飲み会後の「お礼メール」はいつ送ればいいのか。元電通で、会食専門家のyuuuさんは「私は、飲み会の解散前、自宅に着いたとき、そして翌日の『3度のお礼』を欠かさずに実践している。
ここで差がつくのが、翌日の『個人あてのお礼メール』だ」という――。
■「お礼メール」で圧倒的な差が生まれる
飲み会の後、お礼はどのタイミングで、どのようにすればいいのか――。ビジネスシーンかプライベートかを問わず、この問いに悩む人は多いのではないでしょうか。飲み会の場は、お酒が入っていることもあって記憶が曖昧になりやすいもの。だからこそ、終了後のフォローアップが重要です。
私は、飲み会の解散前、自宅に着いたとき、そして翌日の「3度のお礼」を欠かさずに実践しています。さらに、できれば「+2回」のステップでお礼をすることが効果的だと感じています。最初は「そんなに?」と思われるかもしれませんが、要所さえ押さえれば意外と大きな負担にはなりませんし、何より「お礼の丁寧さ」で相手との距離を縮めやすくなるのです。
本稿では、その具体的なタイミングと内容、そして「なぜそこまで細かくお礼が必要なのか」という背景をお伝えします。
■短くていいので、まずは当日に送る
1.飲み会の解散前(まずは直接の挨拶で好印象を残す)
飲み会が終わった際、参加者が席を立って帰るタイミングで「今日はありがとうございました」と直接伝えるのは大前提です。
ここでのポイントは、挨拶をできるだけ一人ひとりに向けて伝えること。バタバタしがちな解散時ですが、笑顔を添えてしっかり口にするだけでも、相手の印象は大きく変わります。
ごく短い言葉であっても、個別に軽い雑談を挟むなどして、「あなたとの会話が有意義でした」というニュアンスを加えればより効果的です。
2.自宅に着いたとき(お礼メッセージで当日の熱量を保つ)
自宅に着いたタイミングで、LINEやメールなど、相手とのコミュニケーションツールを使ってすぐにお礼を送るのがおすすめです。これは短いメッセージで構いません。
例:「今日はありがとうございました! ○○さんのお話、とても楽しかったです。また改めてお話しできるのを楽しみにしています」
「当日中にお礼を送る」という行為だけで、「自分との飲み会を大切に思ってくれている」という感覚を相手に与えられます。当日の熱を翌日に持ち越すことなく、即座に共有してしまうイメージです。
■「上司を立てる」という原則を忘れずに
3.翌日の全体メール(形式的なお礼でまずは“最低限”を押さえる)
ビジネスの場であれば、翌日に参加者への全体メールなどで「昨日はありがとうございました」と伝えるケースは多いでしょう。これはある意味“当たり前”の行動ですが、逆に言えばやらないと「常識がない」と思われる恐れもあります。
ただし、ここで注意したいのは「タイミングと順番」です。組織の上下関係がある場合、たとえば上司がメールを送る前に若手や部下が先に全体メールを送ってしまうと、上司の立場がなくなってしまうことがあります。そういった配慮も含めて、まずは上司に「全体にお礼メールを出されますか?」とさりげなく促し、自分はそのあとに送る、という形をとるのがスマートです。
全体向けのメールは、あくまで形式的なコミュニケーションにとどまりがちです。
そこに特別な印象を残すのは難しい部分がありますが、「最低限の当たり前」はクリアしておく必要があるでしょう。
■お礼メールで「一番差がつくポイント」
4.翌日の個別メール(差がつくのは“ここ”)
私が最も重視しているのは、翌日の全体メールとは別に送る「個別メール」です。個人あてに丁寧なお礼を送る人は意外と少なく、ここに「当たり前以上の特別感」を持たせることで、大きな印象を残すことができます。全体メールと違い、相手が受け取ったときに「自分だけに向けられた言葉」だと認識しやすいからです。
例:昨日は○○さんから教えていただいた本の話、とても興味深かったです。早速購入して読み始めました。特に□□という部分が○○さんのお話とリンクしていて、とても勉強になりました。ぜひまた、読後の感想など直接お伝えできればと思います。
このように、相手との会話に具体的に触れることがカギとなります。相手が話していた内容や趣味、教えてくれた情報などをしっかり覚えていたことを示すと同時に、自分も行動を起こしたこと(本を買った、場所を調べたなど)を伝えることで、「お礼+行動報告」という形をとるわけです。
そして、その行動をどのように感じたか、学びにどう活かせそうかなどを伝えることで、次のコミュニケーションへスムーズにつなげられます。
■「何気ないタイミング」で期待値を上回る
5.「“アットランダム”なタイミング」での追加のフォロー(想定外のサプライズを演出)
さらに関係を深めたいなら、飲み会から数日後や1週間後などに「思い出したかのように」連絡をとるのが効果的です。

たとえば相手がワイン好きだとわかったなら、ワインのイベント情報を共有したり、「この前お勧めいただいたワインを見つけたのでご報告です」といった内容を送ったりするなど、“何気ないタイミング”でメッセージを送ると、期待値を上回るサプライズになります。
人は記念日やイベントの日に連絡をもらうことはある程度予想できますが、何でもない日やふとしたきっかけで連絡をもらうと、その心遣いに「特別」を感じるものです。こうしたちょっとした一手間が、相手の印象に強く残るポイントになります。
■「丁寧なお礼」が欠かせないワケ
上記のステップをまとめると、最低でも「解散時・当日帰宅時・翌日(全体+個別)」の3~4回、よりしっかり関係を深めたいなら「+“アットランダム”な一手」を加えて合計5回というイメージです。
もちろん相手との関係性や業種、ビジネスの場かプライベートかなどによって調整は必要ですが、「基本の3回」を押さえつつ「個別メール」と「何気ないタイミングでの追加連絡」をセットで行うだけでも、周囲と大きく差をつけることができます。
なぜここまで丁寧なお礼が必要なのか。一つの理由は、「当たり前をクリアするだけでは印象に残りにくい」からです。全体メールでの「ありがとうございました」は確かに必要ですが、皆が同じようにやっている行動です。そこだけに頼ってしまうと、あなたの思いや行動力は埋もれてしまうでしょう。
逆に、お礼のステップを丁寧に積み重ねると、相手は「ここまでやってくれるのか」と驚き、嬉しくなり、自然とあなたに好印象を持つようになります。人は自分の話を覚えていてくれたり、その話をもとに何かしら行動してくれたりすると、一気に親近感を抱くものです。特にビジネスパーソンにおいては、そこからさらに具体的な仕事の話が進展するきっかけが生まれることも少なくありません。

■取引先、上司だけでなく「周りの人」も大切に
ここで大事なのは、「キーマンや上司だけでなく、周囲の全員に適切なタイミングでお礼をする」ということです。
たとえば飲み会の場に同席していた取引先の若手社員に対しても、「昨日はご一緒できて楽しかったです」という気遣いのメッセージを送っておく。タクシードライバーやお店のスタッフにもきちんと感謝を伝える。こうした姿勢が、めぐりめぐってキーマンの耳に入るケースもありますし、何より「この人は誰に対しても態度が変わらない人だな」という印象を与えられます。
よくあるエピソードとして、面接会場での受付への対応を実は人事がチェックしていた、という話があります。「他の人への接し方こそが、その人の本質を表している」と感じるわけです。
だからこそ、飲み会後のお礼メールを送る際も、可能な範囲で全方位に目を配り、誠実さを行動で示すことが大切です。
■実際に行動に移して「報告」する
個別メールや追加フォローの際にもう一つ意識しておきたいのは、相手からもらったアドバイスや情報を実際に行動に移してみて、その結果を報告することです。先の例で「教えてもらった本を読んでみた」「おすすめのワインを探してみた」という行動を起こしたら、その感想や学びを共有してみましょう。
多くの人は、自分がおすすめしたものを相手が本当に試してくれただけでも嬉しいもの。さらにそれを踏まえて感想を伝えたり、新たな質問をしたりすると、相手との会話がより深まります。そして、「よかったら今度、直接お話しさせてください」と“次のステップ”を提案すれば、そこでまた一段深いコミュニケーションや仕事の展開が期待できます。

こうした流れはビジネスに限らず、プライベートでも同じです。大切なのは、「相手の関心や悩みに耳を傾け、そのためにできることを考えて具体的な行動につなげる」という姿勢。自分が直接解決策を持っていなくても、代わりに知り合いを紹介したり、参考になりそうな情報をシェアしたりするだけで、「あなたと飲み会をするとメリットがある」と感じてもらいやすくなるのです。
■小さい積み重ねが、大きな成果につながる
ここまで見てきた「飲み会後にお礼をすべきタイミング」をまとめると、以下のようになります。
1.解散時:その場の挨拶で「今日はありがとうございました」と個別に伝える

2.当日の帰宅時:簡単なメッセージで熱量を維持(LINEやメールなど)

3.翌日(全体):形式的なお礼メール(まずは上司に送ってもらうなど配慮)

4.翌日(個別):相手の話題やアドバイスに触れた具体的なお礼メール

5.数日後・アットランダム:思い出したタイミングで追加フォロー(イベント情報のシェア、実行報告など)
これらのステップを踏むだけで、「あの人は感じがいい」「一歩進んだアクションをとれる人」として評価されることが増えてきます。もちろん相手の負担を考えながら送りすぎないようにする、“距離感”のマネジメントも重要ですが、その点を押さえつつ丁寧にコミュニケーションを重ねれば、ビジネスでもプライベートでも大いにプラスに働くでしょう。
最初は少し手間に感じるかもしれません。しかし、実は多くの人が「やりたいと思いつつ実際にはできていない」行動でもあるのです。だからこそ、少しの工夫で大きな差別化を図ることができます。
飲み会後のお礼というのは、一見すると小さな所作に思えるかもしれませんが、その積み重ねこそが強固な人間関係を築く基盤となります。「当たり前」を外さず、そして「もう一歩のサプライズ」を大切にすることで、飲み会の効果は何倍にも跳ね上がるのです。

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yuuu(ユウ)

会食専門家・幹事研修講師

京都大学大学院修了後、非体育会系・アルコールに弱いにもかかわらず、新卒で電通に入社。
入社当時は競合代理店である「博報堂の回し者」と社内で揶揄されるほどの落ちこぼれであったが、先輩の言葉をきっかけに会食に全力で取り組むように。最大28回会食/月に及ぶ苦戦苦闘の末に、すべての会食・食事会を誰もが成功に導くことができる、徹底的に実務に即した体系的な会食ノウハウ=「会食メソッド」を独自に生み出す。その後、自らセッティングした会食をきっかけに、念願のスタートアップ企業に就職。「会食メソッド」の一部を公開したnoteは大きな反響を呼び、noteでは異例の約30万PVを達成。X(旧Twitter)フォロワー数4万1500人(2025年5月時点)。著書に『ビジネス会食 完全攻略マニュアル』(ダイヤモンド社)がある。

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(会食専門家・幹事研修講師 yuuu 構成=プレジデントオンライン編集部)
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