※本稿は後藤一仁『中古マンション これからの買い方・売り方 絶対に損したくない人のための最強バイブル』(日本実業出版社)の一部を再編集したものです。
■内見する前に、信頼する不動産会社担当者を見つけておく
住宅ポータルサイトなどで買ってもよさそうなマンションが見つかったとします。そうしたらあらかじめ見つけておいた信頼のおける不動産会社担当者に連絡しましょう。
このときには、「○○マンションがよさそうで、できれば内見したいと思っています。□□さんはどう思いますか?」などと物件のURLとともに問い合わせます。
仲介担当者によっては、エリアや立地の特徴、駅徒歩分数、専有面積(登記面積)、間取り、陽当たり、眺望、居室の広さ、懸念事項などを判断し、内見して購入を検討する価値のある物件かどうかを知らせてくれるでしょう。内見してもいい物件だと判断すれば、売主側仲介会社に確認して、内見の日程を調整してくれます。
ただし、信頼のおける担当者がいない場合は、逆にポジショントークをされることもあります。その場合は、内見手配だけにし、自身ではっきりと判断ができるようにしましょう。
現在のマンション市場は買い手よりも売り手が優位であり、物件を見つけて内見したあと、購入申込をするかどうかを判断するスピードの重要性が高まっています。
とくに人気(エリア)の物件の場合は、内見をしてイチから検討していては、他の人に先に購入申込をされてしまうこともあります。
■内見の前に自分で行ってマンションの外観・環境をチェック
不動産会社に内見を依頼したら、内見当日よりも前に、自分たちで現地に行って外から確認するのがおすすめです(もちろん、内見の手配を依頼する前に、外から確認するのもよい方法です)。この下見を会社帰りなどでもかまいませんのでぜひ実践してください。
マンションの外観やエントランスの雰囲気、陽当たり(時間によっては夜の暗さ)などを実際に自分の目で確認します。
そのうえで、Googleマップのストリートビューでは読み取れなかった実際の状況をそれとなく確認します。たとえば、出入りする住民や、バルコニーの整理整頓状況の確認、バルコニーに鳩よけネットなどが張られていないか、避難経路の妨げとなるような大きな物を置いていないか、などです。
■内見は不動産会社の送迎車に乗って行ってはいけない
下見のときに物件の周辺の状況も確認しましょう。たとえば、嫌悪施設、前面道路のおおよその幅員、該当住戸の前面の敷地に建物の建築を知らせる看板(お知らせ看板)が設置されていないかなどは確認しておきたいところです。
内見日当日が、物件に行く初めての日にならないように必ず下見をしておきましょう。
仲介会社によっては、「内見時は自宅まで送迎し、ご内覧の際は、車で個別にご案内いたします」というサービスを提供しています。これは一見便利ですが、注意が必要です。
できれば、送迎してもらうのではなく、物件のエントランス前で待ち合わせをして、最寄駅から街をよく観察しながら歩いて現地まで行くのがおすすめです。たとえばスーパーなど、物件の周辺の状況や雰囲気を実際に確かめられ、速やかに決断しやすくなります。下見のときには見落としていたことに気づくこともあるかもしれません。
■「眺望」「日当たり」「風通し」は改善することができない
内見には、売主が「居住中」の場合と、「空室」の場合があります。
売主が居住中であれば、ほとんどの場合で売主、売主側仲介会社担当者、買主側仲介会社担当者が立ち会い、物件の専用部分と共用部分を内見します。空室の場合は、売主本人は立ち会わないことが多いでしょう。
専用部分は、あらかじめ不動産会社担当者からもらっている販売図面を用意して「間取り図」と「現況」に相違がないかを確認します。違っている箇所があったら、記入しておきます。
専用(住居)部分を内見するときは、リフォームやリノベーションでは改善できない部分をチェックします。とくに、メインバルコニーに面した窓からの眺望(抜け感)、陽当たり、風通しの3つをよく確認しましょう。
眺望については、売主にバルコニーに出てよいか確認し、バルコニーからの眺望写真を承諾を得て数枚ほど撮っておくとよいでしょう。
リビングなどから窓を開けた状態と閉めた状態での、外部からの音の入り方の違いを確認します。
■内見のときに提案すべきワンポイント
内見時は、売主は電気を付けていることが多いと思われますので、「一度電気をすべて消してみてよろしいでしょうか?」と依頼し、電気が付いていない状態での自然光の明るさも確認しましょう。
床はスリッパを脱いで歩いてみて、へこんでいる箇所、きしみ音はしないか、キズなどはないかをチェックします。
すべての居室にエアコンが設置できるか(外側バルコニーなどに室外機を置くスペースはあるか、配管は通せるか?)、自身の仲介担当者を通して売主に許諾を得て、各収納の奥行き・高さ・広さの確認、サッシやドア・建具扉がスムーズに開閉できるかの確認、キッチンやバスルームの給水圧確認、間取り変更できるかどうか壁の確認などを行います。購入の可能性が高い場合、状況が許せば、冷蔵庫と洗濯機のサイズの計測をしておいてもよいでしょう。
ただし、あまりじっくりやっていると売主側に細かい人だという印象を持たれてしまうので、サッと確認することも大事です。
内装が比較的きれいで、あまり手をかけずに住める場合、内装にどの程度お金がかかるか損傷具合を確認し、忘れないように間取り図に記入しておきましょう。
変えられる部分について、気にしすぎるのはやめましょう。たとえば、「水回りの経年劣化が目立つ」「クロスの汚れが目立つ」「フローリングにキズがある」など、住宅設備や内装は変えられる部分です。もちろん予算や資金計画との兼ね合いもありますが、これを理由に買うかどうかを判断していると、購入候補の中古マンションがどんどん減ってしまいます。
■共有部分でチェックすべき3つの場所
専有部分だけでなく、共用部分もよく確認します。とくに、掲示板、メールボックス、ゴミ置場の3つを入念にチェックしましょう。
・掲示板(貼紙の確認)
掲示板は重要な情報の宝庫なので、必ず確認しましょう。騒音など、マンション内で何か問題が起きていて、それらについて注意されている紙が貼られていないかなどをチェックします。
民泊についての掲示(住宅ではなく宿泊施設としての用途での使用は禁止されているか)の有無も確認しましょう。
■封鎖したポストが多いのは空き室が多いから?
・メールボックス
ネームプレートなどを確認すれば、その情報からどんな人たちが住んでいるかがわかります。ふさいであるメールボックスが多くないかを確認しましょう。ふさいであるメールボックスが多いと空住戸が多い可能性があります。
・ゴミ置場
ゴミの分別がきちんとされているか、入居者のゴミの出し方のマナーや、ゴミ置場全体の臭い、清掃状況などを確認しましょう。
ゴミ置場内に、たとえば「これは粗大ゴミです。有料シールを貼って粗大ゴミ置場に出してください。202○年○○月○○日 管理組合事務所」などと書かれて、ほこりをかぶって放置されていないか? 放置されている場合はルールを守らない入居者がいるということです。また、ゴミ置場へのゴミ出しは24時間可能か、それとも決められた曜日、時間のみしか出せないかを確認しましょう。
このような点に注目すれば、どんな住民がいそうかを想像しやすくなります。
----------
後藤 一仁(ごとう・かずひと)
不動産コンサルタント
1989年から36年以上、常に顧客と接する第一線での不動産実務全般に携わる。大手不動産会社のハウジングアドバイザー、東証一部上場企業連結不動産会社の取締役を経て、「誰もがわかりやすく安心して不動産取引ができる世の中」をつくるために株式会社フェスタコーポレーションを立ち上げ、代表取締役に就任。首都圏を中心に不動産の購入、売却、賃貸、賃貸経営サポートなどを行う。著書に『東京で家を買うなら』(自由国民社)、『マンションを買うなら60m2にしなさい』(ダイヤモンド社)がある。
----------
(不動産コンサルタント 後藤 一仁)