イラン戦争の影響もあり、これから値上げが予想される品目が目白押しだ。
ホルムズ海峡の事実上の封鎖で原油やLNG(液化天然ガス)などエネルギー資源、アルミや肥料などの供給に重大な制約が発生している。
特に、子育て世代(世帯)へのマイナスの影響は大きい。モノやサービスの値上がりに加え、首都圏では不動産の価格や家賃など、子育てに必要な出費は増えるはずだ。それ以上にお給料が上がればよいのだが、今のところ、生活必需品の値上がりは、給与上昇を上回りそうな勢いだ。
■円安×エネルギー価格上昇=物価上昇
今のところ、イラン戦争の先行きは見通しづらい。現在、多くの企業は、高いコストをかけてでも、必要な原材料の確保に走っている。そのため、どうしてもコストは上昇し、その分を価格転嫁することになる。その結果、モノやサービスの値段は上がることになる。
さらに、外国為替市場では円安傾向が続いている。円安とエネルギー資源などの価格上昇の掛け算で、わが国の輸入物価は上振れすることになる。
これから、物価の上昇が個人消費の下押し要因になることも懸念される。
■コメもタマゴもお菓子も高くなっている
1月、消費者物価指数は前年同月比で1.5%上昇した。2月は、同1.3%にインフレ率は鈍化した。インフレ率が低下した主な要因は、高市政権が実施した電気・ガス料金の補助、ガソリン暫定税率廃止だ。政策の効果によって、一時的に物価上昇率は低下したといえる。
政府の対策効果を除くと、わが国の物価上昇率は2%(日銀の物価安定の目標)を上回り続けている。日本銀行の推計によると、政策効果などの特殊要因を除いた、消費者物価指数の上昇率(生鮮食品除く)は1月も2月も2%を上回った。生鮮食品とエネルギーを除く基準でみると、引き続き3%近傍のインフレ率が続いている。
品目別にみると、食料の値上がり率は、依然としてかなり高い。2月は菓子類の価格が前年同月比で8.1%上昇した。
“令和のコメ騒動”と呼ばれた、コメの価格もまだ高い。エッグショックと呼ばれるように、生活に欠かせないタマゴの価格も高騰した。農林水産省によると、2月、サイズ混合の10個入りの価格は308円だった。2003年8月の調査開始以降の最高値に並んだ。
■実質賃金マイナスで節約志向が加速
生活に欠かせない食料、日用品、家計関連サービスなどの品目の物価上昇ペースは、名目賃金上昇率を上回った。わが国の名目賃金(現金給与総額)は、ボーナス支給時期の6~7月、11~12月に名目賃金は上振れる傾向にある。それを含めて、年率の名目賃金上昇率はおおむね2%台半ばから後半と推計される。
ここへ来て、ボーナス支給時期に実質賃金の上昇率は一時的にプラスに上昇した。それ以外の月は、日常の生活に必要なモノやサービスを中心に、物価上昇率が名目賃金の伸びを上回る状況が続いてきた。
実質賃金がマイナスの状況下、消費者が安心して買い物をすることは難しい。
■移動費、インフラ維持費は節約しようがない
今春以降、値上げが明らかになったモノ、サービスの数は増えた。食品の値上げが再度鮮明になった。4月、主要食品企業全体で、約2800品目を値上げした。価格引き上げ率は平均で14%だ。半年ぶりに、値上げ対象品目数は2000を上回った。値上げラッシュ再燃との見方もある。原材料高、人件費、物流費、包装資材費の高騰など要因は多い。
鉄道、バス、タクシー運賃も上昇した。燃料や人件費に加え、キャッシュレス決済などデジタル化の対応も値上げ要因になっている。特に、1987年の民営化後、JR東日本がはじめて7.1%の運賃改定を実施した影響は大きい。
3月14日、同社の運賃改定に合わせて、国内の主要な鉄道やバス運営会社は一斉に料金を引き上げた。
上下水道の料金も上昇した。上水道では、栃木県足利市が30年ぶりに料金を49%引き上げた。それによって、一般的な世帯では月の水道料金が1010円増になる見込だ。浄水コストの増加に加え、インフラ老朽化によるメンテナンスや設備更新の費用もかさんでいる。それを賄うため、料金引き上げを計画する自治体は増えている。
■「究極の固定費」国民年金保険料もアップ
同様のことは下水道にも当てはまる。上下水道料金の上昇は、飲食、宿泊をはじめわが国の産業界全体でのコスト増になる。人手不足で人件費の上昇、コメやタマゴなど食材の値上がり、水道料金の負担増が上乗せされるインパクトはかなり大きい。
さらに、4月から国民年金保険料も上昇した。昨年度から410円増の月額1万7920円が新たな保険料額だ。保険料引き上げの主な理由は、物価変動などに合わせた保険料の調整と、将来の支給額を維持するための必要額確保だ。
消費者だけではなく企業間取引にも、値上げ重視の価値観は浸透し始めた。ここ1年ほどの間、自動車などの工業製品の生産に欠かせない、金型製造企業の8割が値上げを実施したようだ。これまで値上げが難しかった分野でも、企業の生き残りをかけて値上げが進み始めた。
■高校無償化のインパクトも帳消しに
食料品などの価格上昇、さらには国民保険料まで上がると、一般家庭の生活費負担は一段と増えるはずだ。子育て世代といわれる年代の負担は大きい。
保育士の人件費引き上げにより、託児所や保育園の費用は増えた。保育園の経営が厳しくなりつつあるとの声も聞かれるようになっている。今後、電力料金などの上昇により、そうした状況が増えることも予想される。それは、最終的に家庭の育児負担の増加に繋がることも想定される。
子供の受験準備のコストも増加傾向だ。地域ごとに差はあるものの、早期教育への意識の高まりなどを背景に塾料金は上昇している。
本年度から、高等学校等就学支援金の所得制限は撤廃(いわゆる高校の授業料無償化)された。しかし、その負担減よりも、他の教育関連支出は増えているとの指摘もある。子育てによるキャリアへの影響、生活負担の高まりから、子供を持つことを諦める若年層もいるとみる専門家もある。
■スタグフレーションという最悪のシナリオ
また、ここへ来てのイラン戦争は、何といっても余計なリスク要因になっている。国内ではガソリン価格が一時高騰した。石油備蓄の放出の効果は一時的だ。イラン戦争が解決に向かう兆しが見えない限り、国内エネルギー価格の上昇は避けられないだろう。
イラン戦争は、中東地域の食料不安やテロの増加につながる恐れもある。中東情勢がさらに混迷して世界の物流が混乱し、肥料や種子価格が上昇することも考えられる。それは、世界的に食料不足懸念を高めることになるはずだ。
3月、物価上昇警戒感から、国内債券市場でインフレ懸念が高まった。その結果、国内の長期金利の上昇が顕在化した。今後、インフレ懸念が一段と高まると、物価の安定を責務とする日銀は利上げを急がざるを得なくなるだろう。
それにより、変動型の住宅ローンや企業の借り入れ金利は、さらに上昇する。金利上昇は家計や企業の債務返済負担の上昇につながり、個人消費と設備投資などを圧迫する恐れは高い。
最悪の場合、景気減速と物価上昇の同時進行する、いわゆるスタグフレーションに陥ることも考えられる。そうなると、私たちの生活負担は一段と増大し、個人消費の下振れリスクは高まるだろう。できるだけ、必要性の低い支出を省き、家計を守る取り組みが必要になるかもしれない。その覚悟はしておいたほうがよさそうだ。
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真壁 昭夫(まかべ・あきお)
多摩大学特別招聘教授
1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員、信州大学経済学部教授、法政大学院教授などを経て、2022年から現職。
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(多摩大学特別招聘教授 真壁 昭夫)

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