重ねていくしかない」
100%の力でないと通用しない。かといって100%では余裕のあるプレーができない。だったら、今の100%の力を120、130に高める努力をして、20%の余裕を持った100%で戦えばいい、ということです。
手を抜くのではなく、余裕のある100%の力を発揮するためには、努力して自分の力を高めることが何より大切なのです。
●ワンポイント 持てる力の80%で戦い、好結果を出せるように地力を高め続ける。
■野村克也の長時間講義を“拒否”
ただ『はいはい』と聞くだけじゃなくて、

わからないことは

どんどん質問しようと考えた。

うっとうしいと思われてもかまわない

わいたこら。 人生を超ポジティブに生きる僕の方法
人生には「良き師」が必要だと言われています。「自分はこうなりたい」というロールモデルでもいいし、「この人からたくさんのことを学びたい」と思うような師に出会えたなら、それだけで人生は豊かなものになります。
新庄剛志にとって野村克也はたくさんのことを学びたいと思えた師であり、野村が亡くなるまで付き合い続けた大先輩でもありました。

選手としては三冠王を獲得したほどの名選手であり、野村スコープを駆使した解説で人気を博した名解説者であり、ヤクルトスワローズを4度のリーグ優勝、3度の日本一に導いた名監督でもあった野村が阪神タイガースの監督に就任したのは1999年、新庄が入団10年目のことでした。
野村は「ID野球」を駆使する監督であるのに対し、センスとひらめき重視の選手と見られていた新庄は「相性が悪いのでは」と思われがちですが、新庄自身は「僕は野村監督が好きだった」と明言しています。
野村が選手に長時間の講義をしたところ、新庄は「いっぺんに言われるとわからなくなるので、また今度にしてください」と発言しています。2時間、3時間の長い話ではなく、学校の授業時間くらいにしてほしいという提案でした。普通に考えれば、監督への反発であり、新庄の我儘とも思えますが、新庄自身は、「何回も話すチャンスをつくれば、いろんなことが聞けるのでは」と考えていたのです。
■野村克也が新庄をかわいがったワケ
長時間の講義だと一方的になりがちですが、30分、40分くらいの講義を何回かに分ければ、質問を含めて、より密に野村の考え方を知ることができて、自分ももっともっとレベルアップできる。それが新庄の思いでした。
野村は新庄を「宇宙人」と呼んでいましたが、そこには普通とは違う考え方をする新庄への愛情も込められていたようです。当時、新庄は野村から「なんかいい服ないか?」と聞かれ、自分が好きだったヴェルサーチを勧め、以来、野村も着るようになります。
2021年、野村を偲ぶ会に新庄はヴェルサーチのジャケットとセーターを着ていきますが、それは野村の形見分けだったというところに、両者の関係がよく表れています。良き師と出会えるチャンスは滅多にありません。運良く良き師に出会えたなら、謙虚に教えを請い、たくさんのことを吸収することで人は大きく成長できます。

●ワンポイント 良き師に出会えたならとことん学び、吸収しよう。

参考文献

わいたこら。 人生を超ポジティブに生きる僕の方法』新庄剛志著、学研プラス

スリルライフ 天才ではないが、天然でもない』新庄剛志著、マガジンハウス

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桑原 晃弥(くわばら・てるや)

経済・経営ジャーナリスト

1956年、広島県生まれ。経済・経営ジャーナリスト。慶應義塾大学卒。業界紙記者などを経てフリージャーナリストとして独立。トヨタ式の普及で有名な若松義人氏の会社の顧問として、トヨタ式の実践現場や、大野耐一氏直系のトヨタマンを幅広く取材、トヨタ式の書籍やテキストなどの制作を主導した。一方でスティーブ・ジョブズやジェフ・ベゾス、イーロン・マスクなどの起業家や、ウォーレン・バフェットなどの投資家、本田宗一郎や松下幸之助など成功した経営者の研究をライフワークとし、人材育成から成功法まで鋭い発信を続けている。著書に『逆境を打ち破る イチローの名言』『限界を打ち破る 大谷翔平の名言』『藤井聡太の名言』『資産24兆円の世界一の投資家 ウォーレン・バフェットの名言』『世界の大富豪から学ぶ、お金を増やす思考法』(以上、ぱる出版)などがある。

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(経済・経営ジャーナリスト 桑原 晃弥)

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