顔は、その人の名刺。服装、髪型、表情、声などと共に第一印象を左右する要素である、顔。
心理学者の内藤誼人さんは「ある調査では、女性はわずか3分間、男性とおしゃべりをすればデートや交際の可否が決められるという結果が出た。そうしたモテる男性の顔の形には共通点があった」という――。
※本稿は、内藤誼人『やばい心理学』(総合法令出版)の一部を再編集したものです。
■握手で人の性格がわかる
心理学者は人の心を読むのが好きなので、読心術に関する研究は山ほどあります。
それこそ何百冊もの専門書が書かれています。
表情からでも、しぐさや身振りからでも、ファッションからでも人の心を読むこができるのですが、ここでは、「握手」から人の心を読むという研究をご紹介しましょう。
米国アラバマ大学のウィリアム・チャップリンは、男女2名ずつの実験アシスタントに、1カ月間、握手の強さを判定するトレーニングを受けてもらいました。それぞれのアシスタントに、強い、普通、弱い、といったように強さを変えて握手をし、その強さを判断してもらいます。
ただし、それぞれのレベルで強さは一定になるようにします。「強い」はこれくらいの強さ、「弱い」はこれくらいの強さ、といった具合です。そうして、握手の強さとアシスタントの判断が一致するようにトレーニングを受けてもらいました。
それからアシスタントは、112名の大学生と握手をし、それぞれの学生の握手の強さを判断しました。
また、大学生には事前に心理テストを受けてもらいました。
その結果、アシスタントたちに「力強い握手だった」と判断された人は、外向的な性格で感情表現が豊かだ、という傾向がわかったのです。
日本人はあまり握手をしませんが、力を込めて握手してくる人なら、きっとその人は外向的なのでしょう。喜怒哀楽もはっきりとしていて、表情から何を考えているのかがよくわかるタイプだとみなして間違いありません。
また女性については、しっかりした握手をしてくる人は、新しいことに対して興味を持つタイプであることもわかりました。いろいろと新しい経験をしたいとか、旅行に出かけたいとか、積極的なタイプの女性は、しっかりした握手をするようです。
逆に、あまり力が入っていないというか、弱々しい握手をしてくると判断された人の性格は、内気で神経質でした。こういう人は、自分からはあまり人に話しかけませんし、引っ込み思案でしょう。また、電車のつり革が触れないとか、靴に付いたちょっとした泥が気になるなど、かなり神経質なタイプです。
心理学者なら、自己紹介のときにさりげなく握手を求めて、「この人は外向的なタイプだな」とか、「この人は神経質だ」ということを、ある程度までは読むことができます。読者のみなさんも、握手をするときの「力強さ」に注目すれば、同じように読心術をすることは十分に可能です。ぜひ試してみてください。

■偉い人ほど仏頂面な理由
新聞や雑誌で取り上げられている社長の写真を見てください。にこやかにほほ笑んでいる人もたまにはいるかもしれませんが、たいていの場合は無表情。ホームページで大学の先生の写真を見ても、偉い先生になればなるほど、みんな一様に仏頂面(ぶっちょうづら)をしています。なぜ、偉い人は笑わないのでしょうか。
その理由は、「愛想良く振るまう必要がないから」と指摘しているのが、米国ミシガン大学のパトリシア・チェン。愛想良く振るまったり、ペコペコしたりするのは、そんなに偉くない立場の人です。
地位が高くなり、偉くなってくると、だれに対しても愛想良く振るまう必要はなくなるので、顔もどんどん不愛想になっていきます。そのうち、不愛想な顔がしっかりと貼り付いてしまって、写真を撮られるときにもにこやかにほほ笑むことができなくなる、というわけです。
チェンは、自分の仮説を検証してみるため、雑誌『USニューズ&ワールド・レポート』によって評価された、全米トップ20のビジネス・スクールの学部長を調べました。
ただし、3つのスクールの学部長は女性だったので、性別による影響を考慮して、残りの17名の学部長の顔写真を実験に使いました。その17名の学部長の顔写真を37人の判定員に見せて、「どれくらい愛想の良い人だと思いますか?」と尋ねてみました。もちろん、判定員たちは彼らがどこの大学の学部長なのかは知りません。

すると、ランキングの高いビジネス・スクールの学部長になればなるほど、「愛想がない」と判断されることがわかったのです。ランキングの低いスクールの学部長は、学内ではトップかもしれませんが、世間的に見ればそうでもないことを自覚しているのか、少しは愛想笑いを浮かべて写真に映ります。
ところが、ランキングの高いスクールの学部長はまったくの仏頂面。社会的に偉くなればなるほど愛想がなくなる、という仮説が一応のところ確かめられたと言えるでしょう。
組織の中で出世していったり、社長なら会社の規模が大きくなっていったりすることは、まことに喜ばしいことです。
けれども、自分が偉くなっていくということは、それだけ「イヤな人間の顔」になっていっているのかもしれない、ということは肝に銘じておかなければなりません。
愛想よく振るまう必要がなくなればなくなるほど人は日常生活の中で笑わなくなり、表情が乏しくなっていきます。偉い人になるほど仏頂面になってしまうのです。意識的に愛想良く振るまうようにしてバランスを取らないと、本当にイヤな顔になってしまいますから、気をつけてください。
■ごつい顔の男性が女性にモテる理由
男性は思春期を迎える頃に顔つきが変わります。思春期になって、テストステロン(男性ホルモン)がどれだけ分泌されるかで、上唇から眉毛までの長さが変わってきます。一般に、あまりテストステロンが分泌されない男性は、女性的で、うりざね顔(やや面長な顔)になっていきますが、テストステロンがたくさん分泌される男性は、エラが張って、ヨコに大きな顔になります。

シンガポール・マネジメント大学のキャサリン・ヴァレンタインは、スピード・デート実験に参加した男性の顔立ちを調べて、どんな男性ほど女性にモテるのかを調べています。スピード・デート実験とは、一人ひとりと3分間ずつおしゃべりするだけで、デートするかどうか、お付き合いしてもよいかどうかを決めるという実験です。
たった3分間で人を判断できるのかと思われるかもしれませんが、けっこうわかるものです。わずか3分間でも実際に話してみると、相手の人柄や、将来性なども、わりと正しく判断できるのです。
さて、このスピード・デート実験で面白いことがわかりました。顔のタテの長さとヨコの幅で調べてみると、ヨコに大きい顔(男性的な顔)の人のほうが、女性たちから、魅力的で、もう一度デートしてほしい、という評価を受けやすかったのです。
面長で、女性的な顔立ちのほうが、なんとなくモテそうな気もするのですが、そうではありませんでした。がっしりした顔というか、いかつい顔の男性のほうが、実際にはモテモテだったのです。
なぜそうなるのかというと、ヴァレンタインの分析によれば、男性的な顔の人のほうが社会に出て成功する可能性が高いからだそうです。
男性的な顔の人は、テストステロン(男性ホルモン)がたくさん出ているから、そういう顔になっているのです。男性ホルモンの分泌が多いということは、競争的で、積極的だということです。こういう人は負けず嫌いなので、社会の競争に出ても負けません。
金銭的にも豊かになれる確率は高くなります。
ヴァレンタインによると、女性は心のどこかで経済的に安心できる男を求めていて、直感的に、どういう男が成功しやすいのかを見抜くのだそうです。その際に重要なのは顔立ちで、横幅のある男性的な顔かどうかで判断している、というのがヴァレンタインの分析です。
「僕は、いま風の顔をしていないから、女性にモテるわけがない」

「私は、いかつい顔をしているから、女性に相手にされるわけがない」
そうやって自分の顔立ちを嘆いている男性がいるかもしれませんが、それは違います。女性は、いかつい顔の男性のほうが本当は好きなのです。

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内藤 誼人(ないとう・よしひと)

心理学者

慶應義塾大学社会学研究科博士課程修了。立正大学客員教授。有限会社アンギルド代表。社会心理学の知見をベースに、心理学の応用に力を注ぎ、ビジネスを中心とした実践的なアドバイスに定評がある。『心理学BEST100』(総合法令出版)、『人も自分も操れる!暗示大全』(すばる舎)、『気にしない習慣』(明日香出版社)、『人に好かれる最強の心理学』(青春出版社)など、著書多数。

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(心理学者 内藤 誼人)
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