異性に好かれる人はどんな人か。脳科学者の黒川伊保子さんは「男女の脳は認知構造が違うので、男性脳が着目するポイントは女性脳のそれとは違う。
そのため、女性が自分磨きとして外見を着飾っても、方向性を間違えてしまうことがある」という――。
※本稿は、黒川伊保子『運のトリセツ』(扶桑社新書)の一部を再編集したものです。
■男性は、目の前の女性以外も見ている
男性の脳は、「視覚認識」が強く働くので、美しい空間バランスを見せられると、その世界にぐっと惹(ひ)きつけられます。
それは、たとえば、フランス料理や懐石料理のように器に美しく盛られた料理のようなもの。それらは、器に対する料理の「空間占有率が低い」のです。このような料理には、男性は品格を感じ、「魅せられて」向き合うことになります。
「空間占有率」ってちょっと難しそうだけれど、たとえて言えばこういうこと。女性と二人でバーなどで飲んでいるとき、男性脳は「バーという箱に収まった彼女」を確認します。
これは、男性という生き物が、無意識のうちに、空間全体にまばらに視線を走らせながら、空間の奥行きや、ものの位置関係を把握するクセがあるからで、構造を理解したり、道に迷わなかったり、危険察知をしたりするための大事な能力。
このため、無意識のうちに「全体の中の彼女」という見方をするのです。したがって、女性にとって、その空間への収まり方が意外に大事。
■女性が「素敵」と思う服装でも、男性は違う
一言で言えば、目立ちすぎないことです。
空間の中に楚々(そそ)として納まるためには、服装は、色使いやデザインが奇抜過ぎないこと。女性が「きれい、素敵」だと思うデザインは、男性脳には、色数が多すぎる、フリルやキラキラが多すぎると映ることも。
映画の中のワンシーンを想像するように、風景込みで、自分の姿を想像してみてください。美術館の回廊で、シックなバーで、小料理屋で、海辺で、森で――二人が過ごす風景の中で、自分がどう見えるかを想像して。
もちろん、ここぞというときに、刺激的な服装をすることも大いにありですが、それも通常のバランスの良さからのギャップ萌えだからこそ効くのです。
■女性に惹かれるポイント1位は「姿勢」
さらに、「空間の中に佇む女性」を想像すると、姿勢や歩き方が大事なことにも気づくはず。以前、ある女性誌が、男性に「女性のどこに惹かれますか」というアンケートを取ったら、1位が姿勢、2位がしぐさ、3位になってようやく容姿(瞳)が登場しました。その結果に驚いた編集部が、急遽、私に解説を依頼してきたのです。
男性脳が、空間認知を「とっさの優先タスク」に位置付けていることを知っていれば、しごく当然のことなんですが、それを知らないと驚きますよね。
姿勢をよくする――それだけ言うと、がんばって背筋を伸ばしちゃう方、多いと思いますが、背筋を伸ばすのは違います。長く持たないし。
コツは簡単。
胸の中央で、相手を見る気持ちで。ウルトラマンのカラータイマーの位置(長めのペンダントをしたときのペンダントヘッドの位置)、ここで彼を見るんです。彼に向って歩くとき、振り返るとき、ここに心の目があって、その目が彼を見ていると思ってみましょう。それだけで、美しい姿勢やしぐさが作れます。
■「第三の目」を意識すると楽になる
また、彼のほうを向いていないとき、カウンターに座っているときや、海を眺めているときも、この第三の目を意識してみて。この目で料理を眺めれば、猫背になりません。コーヒーカップを見つめるときも、首が折れないので、エレガント。海を眺めれば、あごが少し上がって、幸せそうに見えるはず。
実はこれ、仕事でもつかえます。接客業なら、この第三の目でお客様を見つめると、お客様は大切に迎えられた感じがします。プレゼンテーションや、上司の前に立ったときも、明るく前向きな感じが相手に伝わります。つまり、ことばを発する前に、相手の気持ちをつかめるわけ。
それだけでも、ちょっと運がよくなりますよね。
それに、やってみればわかりますが、第三の目でものを見ると、肩がこらず、腰が楽なんです。習慣にするといいと思います。
■アイメイクやネイルより先に磨くべきこと
普段からファッションには気を遣うし、流行もきちんとチェック。ネイルにも気を抜かないし、友達にも女子力が高いといつも言われている。でも、言い寄って来る人はみんな微妙な男性ばかりで、自分が「いいな」と思った人には相手にされない。女友達も男友達も多いほうだし、とくに自分に難があるとは思えないのに……こんな悩みを抱えている人がいます。
女性は「自分磨き」が大好きですね。
でも、もし「努力しているわりに、男性に縁がない」としたら、もしかしたら「方向性」を間違っているのかもしれません。大切なのは「自分磨き」の中身。ネイルをキレイにしても、レベルの高い男性が寄って来るわけではありません。
男女の脳は認知構造が違うので、男性脳が着目するポイントは、女性脳のそれとは違います。
先ほども書きましたが、「細部」より「全体性」を把握したがる男性脳は、凝ったアイメイクやキラキラネイルよりも、姿勢のよさに目を惹かれます。
さらに、会話の楽しさや、教養や礼儀をわきまえていること、前向きな気持ちなどの内面も、男性にとっては外せないポイントです。
もしも、たいした男性に出逢えない、と思っているのなら、自分磨きのポイントがズレているかも。
■「細かい才能」に感動するクセをつくる
それから、「いい男がいない」「私は、こんなにがんばっているのに相手にしてもらえない」という女子は、いい男が見えていないのかも? 実は多くの場合、自分自身の脳の感動力が足りないんです。
出逢い力=感動力。
たとえば、字が美しい、名刺の出し方がスマート、Tシャツの選び方のセンスがいい、音楽のセンスがいい。恋につながらなくても、周りの人(女性も)の「細かい才能」に気づいて感動するクセをつくること、それを口に出す訓練をすること。すると、「人の美点、才能に気づく回路」が活性化します。
しかも、“感動する才能”は、男性を惹きつけます。「先輩の企画書のタイトル、いつもキャッチーですよね」と言われれば、ドキッとするであろうことは、女性でも想像がつきますよね。誰かの美点を見つけてことばにする──そんなことを日頃から頭の中で練習しておけば、本命の男性にもさりげなくやってあげられるはず。
■流行を追いかけるより「自分基準」で
それから、感動して口に出すクセは、直感力の回路を強めることに。
人間以外のことにも、心を動かし、それをことばにする癖をつけましょう。キレイなものを見て「キレイ」、美味しいものを食べて「美味しい」と言うことは、脳にとってとても大事です。
些細なことに「胸きゅん」して暮らしましょう。
このとき大事なのは、自分の五感で感じたことをことばにすること。他人の評価を踏襲するのではなく。人気のスイーツやコスメ、ブランド品などで自分を満足させている人は、要注意です。
「自分基準」ではなく、他人の価値観やテレビ、雑誌からの情報にとらわれると、左脳の動きばかりが増大。右脳や脳全体の連携による直感力がはたらかなくなり、小さなことで感動できなくなります。
それに、一時的な高揚感は、それを失ったときの欠落感とセットになっているので、しあわせを追いかけては失うマイナスのスパイラルに。
外からの情報によるしあわせ像を追うことに必死になると、結果にこだわる、問題解決型(男性脳型)の回路が優先されます。つまり、右左脳連携が鈍くなり、男女の出逢いに必要なフェロモンセンサーが弱くなるため、ますます出逢いが遠ざかります。
■「脳を磨く」ために大切な生活習慣
ちょっとしたことでも「ステキ!」と感動できる脳になるためには、まず「早寝、早起き、朝ごはん」で、脳を活性化させること。
この生活習慣は、脳に幸福感を充填するセロトニンというホルモンを誘発し、自律神経を整えます。結果、直感が働き、美肌やめりはりボディを作り出す女性ホルモン、エストロゲンも出やすくなります。
それから、ゆっくりお風呂に入ったり、クラシック音楽の器楽曲を聞いたり、美術館に行ったり、料理をしたりするのもおすすめです。
ブランドにこだわったり、ネガティブなことを言ってくる友だちとも、一時期、距離を置くことです。自分が普段からかき集めている世間からの情報(言葉)を消すことで、直感力が冴えてきます。
外見よりも、「脳を磨く」ことのほうが、出逢いを引き寄せる力になってくれるのです。

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黒川 伊保子(くろかわ・いほこ)

脳科学・AI研究者

1959年、長野県生まれ。人工知能研究者、脳科学コメンテイター、感性アナリスト、随筆家。奈良女子大学理学部物理学科卒業。コンピュータメーカーでAI(人工知能)開発に携わり、脳とことばの研究を始める。1991年に全国の原子力発電所で稼働した、“世界初”と言われた日本語対話型コンピュータを開発。また、AI分析の手法を用いて、世界初の語感分析法である「サブリミナル・インプレッション導出法」を開発し、マーケティングの世界に新境地を開拓した感性分析の第一人者。近著に『共感障害』(新潮社)、『人間のトリセツ~人工知能への手紙』(ちくま新書)、『妻のトリセツ』『夫のトリセツ』(講談社)など多数。

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(脳科学・AI研究者 黒川 伊保子)
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