北海道日本ハム・新庄剛志監督の現役時代の成績は打率2割5分前後だった。一流選手とはいえないのに、なぜ人々の記憶に残っているのか。
経済ジャーナリストの桑原晃弥さんが新庄語録からその理由を解き明かした――。
※本稿は、桑原晃弥『常識を超えて結果をだす 新庄剛志の名言』(ぱる出版)の一部を再編集したものです。
■北海道日本ハム監督新庄剛志とアマゾン創業者の共通点
僕の人生に

相談する人なんかいません。

相談するのは自分自身。

自分で決めました
「THE PAGE 」

人生の岐路に立った時、どちらを選べばいいか迷って、答えが出せないことがあります。「少しお時間を下さい」と時間的な猶予を求めることもあれば、「家族と相談しますので」と家族や知人にアドバイスを求める人もいます。
なかにはY字路での選択に関して、自分なりのルールを決めている人もいます。アマゾンの創業者の一人、ジェフ・ベゾスは金融関係の会社の副社長だった30歳の時、成功するかどうかまったく未知数のアマゾンを創業するか、何不自由のない生活を続けるかの選択に際し、「年を取った時、『あの時、こうしておけば』と後悔しない方を選ぼう」と起業に踏み切っています。
選択の仕方や基準はさまざまですが、たいていの人が誰かに相談したり、何らかのアドバイスを求めるのに対し、新庄剛志は「自分の人生は、自分で舵を取る」ことを何より大切にしていました。
高校時代、阪神タイガースからドラフト5位で指名された時には、順位の低さからプロに進むか、大学に進んで次のチャンスを待つかという選択を迫られ、父親のアドバイスで阪神に入団していますが、以後のMLBへの挑戦や、帰国後の北海道日本ハムファイターズへの入団、バリ島への移住などについては自分一人で、それもごく短時間で決めています。
理由は誰かに相談したら、間違いなく「無難な道を選べ」と言われるからです。
MLBに挑戦した際も、新庄に「お前ならやれる」「思い切ってやってみろ」と言う人はいませんでした。
専門家どころかファンでさえ「無理に決まっている」と批判し、父親も「通用するはずがない」と反対したといいますが、新庄は周りから反対されればされるほど闘争心に火がついたと話しています。
■自分の人生は自分で舵を取る
会社でも若い社員が新しいことをやろうとすると、周りは「無謀だ」「失敗したらどうする」と反対します。絶対大丈夫なこと以外、相談された人間は親心か親切心か、ほとんどの人は止めるものです。
新庄の周りもそうでしたが、新庄は「やってみなければ分からない」し、「人生の主役は自分」であり、自分の人生は自分で舵を取ると決めていました。日本ハムの監督就任会見での「相談するのは自分自身。自分で決めました」は、まさに新庄らしい答えでした。周りの意見を聞くのが悪いということではありませんが、最後に決めるのは自分なのです。
●ワンポイント

迷った時、誰かに相談するのは構わない。しかし、最後は自分の心に正直に

■「自分の強み」にこだわり人一倍努力
僕がプロ野球の世界で成功できたのは、

『自分が得意なことは何か』

『自分が他の人より優れているところは何か』

を考えに考えて、そこに集中して、

人一倍の努力を続けたから
「わいたこら。」

「何事かをなしとげるのは強みによってである」は経営学者のピーター・ドラッカーの有名な言葉です。人は誰しも弱みもあれば強みもあるわけですが、何かを成し遂げることができるのは「弱み」ではなく、「強み」というのは理解できたとしても、なぜか多くの人は自分に関しても、他人に関しても、とかく強みではなく弱みを見る傾向があります。
他人の弱みを見て批判し、自分の弱みばかりに目を向けて、「自分はなんて駄目なんだ」と落ち込んでしまう。こんなことを繰り返していては結局は何もできないままに終わってしまうのです。

こんな生き方の真逆を行ったのが新庄剛志です。
新庄は日本のプロ野球ではスター選手であり、MLBでも四番を打つなど十分な活躍をしています。そして今は北海道日本ハムファイターズの監督として実績をあげつつあります。
とはいえ、日本で名球会に入るほどの成績は残していませんし、イチローのように米野球殿堂入りを果たしたわけでもありません。にもかかわらず、「新庄剛志というプロ野球選手」はあまりに強烈な印象を残しています。
■できることをどんどん伸ばす
なぜそんなことができたのでしょうか。
新庄は言います。
「僕がプロ野球の世界で成功できたのは、『自分が得意なことは何か』『自分が他の人より優れているところは何か』を考えに考えて、そこに集中して、人一倍の努力を続けたから」
新庄はバッターとしては打率2割5分前後の選手でしたが、驚異的な肩と足を生かした外野守備は日本でも、MLBでもトップレベルにいました。これほどの守備力があったからこそ新庄はプロ野球選手として成功することができたのです。
新庄によると、苦手なことを克服する努力は必要なものの、できないことばかりに気を取られると、良いところまで悪くなってしまうといいます。反対に得意なことをもっともっと伸ばそうと頑張ると、自分に自信が持てるようになり、苦手なことも少しずつ向上するのです。
打率はそれほど高くなくとも、新庄はチャンスに強いバッターでした。
それを可能にしたのは「僕は世界一の外野手」という自信の裏付けがあったからなのです。
できないことをくよくよ悩むより、できることをどんどん伸ばす。それが新庄の考え方であり、監督としても心がけていることなのです。
●ワンポイント

自分の弱みを気にしすぎない。成果をあげるのは強みと知り、強みを伸ばす

参考文献

「THE PAGE」2021.11.4(LINEヤフー)

わいたこら。 人生を超ポジティブに生きる僕の方法』新庄剛志著、学研プラス

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桑原 晃弥(くわばら・てるや)

経済・経営ジャーナリスト

1956年、広島県生まれ。経済・経営ジャーナリスト。慶應義塾大学卒。業界紙記者などを経てフリージャーナリストとして独立。トヨタ式の普及で有名な若松義人氏の会社の顧問として、トヨタ式の実践現場や、大野耐一氏直系のトヨタマンを幅広く取材、トヨタ式の書籍やテキストなどの制作を主導した。一方でスティーブ・ジョブズやジェフ・ベゾス、イーロン・マスクなどの起業家や、ウォーレン・バフェットなどの投資家、本田宗一郎や松下幸之助など成功した経営者の研究をライフワークとし、人材育成から成功法まで鋭い発信を続けている。著書に『逆境を打ち破る イチローの名言』『限界を打ち破る 大谷翔平の名言』『藤井聡太の名言』『資産24兆円の世界一の投資家 ウォーレン・バフェットの名言』『世界の大富豪から学ぶ、お金を増やす思考法』(以上、ぱる出版)などがある。



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(経済・経営ジャーナリスト 桑原 晃弥)
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