人間関係を最適化するには、どうすればいいか。心理カウンセラーの大嶋信頼さんは「人間関係を最低限にして、最適化を図るためには、まず最初にウエットな人との関係を見直してドライな人間関係を目指すといい。
※本稿は、大嶋信頼『最低限の人間関係で生きていく』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。
■人間関係を最適化するための三つのステップ
人から受けるストレスを減らして、脳とメンタルを活性化するためには、自分の意思でストレス源となる人と距離を置く必要があります。
その具体的な手順を、三つのステップに分けてお伝えします。
Step①
「ウエットな人」とは関わらない
日本人は、「ウエットな関係を好む傾向がある」といわれますが、人間関係を最低限にして、最適化を図るためには、まず最初にウエットな人との関係を見直すことが最初のステップとなります。
この場合のウエットな人とは、相手に過剰に感情移入したり、物ごとの判断が情に流されやすいタイプの人を指します。
ウエットな人というのは、相手との共感や協調を重視して、人との感情的なつながりを求めがちです。
相手が職場や同じチームの人であれば、就業後や休日などのプライベートな時間であっても、遠慮なく踏み込んでくることもあります。
相手に対して、「干渉が強すぎて居心地が悪い」とか、「距離感が近すぎて、息苦しい」と感じているならば、相手がウエットな人である証拠ですから、優先的に距離を置く必要があります。
大事なポイントは、ウエットな人と関わるのをやめて、「ドライな人間関係」を目指すことです。
別の視点で見るならば、自分自身がドライな人になる……と言い換えてもいいかもしれません。
ドライな人というと、「自分勝手で独善的」とか、「他人に冷たく不親切」など、ネガティブで思いやりがない人物像をイメージするかもしれませんが、私はまったく異なるアングルから見ています。
■ドライな人の5つの長所
私が考えるドライな人とは、「情に流されずに物ごとを判断できる」という強みを持っている人を指します。
ドライな人には、次のような「長所」があります。
①自分の価値観で行動できる
②ムリなことはハッキリと断る
③人のプライバシーを尊重する
④人の時間を奪わない
⑤誰に対しても態度が変わらない
人間関係を最低限にするためには、ウエットな人との関係を見直すだけでなく、自分自身がドライな人になることが大切です。
「この人はウエットな人だな」と感じるならば、相手が利害関係のある人だとしても、明確に距離を置く必要があります。
これが、人間関係を最低限にするための最初のステップとなります。
■人間の脳には「自動的に相手の真似をする」機能がある
Step②
「不快な感情は相手のもの」という視点を持つ
緊張している人のそばにいたら、自分も緊張してしまった……という経験は誰にでもあると思います。
自分が緊張する必要はないのに、なぜ同じように緊張してしまうのか?
その理由は、人間の脳が持っている「自動的に相手の真似をする」という機能が働いていることにあります。
ドラマや映画などで悲しいシーンを観ていると、まるで自分のことのように悲しみが込み上げてくることがあります。
幸せそうな人を見ると、自分までハッピーな気分になることもあります。
人が泣いたり、笑ったりしているのを見ているとき、脳内では「ミラーニューロン」という神経細胞が活性化しています。
ミラーニューロンが活性化すると、脳内の感情を司る領域の活動が活発になります。
こうした脳の働きによって、私たちは人の行動を見ているだけで、あたかも自分が行動しているような感情になるのです。
ミラーニューロンは、別名「物まね細胞」と呼ばれています。
人の感情が、自分の感情に移る……というのは、日常的によく起こることですが、注意が必要なのは、ハッピーな感情や嬉しい感情だけでなく、不安や焦りなどのネガティブな感情も自分のものになってしまう点にあります。
自分には必要のないネガティブな感情は、すべて相手のものであって、本来は自分のものではありません。
■不快な感情の発信源となる相手と距離を置く
自分が感じる不快な感覚というのは、ことごとく人から伝わってくるものです。
それを自分のものと考えてしまうと、不安や焦りだけでなく、怒り、恐怖、悲しみ、孤独、イライラなどの余計な感情を抱えることになり、ストレスが蓄積して、心身のバランスを崩すことになります。
一緒にいると不快になる人の言動には、次のような顕著な特徴があります。
①自分の話ばかりで自慢話が多い
②話の途中で遮ってくる
③面倒なことは人任せ
④優柔不断で人に判断を押し付ける
⑤相談してきても言った通りにしない
大事なポイントは、自分が不快な感情になったら、「このネガティブ感情は誰のものなのか?」という視点を持って、その発信源となる相手と距離を置くことです。
「あの人と一緒にいると、何となくイライラする」と感じたり、「話をしていると、不愉快な気分になる」と思うならば、IQに差があるだけでなく、相手のネガティブな感情を、自分がキャッチしているということです。
不快な感覚がある人には、可能な限り関わらないことが懸命な判断といえます。
■「職場の飲み会に参加するか、パスするか」は時間と脳のムダ
Step③
「人の気持ち」のために動かない
人間関係を最低限にするための第3ステップは、相手のために、相手の気持ちに忖度して行動しない……ということです。
周囲の人の思いや気持ちを先回りして、それに合わせるような行動を繰り返していると、ストレスが溜まって、自分を見失うだけでなく、自分が本当にやりたかったことが制限されるからです。
最近では、職場の飲み会に参加するか、パスするかで悩んでいる人も多いようですが、そんなことで頭を悩ませるのは、時間と脳のムダ使いです。
自分の気持ちに、正直に向き合うだけでいいのです。
飲み会の場所が評判になっている居酒屋で、自分が旨い酒を飲んで、美味しいものを食べたければ、参加すればいいと思います。
同期の仲間が集まるから、楽しいだろうな……と考えるならば、悩む必要などないのです。
自分が参加しないと、「上司が渋い顔をするかな?」とか、「人数が少なくなってしまうのでは?」と考えてしまうと、それがストレスとなります。
ムリして飲み会に参加しても、何も楽しくなければ、大事なプライベートの時間を犠牲にした意味がなくなってしまうのです。
職場の飲み会に限らず、どんなことでも、人の気持ちのために動くのではなく、自分の気持ちに正直に行動することが大切です。
そうした行動を意識することが、人間関係の最適化につながります。
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大嶋 信頼(おおしま・のぶより)
心理カウンセラー
インサイト・カウンセリング代表取締役。米国・私立アズベリー大学心理学部心理学科卒業。FAP療法(Free from Anxiety Program不安からの解放プログラム)を開発し、トラウマのみならず幅広い症例のカウンセリングを行っている。アルコール依存症専門病院、東京都精神医学総合研究所等で、依存症に関する対応を学ぶ。人間関係のしがらみから解放され自由に生きるための方法を追究し、多くの症例を治療している。
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(心理カウンセラー 大嶋 信頼)
ドライな人とは、『情に流されずに物ごとを判断できる』人を指す」という――。
※本稿は、大嶋信頼『最低限の人間関係で生きていく』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。
■人間関係を最適化するための三つのステップ
人から受けるストレスを減らして、脳とメンタルを活性化するためには、自分の意思でストレス源となる人と距離を置く必要があります。
その具体的な手順を、三つのステップに分けてお伝えします。
Step①
「ウエットな人」とは関わらない
日本人は、「ウエットな関係を好む傾向がある」といわれますが、人間関係を最低限にして、最適化を図るためには、まず最初にウエットな人との関係を見直すことが最初のステップとなります。
この場合のウエットな人とは、相手に過剰に感情移入したり、物ごとの判断が情に流されやすいタイプの人を指します。
ウエットな人というのは、相手との共感や協調を重視して、人との感情的なつながりを求めがちです。
相手が職場や同じチームの人であれば、就業後や休日などのプライベートな時間であっても、遠慮なく踏み込んでくることもあります。
相手に対して、「干渉が強すぎて居心地が悪い」とか、「距離感が近すぎて、息苦しい」と感じているならば、相手がウエットな人である証拠ですから、優先的に距離を置く必要があります。
大事なポイントは、ウエットな人と関わるのをやめて、「ドライな人間関係」を目指すことです。
別の視点で見るならば、自分自身がドライな人になる……と言い換えてもいいかもしれません。
ドライな人というと、「自分勝手で独善的」とか、「他人に冷たく不親切」など、ネガティブで思いやりがない人物像をイメージするかもしれませんが、私はまったく異なるアングルから見ています。
■ドライな人の5つの長所
私が考えるドライな人とは、「情に流されずに物ごとを判断できる」という強みを持っている人を指します。
ドライな人には、次のような「長所」があります。
①自分の価値観で行動できる
②ムリなことはハッキリと断る
③人のプライバシーを尊重する
④人の時間を奪わない
⑤誰に対しても態度が変わらない
人間関係を最低限にするためには、ウエットな人との関係を見直すだけでなく、自分自身がドライな人になることが大切です。
「この人はウエットな人だな」と感じるならば、相手が利害関係のある人だとしても、明確に距離を置く必要があります。
これが、人間関係を最低限にするための最初のステップとなります。
■人間の脳には「自動的に相手の真似をする」機能がある
Step②
「不快な感情は相手のもの」という視点を持つ
緊張している人のそばにいたら、自分も緊張してしまった……という経験は誰にでもあると思います。
自分が緊張する必要はないのに、なぜ同じように緊張してしまうのか?
その理由は、人間の脳が持っている「自動的に相手の真似をする」という機能が働いていることにあります。
ドラマや映画などで悲しいシーンを観ていると、まるで自分のことのように悲しみが込み上げてくることがあります。
幸せそうな人を見ると、自分までハッピーな気分になることもあります。
人が泣いたり、笑ったりしているのを見ているとき、脳内では「ミラーニューロン」という神経細胞が活性化しています。
ミラーニューロンが活性化すると、脳内の感情を司る領域の活動が活発になります。
こうした脳の働きによって、私たちは人の行動を見ているだけで、あたかも自分が行動しているような感情になるのです。
ミラーニューロンは、別名「物まね細胞」と呼ばれています。
人の感情が、自分の感情に移る……というのは、日常的によく起こることですが、注意が必要なのは、ハッピーな感情や嬉しい感情だけでなく、不安や焦りなどのネガティブな感情も自分のものになってしまう点にあります。
自分には必要のないネガティブな感情は、すべて相手のものであって、本来は自分のものではありません。
■不快な感情の発信源となる相手と距離を置く
自分が感じる不快な感覚というのは、ことごとく人から伝わってくるものです。
それを自分のものと考えてしまうと、不安や焦りだけでなく、怒り、恐怖、悲しみ、孤独、イライラなどの余計な感情を抱えることになり、ストレスが蓄積して、心身のバランスを崩すことになります。
一緒にいると不快になる人の言動には、次のような顕著な特徴があります。
①自分の話ばかりで自慢話が多い
②話の途中で遮ってくる
③面倒なことは人任せ
④優柔不断で人に判断を押し付ける
⑤相談してきても言った通りにしない
大事なポイントは、自分が不快な感情になったら、「このネガティブ感情は誰のものなのか?」という視点を持って、その発信源となる相手と距離を置くことです。
「あの人と一緒にいると、何となくイライラする」と感じたり、「話をしていると、不愉快な気分になる」と思うならば、IQに差があるだけでなく、相手のネガティブな感情を、自分がキャッチしているということです。
不快な感覚がある人には、可能な限り関わらないことが懸命な判断といえます。
■「職場の飲み会に参加するか、パスするか」は時間と脳のムダ
Step③
「人の気持ち」のために動かない
人間関係を最低限にするための第3ステップは、相手のために、相手の気持ちに忖度して行動しない……ということです。
周囲の人の思いや気持ちを先回りして、それに合わせるような行動を繰り返していると、ストレスが溜まって、自分を見失うだけでなく、自分が本当にやりたかったことが制限されるからです。
最近では、職場の飲み会に参加するか、パスするかで悩んでいる人も多いようですが、そんなことで頭を悩ませるのは、時間と脳のムダ使いです。
自分の気持ちに、正直に向き合うだけでいいのです。
飲み会の場所が評判になっている居酒屋で、自分が旨い酒を飲んで、美味しいものを食べたければ、参加すればいいと思います。
同期の仲間が集まるから、楽しいだろうな……と考えるならば、悩む必要などないのです。
自分が参加しないと、「上司が渋い顔をするかな?」とか、「人数が少なくなってしまうのでは?」と考えてしまうと、それがストレスとなります。
ムリして飲み会に参加しても、何も楽しくなければ、大事なプライベートの時間を犠牲にした意味がなくなってしまうのです。
職場の飲み会に限らず、どんなことでも、人の気持ちのために動くのではなく、自分の気持ちに正直に行動することが大切です。
そうした行動を意識することが、人間関係の最適化につながります。
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大嶋 信頼(おおしま・のぶより)
心理カウンセラー
インサイト・カウンセリング代表取締役。米国・私立アズベリー大学心理学部心理学科卒業。FAP療法(Free from Anxiety Program不安からの解放プログラム)を開発し、トラウマのみならず幅広い症例のカウンセリングを行っている。アルコール依存症専門病院、東京都精神医学総合研究所等で、依存症に関する対応を学ぶ。人間関係のしがらみから解放され自由に生きるための方法を追究し、多くの症例を治療している。
カウンセリング歴31年、臨床経験のべ10万件以上。著書にベストセラー『「いつも誰かに振り回される」が一瞬で変わる方法』(すばる舎)のほか、『無意識さん、催眠を教えて』(光文社)など多数。
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(心理カウンセラー 大嶋 信頼)
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