※本稿は、『プレジデントFamily2025春号』の一部を再編集したものです。
■Q1 中学生の不登校は増えていますか?
過去最多で、1クラスあたり約2.5人
文部科学省の調査によると、2023年度は年30日以上登校しない「不登校」の小中学生は11年連続で増加し、過去最多の34万6482人に。うち小学生が6学年で13万370人。それが中学生になると、3学年で21万6112人、在籍児童・生徒1000人あたり67人が不登校ということがわかりました。つまり、1クラス40人と仮定するとクラスの約2.5人が不登校。確率的には、いつわが子が不登校になっても決しておかしくないのです。
なかでも、朝なかなか起きられない起立性調節障害に悩む子が不登校児の3~4割だといわれています。もし子供が「朝起きられない」「頭が痛い」といった不調を訴えるようになったら、注意深く観察しましょう。ストレスや精神状態が体に現れている証しかもしれません。
■Q2 不登校になる理由で多いのは?
多いのは「人間関係」の悩み
10人いたら10通りの理由がありますが、一つ挙げられるのが人間関係の悩み。コロナ禍での自粛生活、SNSやオンラインゲームの普及により、リアルで人とコミュニケーションを取る機会が激減したことも関係していると考えられます。
バックグラウンドや学力が近い私立中学の生徒同士ならなじみやすいのでは? と思う人もいるでしょう。ですが、似た集団の中では興味の方向や教養、貧富など、求められる基準が高くなることも。
また、遠方に住んでいたため文化祭などに足を運べず、学校の雰囲気を肌で感じないまま受験した子が、入学後、自分に合わないと感じてしまう、小学校までは優等生だった子が進学先で成績下層に位置したことで劣等感を感じてストレスに……という理由も聞かれます。
ただ、不登校になる子に理由を聞くと、ほとんどの場合「わからない」と答えます。うちの子は本音を話してくれないと悩む親が少なくないですが、そうではなく、本当にわからないのです。「なんとなく学校の雰囲気がいや」「何かが合わない」などと感じていながら、気持ちにふたをして、子供は無理して学校に適応しようとしています。そしてある日、「コップの水」があふれて学校に行けなくなる……というわけです。行きたくないわけではなく、「行きたいのに体が行けなくなる」のです。
周りが「原因」探しをすると、本人は自分が責められたり非難されたりしているように感じてしまうことも。さらにその「原因」に直面させようとすると、ますます混乱し、苦しんでしまう恐れがあります。ですから、「わからない」と言われたら、それ以上何かを引き出そうとせず、「そうか、わからないんだね」とそのまま受け止めてやってほしいと思います。
■Q3 何日休んだら不登校のサイン?
3日連続休んだら……学校とすぐに連携を
連続して3日欠席したら、4日目に入る前に学校に連絡することをおすすめします。私なら、連続欠席2日目で連絡します。「え? 1週間くらい様子を見たい」と思われるかもしれませんが、それでは不登校が長期化する可能性が高くなります。
というのは、4日以上連続して欠席すると、土日休みも含めて6日以上自宅で休んで過ごすことになる。すると、「朝起床して決まった時間に学校に行く」ことが難しい体になってしまう確率がぐんと高まります。
実際、多くの地域の公立の小中学校では「連続欠席は3日で止めるよう働きかける」ようにしています。
そうなる前に、教員やスクールカウンセラーにコンタクトを取りましょう。このとき、子供と接するのは担任ではなく、子供が心を許している仲のいいスタッフであるといいでしょう。不登校の理由が「担任」である場合も少なくないからです。子供が安心しリラックスできる関係の人から電話やオンライン通話を入れてもらうなり、家庭訪問をしてもらうなりしましょう。難しい話はいりません。雑談をするだけでいいのです。連続欠席3日目のこの対応で不登校を防げたケースは数多くあります。
子供が「仲のいい先生」の名前を教えてくれないことがあるかもしれません。
■Q4 支援の手厚い学校の選び方は?
足を運んで自分の目で確認
本当にわが子に合う学校かどうか、不登校の生徒への対策をきちんと行っている学校かどうか。まずは、学校選びが重要です。
私立校は不登校の対策が各学校法人の判断に委ねられるため、学校によって対応の有無やそのクオリティーは大きく異なります。
実際のケースをお話ししましょう。ある私立中学で、いじめの被害者が不登校になりました。多くの学校では、いじめの被害者は不登校になり、そのまま学校を去るのが通例です。しかしその学校では、教員がいじめの現場を確認し、加害者を特定。その日に加害者を退学させ、被害者を守りました。それほどいじめ対策に力を注ぐ学校もあれば、不登校になった生徒に、出席日数の不足などを理由に退学を勧める学校も珍しくありません。
こうした実情は学校の公式ホームページやパンフレットでは見えてきません。
もし「うちには不登校の生徒はいません」と言われたら、退学などで排除している可能性があります。不登校児が珍しくない今、不登校やいじめの対策について質問した際、きちんと答えられなかったとしたら、その学校は要注意です。
こちらから聞かなくても積極的に対策を話してくれる学校は、不登校になる手前で動いてくれることが期待できます。学校見学の際に「教室に入れなくなった生徒が通うための部屋はありますか? よかったら見せてください」と聞いてみるのもいいでしょう。
■Q5 通えなくなった子に、親がするべきサポートは?
「部分不登校」あるいは「別室登校」を。高校では休まず行けるようになるケースも多い
1週間以上学校を休んだら、「登校できる体」に戻るまで時間がかかる傾向がありますが、「午後の1時間だけ登校する」「週に1回1時間だけ行く」といった「部分不登校」、それも、空き教室などで授業を受ける「別室登校」という形なら行けるという子も多くいます。
週に1回1時間だけでも登校していた中学生が、高校に進学したら全部行けるようになったというケースは本当によく聞きます。なお、別室登校は出席日数にカウントする学校が多いです。
このように、学校に戻りたくても戻れず苦しんでいる子には戻れるように学校やスクールカウンセラーと連絡を取り合い、サポートをする。一方、「戻るのは無理だ」と思いながら、そんな自分を責めているような子には無理させず、登校させようとしすぎないことです。
しかしその場合も、「外出」はさせるようにしましょう。
もし子供の状態がわからないなら、スクールカウンセラーに相談を。現状を伝えることで、何らかの打開策を教えてもらえるかもしれません。
また、家で過ごす時間に、意識してほしいのが「生活リズム」です。
夜はぐっすり眠り、朝はきちんと起きる。そんなメリハリのある生活を目指しましょう。そのために私が親御さんに話すルールは三つ。
ひとつめは、朝、子供の部屋に行ってカーテンを開け、太陽の光を浴びさせること。次に、朝9時までに5分でもいいから外出させること。最後が昼寝の禁止。
教える人
明治大学文学部教授 諸富祥彦さん
教育学博士、日本教育カウンセラー協会理事、悩める教師を支える会代表。著書に『学校に行けない「からだ」/不登校体験の本質と予防・対応』など。
(プレジデントFamily編集部)