※本稿は、森優子『敵をつくらないホンネの伝え方』(三笠書房)の一部を再編集したものです。
■相手に本音を言うとき、押さえておきたい6つのポイント
本音を受け入れてもらうためには、その本音が本物だと信じてもらえるように伝えることです。そして本物だと信じてもらうためには、これからお伝えする6つの内容が大きなポイントになります。
1 相手に落ち着いてもらう雰囲気づくり
改まって時間をつくって本音を聞いてもらう場合は、相手が話を集中して聞けるような雰囲気をつくることが相手への配慮です。そのために「場所」にはこだわりましょう。
社内なら会議室で済むことも、社外ではそうはいきません。静かで落ち着いた空間のカフェなどが最適です。隣席との距離が近いと、話す側も聞く側も何となく落ち着かないからです。また、居酒屋なら半個室などを選ぶといいでしょう。
がやがやとにぎやかな場所は、お互いの声が聞こえづらいですね。聞こえないたびに「えっ?」と聞き返されて、そのつど大きな声を出して同じことを繰り返していたら、ヘトヘトに疲れそうです。聞き役もうんざりしてしまうかもしれません。
そうならないためにも、できるだけ落ち着いた雰囲気の場所を選ぶことを心がけましょう。
そして話をする前に「今日はありがとうございます」「大切な時間を頂戴して感謝いたします」と、御礼を忘れずに言いましょう。
最初に感謝の気持ちを伝えることで、相手は「よし、話を聞こう」と心が前のめりになり、本音を聞いた後も、感想やアドバイスを話しやすくなるものです。
■本音を言うときこそ丁寧を心がける
2 礼儀正しい言葉づかいで、友好的な姿勢をアピール
礼儀正しい言葉とは、きれいな言葉です。できるだけきれいな言葉を使って話をしてみましょう。そうすれば、相手に丁寧な印象を与えることができます。
丁寧な印象を与える人に、嫌な感情を抱く人はいません。「礼儀正しい人」というイメージとなって相手に映ります。
例えば「今度の件だけど、どう考えたって変でしょ」と言うのと、「今度の件は、少々理解に苦しみます」「私にはちょっと違和感があります」と言うのとでは、どちらが丁寧かは、言うまでもありませんね。本音を言うときこそ丁寧を心がければ、関係性にヒビが入ることはなくなりそうです。
何も、尊敬語を並べることはありません。
相手が人生の先輩でも後輩でも、できるだけきれいな言葉を選んで話すことは相手を傷つけることなく、自然と友好的な姿勢が相手に伝わるものだと思います。
そしてできれば、表情も柔らかくして眉間にシワを寄せないようにしましょう。堅苦しくない表情と丁寧な話し方は、相手の心を自然とオープンにするのです。
■最後まで相手の話を聞き、最初に承認欲求を満たす
3 自分の本音を伝えるのは、相手の意見を認めてから
話が一方的にならないようにすることは、相手への思いやりです。
多くの人に信頼される人は、必ずと言っていいほど聞き上手で共感力があります。相手が自分とは違う意見を話し始めても、決して途中で遮ることをしません。最後まで話を聞きます。
驚くのはそれだけではありません。最後まで相手の話を聞いたら、自分の思いや考えを話す前に、まずは相手の意見を認めるのです。
「○○さんがそう思うのも無理はないと思います」「その考え方は決して間違ってはいないと思いますよ」と肯定してから、「私はこう思います」と言って、そこで初めて本音を伝えていくのです。
人には承認欲求があります。もちろんその度合いは人それぞれですが、本音を上手に伝える人は、最初に相手の承認欲求を満たしてから自分の本音を受け入れてもらうのです。
■訳のわからないギャグに対する知性ある切り返しフレーズ
4 適度なユーモアで、深刻な雰囲気を追い払う
ちょっとしたタイミングで、ユーモアを交えると場が和むのは本当です。
ですが、空気が張り詰めている場面でのユーモアは、レベルが高く感じますよね。
ここでは、皆さんが「自分にもできるかもしれない」と思っていただけるユーモアを1つ紹介しましょう。
それは、仲間で楽しく会食をしていたときのことでした。
仲間の1人が、場を笑わそうと思ったのでしょう。いきなり訳のわからないギャグを言いました。誰もが一瞬固まります(笑)。ユーモアが大好きな私にも、意味を読み取れない奇行ともとれる発言だったのです。
思わず私は隣に座っていた30代の男性に「今のは……どういう意味かしら?」と聞きました。すると、男性は笑顔で次のように言ったのです。
「僕にはレベルが高過ぎるギャグで、よくわかりません」
一同大爆笑でした。
この男性のひと言が、程よいユーモアとなって固まった空気を一瞬で吹き飛ばしてくれたのです。
意味不明なギャグやジョークを言う人に「面白くないよ」と本音をぶつけるのではなく、意味不明なのは相手のレベルが高過ぎるからだと、自分を下に持っていったのですね。知性あるユーモアの術に、あっぱれでした。
■冷静さを保てることが、自分も相手も守る
5 感情的に見せないためには、声を荒らげないで、落ち着いて話すこと
カーレーサーは、常に冷静でなくてはならないと聞いたことがあります。
考えてみればその通りですね。命をかけてハンドルを握るのですから、カッとなっては大きな事故に繋がってしまいます。
どんなに悔しくても、冷静さを保てることが、自分も相手も守ることになるのです。
あるレーサーに、なぜ冷静さを保てるのか聞いてみたことがありました。
「それはね、レースの本番以外でも常に落ち着いて話すことを意識しているから。例えば練習のとき、エンジントラブルなど車の不具合が起きることが頻繁にある。そんなときも、大きな声を出したり短気を起こしたりしないようにしているんです。なぜって、整備のスタッフだって一生懸命に努力しているのだからね」
20代前半の彼からこの話を聞いたとき、頭が下がる思いでした。
どんなに悔しくても、理不尽なことがあったときでも、冷静に落ち着いて話すことを心がけたいものです。
■相手がイライラしているときの様子を伺う声かけ
6 相手の表情や気持ちをよく観察する
話し始めて、相手がイライラしていたり機嫌が悪そうだと感じたら、本音を受け入れてもらえるどころか、話さえきちんと聞いてもらえない可能性があります。
そのようなときは、「話を続けても大丈夫ですか?」と尋ねてみましょう。
または、「もし話を聞いていただくタイミングが悪かったとしたら申し訳ないです」と言って、相手の反応を待ってみることです。
「そんなことないですよ」と言われたら、引き続き相手の表情を見ながら、話していきましょう。
それでも、どこか上の空だったら、「改めますので、話を聞いていただけるときをもう一度つくっていただくことは可能でしょうか」とお願いしてみましょう。
さすがにそのときは、集中して聞いてくれるでしょう。
本音を受け入れてもらうためには、話すタイミングを相手に合わすことはとても重要です。
間違っても、「聞いてますか?」「聞いてないでしょ!」と、トゲを投げないようにしましょう。
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森 優子(もり・ゆうこ)
コミュニケーション・アドバイザー
マリアージュコンサルタント事務所代表。短大卒業後、西武ライオンズ・西武鉄道のチアリーダーに従事。結婚、離婚を経てシングルマザーになり、(株)リクルート、(株)リクルートキャリアにて求人広告の企業営業を担当。入社2年目には、通期を通して「売上、新規売上、新規社数」の目標を完全に達成した者だけに与えられる「グランドスラム賞」を取り表彰される。
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(コミュニケーション・アドバイザー 森 優子)