高齢者は医者の言うことに、どこまで従うべきか。医師の和田秀樹さんは「がんは高齢になれば多くの人が抱える病気であると同時に、抱えたからといって死因にならないことのほうが多い。
※本稿は、和田秀樹『75歳からやめて幸せになること 一気に老ける人、日ごとに若々しくなる人の差』(大和書房)の一部を再編集したものです。
■「はやりの健康法」に飛びつくのをやめる
医学は常に発展の途上にあり、現在の学説が5年後10年後に覆(くつがえ)ることも往々にしてあります。反対に、今は間違っているとされている説が、実は正しかったと評価される可能性もあります。
例えば、かつて植物性油から作られるマーガリンは、動物由来のバターよりも健康的であると、もてはやされていた時期がありました。
ところが、ある時期からマーガリンに含まれているトランス脂肪酸が心疾患のリスクを高めるといわれるようになりました。今ではすっかり「マーガリンは不健康な食品」という認識が定着しています。
研究が進んだ結果、健康常識が更新されるのは読者の皆さんも理解できると思います。しかし、日本では大学医学部の教授が絶大な権力を持つせいで、有力教授たちがポジションを退くまでの間、すでに間違いが調査研究で明らかになっていることであっても、正しいとされ続けるケースがあります。
乳がんの乳房温存療法は、そのせいで標準治療になるのが15年も遅れました。考えるだけでもおぞましいですが、これが現実なのです。
■医師の声より「自分の体の声」に従う
だからこそ、「自分の体の声」に従うという発想が重要となります。
例えば、食後に胃がもたれたり、気分が悪くなったりした場合は、量を食べ過ぎたか体に合わない食べ物を口にしたと考えられます。
あるいは二日酔いをしているときは、飲み過ぎである可能性が大です。こういった体の声を聞き逃さず、無理のない食生活を追求していくことが大切です。
運動法やメンタルヘルスの知識も同じです。医者が「体に絶対いい」と推奨していることでも、あなたにも当てはまるわけではありません。
とりあえず試してみるのはいいですが、少しでも違和感を感じたらやめて別の方法に切り替えてください。自分にとってベストな健康管理を確立していきましょう。
■日本の臓器別診療の落とし穴
日本では、患者が医者の言うことを素直に聞き入れ、素直に従う傾向があります。もちろん医者の言葉に納得できればよいと思います。ただし、自分の体の声と相反するものを感じたときには医者を信じすぎないことも大切です。
日本の医療は、基本的に臓器別診療で行われています。
例えば、循環器内科の医師は患者に「コレステロール値を下げなさい」と言います。しかし、コレステロール値を下げると免疫機能が低下し、がんや感染症のリスクは高まります。
つまり、特定の臓器だけを治療するという発想では、他の面で支障が出るという問題を防げないのです。
臓器別診療が始まった1970年代当時の日本の高齢化率は、わずか7%程度。高齢者が少なかった時代には臓器別診療には意味があったのかもしれませんが、そこから50年が経過し、高齢化が問題になっているのに、いまだに医療は臓器別診療のまま。とても超高齢社会に対応できるとは思えません。
■近所の開業医「その経歴」に注目すべき理由
例えば、あなたの家の近所に内科のクリニックが開業したとしましょう。そのクリニックでは訪問診療も行うことを謳(うた)っています。いかにも面倒見がよさそうで、あなたもかかりつけ医にしたいと思うかもしれません。
しかし、こういうときに注意してほしいのは「医師の経歴」です。
経歴を見ると、開業する直前まで大病院の呼吸器内科や消化器内科の医長だったことがわかったりします。つまり、特定の臓器しか診てこなかった人が、いきなり内科医として訪問診療を行うと言っているのです。
私には面倒見がいいどころか、信用できない医者としか思えません。本来なら、開業にあたって総合診療医として一定期間のトレーニングをすべきです。こうした状況を見るにつけ、医師を信じすぎるのは恐ろしいと思います。
■かかりつけ医が80代以降の人生を大きく左右する
前述したように、75歳になったら特定の臓器の専門家ではなく、総合診療をしてくれる医師に頼ることが肝心です。
そのためには、大学病院の専門家よりも、自分の体のことをわかってくれる町のかかりつけ医を探すという発想に切り替えるべきです。
いやな医者とかかわるのをやめ、いいかかりつけ医を見つけて、付き合っていく。これができるかどうかが、80代以降の人生を大きく左右します。
かかりつけ医を見つけるときのポイントはいくつかあります。
一つ目は、薬について納得のいく説明をしてくれることです。
例えば、処方された薬を飲んでだるさを感じ、医者に相談したとしましょう。
一方で、患者の話にまともに向き合わない医者もいます。
「でも、あなたの血圧は、薬のおかげで正常値になりましたよ。効果が出ていますから、このまま飲み続けてください」
これは、患者を見ずに数値だけを見ている典型的な反応です。
■本当に信じるべき医者の条件
医者の言うことに疑問を感じたとき、セカンドオピニオン、サードオピニオンで別の医者に診てもらう方法はあります。ただし、医者は基本的に同じ教育を受けていますから、同じようなことを言われる可能性が大です。
複数の専門家から同じことを言われれば、それが正しいと思ってしまうのが普通の感覚でしょう。
本当に信じるべきは、たくさんの患者をちゃんと診ている医者です。たくさんの患者をちゃんと診ている医者は、紋切り型の診断ではなく、個人に見合った診療をしてくれることが多いものです。患者に向き合ってくれる医者を探してください。
日本では多くの医師が健康診断を推奨しています。
確かに、健康診断は、がんをはじめとする生活習慣病の早期発見につながります。健診によって命が救われる人がいるかもしれないことは認めます。
しかし、75歳を超えた人は、少し考え方を変える必要があります。
そもそも、健康診断で示される「正常値」は、40代~60代くらいの人のデータをもとに作成された基準値にすぎません。これを高齢者にとっての正常値とするのは無理があります。もっというと、正常値は一人ひとり違うのです。
そんな「正常値」をもとに高齢者の数値を異常であると診断し、治療を行うとどうなるでしょうか。数値を正常にするために薬を服用した結果、かえって元気がなくなり寿命を短くしてしまう恐れもあります。
■自分では健診を受けずに薬を服用しない医師たち
医師は健康診断を推奨している割に、自分では健診を受けず、薬を服用しない傾向があります。健診や薬が、本当の意味で健康的ではないことを自覚しているからではないでしょうか。
先の記事では、高齢になれば、ほとんどの人に動脈硬化が起こるとお話ししました。血圧や血糖値はむしろ高めでないと、酸素やブドウ糖が脳に届きにくくなります。
そう考えると、高齢者は高血圧や高血糖と共存するという考え方にシフトするのが正解だと私は信じています。健康診断の結果を気にするよりも、転倒による骨折を防ぐこと、食事をしっかり摂ることのほうが大事です。
病気とともに生きたほうが長生きできる。
そう考えれば、病気を必要以上に不安がることなく、人生を楽しめるようになることでしょう。
■がんは「知らぬが仏」で生きていける病気
がんは日本人の死因トップの病気です。2人に1人の割合でがんを発症し、3人に1人ががんで命を落とすとされています。
これは見方を変えれば、年をとるにしたがって、がんになりやすくなるということ。
実際に、私が勤務していた浴風会病院で亡くなった方の解剖をしても、85歳を過ぎたほとんどの人にがんが見つかりました。
ただし、死因ががんだった人は3分の1程度。残りの3分の2の人はほかの死因で亡くなっており、解剖した結果、がんが見つかったということです。
つまり、がんは高齢になれば多くの人が抱える病気であると同時に、抱えたからといって死因にならないことのほうが多い、というわけです。
そもそも、がんは末期になるまであまり症状が出ません。最後の数カ月を除けば、「知らぬが仏」で生きていける病気なのです。
■高齢者が手術後に弱ってしまう理由
そう考えると、あえて高齢になってからがんを切る手術をするのは疑問です。
私から見て、日本の医者のがん治療は適切とはいえません。かつて乳がん患者さん全員の乳房を全摘していたように、転移を恐れてまわりの臓器まで摘出しすぎる傾向があります。臓器の摘出部分が大きくなれば、機能が低下し、元気がなくなります。
高齢者はただでさえ体力が落ちていますから、手術の結果QOL(生活の質)が下がることは容易に想像できます。
例えば、胃がんの手術で胃を3分の2も摘出する手術をした結果、栄養状態が悪くなり弱ってしまう高齢者が後を絶たないのです。
仮にがんを切り残したとしても、高齢者の場合、転移して命を落とすまでには、おそらく10年近い時間がかかるでしょう。少なくとも85歳までは支障なく生活できる計算です。
そもそも私はがんは切らなくてもいいと考えているのですが、どうしても不安で手術をしたいなら、がんだけを切ってくれる医者を探すことをおすすめします。
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和田 秀樹(わだ・ひでき)
精神科医
1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、アメリカ・カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。国際医療福祉大学教授(医療福祉学研究科臨床心理学専攻)。一橋大学経済学部非常勤講師(医療経済学)。川崎幸病院精神科顧問。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わっている。2022年総合ベストセラーに輝いた『80歳の壁』(幻冬舎新書)をはじめ、『70歳が老化の分かれ道』(詩想社新書)、『老いの品格』(PHP新書)、『老後は要領』(幻冬舎)、『不安に負けない気持ちの整理術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『どうせ死ぬんだから 好きなことだけやって寿命を使いきる』(SBクリエイティブ)、『60歳を過ぎたらやめるが勝ち 年をとるほどに幸せになる「しなくていい」暮らし』(主婦と生活社)など著書多数。
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(精神科医 和田 秀樹)
そもそも私はがんは切らなくてもいいと考えているのだが、どうしても不安で手術をしたいなら、がんだけを切ってくれる医者を探すといい」という――。
※本稿は、和田秀樹『75歳からやめて幸せになること 一気に老ける人、日ごとに若々しくなる人の差』(大和書房)の一部を再編集したものです。
■「はやりの健康法」に飛びつくのをやめる
医学は常に発展の途上にあり、現在の学説が5年後10年後に覆(くつがえ)ることも往々にしてあります。反対に、今は間違っているとされている説が、実は正しかったと評価される可能性もあります。
例えば、かつて植物性油から作られるマーガリンは、動物由来のバターよりも健康的であると、もてはやされていた時期がありました。
ところが、ある時期からマーガリンに含まれているトランス脂肪酸が心疾患のリスクを高めるといわれるようになりました。今ではすっかり「マーガリンは不健康な食品」という認識が定着しています。
研究が進んだ結果、健康常識が更新されるのは読者の皆さんも理解できると思います。しかし、日本では大学医学部の教授が絶大な権力を持つせいで、有力教授たちがポジションを退くまでの間、すでに間違いが調査研究で明らかになっていることであっても、正しいとされ続けるケースがあります。
乳がんの乳房温存療法は、そのせいで標準治療になるのが15年も遅れました。考えるだけでもおぞましいですが、これが現実なのです。
■医師の声より「自分の体の声」に従う
だからこそ、「自分の体の声」に従うという発想が重要となります。
自分の日々の体調をきちんと自覚し、違和感の有無に注意を払うということです。
例えば、食後に胃がもたれたり、気分が悪くなったりした場合は、量を食べ過ぎたか体に合わない食べ物を口にしたと考えられます。
あるいは二日酔いをしているときは、飲み過ぎである可能性が大です。こういった体の声を聞き逃さず、無理のない食生活を追求していくことが大切です。
運動法やメンタルヘルスの知識も同じです。医者が「体に絶対いい」と推奨していることでも、あなたにも当てはまるわけではありません。
とりあえず試してみるのはいいですが、少しでも違和感を感じたらやめて別の方法に切り替えてください。自分にとってベストな健康管理を確立していきましょう。
■日本の臓器別診療の落とし穴
日本では、患者が医者の言うことを素直に聞き入れ、素直に従う傾向があります。もちろん医者の言葉に納得できればよいと思います。ただし、自分の体の声と相反するものを感じたときには医者を信じすぎないことも大切です。
日本の医療は、基本的に臓器別診療で行われています。
臓器別診療では病気をそれぞれの臓器の状態から診断します。この診療方法そのものが悪いわけではないですが、高齢者の診療には適さないことが多いといえます。
例えば、循環器内科の医師は患者に「コレステロール値を下げなさい」と言います。しかし、コレステロール値を下げると免疫機能が低下し、がんや感染症のリスクは高まります。
つまり、特定の臓器だけを治療するという発想では、他の面で支障が出るという問題を防げないのです。
臓器別診療が始まった1970年代当時の日本の高齢化率は、わずか7%程度。高齢者が少なかった時代には臓器別診療には意味があったのかもしれませんが、そこから50年が経過し、高齢化が問題になっているのに、いまだに医療は臓器別診療のまま。とても超高齢社会に対応できるとは思えません。
■近所の開業医「その経歴」に注目すべき理由
例えば、あなたの家の近所に内科のクリニックが開業したとしましょう。そのクリニックでは訪問診療も行うことを謳(うた)っています。いかにも面倒見がよさそうで、あなたもかかりつけ医にしたいと思うかもしれません。
しかし、こういうときに注意してほしいのは「医師の経歴」です。
経歴を見ると、開業する直前まで大病院の呼吸器内科や消化器内科の医長だったことがわかったりします。つまり、特定の臓器しか診てこなかった人が、いきなり内科医として訪問診療を行うと言っているのです。
私には面倒見がいいどころか、信用できない医者としか思えません。本来なら、開業にあたって総合診療医として一定期間のトレーニングをすべきです。こうした状況を見るにつけ、医師を信じすぎるのは恐ろしいと思います。
■かかりつけ医が80代以降の人生を大きく左右する
前述したように、75歳になったら特定の臓器の専門家ではなく、総合診療をしてくれる医師に頼ることが肝心です。
そのためには、大学病院の専門家よりも、自分の体のことをわかってくれる町のかかりつけ医を探すという発想に切り替えるべきです。
いやな医者とかかわるのをやめ、いいかかりつけ医を見つけて、付き合っていく。これができるかどうかが、80代以降の人生を大きく左右します。
かかりつけ医を見つけるときのポイントはいくつかあります。
一つ目は、薬について納得のいく説明をしてくれることです。
例えば、処方された薬を飲んでだるさを感じ、医者に相談したとしましょう。
このとき、いい医者であれば「それは薬が合わなかったということかもしれませんね。ほかの薬に変えてみましょう」「薬を減らして様子を見ましょう」などと提案してくれるはずです。
一方で、患者の話にまともに向き合わない医者もいます。
「でも、あなたの血圧は、薬のおかげで正常値になりましたよ。効果が出ていますから、このまま飲み続けてください」
これは、患者を見ずに数値だけを見ている典型的な反応です。
■本当に信じるべき医者の条件
医者の言うことに疑問を感じたとき、セカンドオピニオン、サードオピニオンで別の医者に診てもらう方法はあります。ただし、医者は基本的に同じ教育を受けていますから、同じようなことを言われる可能性が大です。
複数の専門家から同じことを言われれば、それが正しいと思ってしまうのが普通の感覚でしょう。
本当に信じるべきは、たくさんの患者をちゃんと診ている医者です。たくさんの患者をちゃんと診ている医者は、紋切り型の診断ではなく、個人に見合った診療をしてくれることが多いものです。患者に向き合ってくれる医者を探してください。
日本では多くの医師が健康診断を推奨しています。
実際に、たくさんの人が年に一度の健康診断を受診しています。現役時代は職場の健診を受けるのが一般的であり、リタイア後は自治体が補助している健診を受ける人が多いかもしれません。
確かに、健康診断は、がんをはじめとする生活習慣病の早期発見につながります。健診によって命が救われる人がいるかもしれないことは認めます。
しかし、75歳を超えた人は、少し考え方を変える必要があります。
そもそも、健康診断で示される「正常値」は、40代~60代くらいの人のデータをもとに作成された基準値にすぎません。これを高齢者にとっての正常値とするのは無理があります。もっというと、正常値は一人ひとり違うのです。
そんな「正常値」をもとに高齢者の数値を異常であると診断し、治療を行うとどうなるでしょうか。数値を正常にするために薬を服用した結果、かえって元気がなくなり寿命を短くしてしまう恐れもあります。
■自分では健診を受けずに薬を服用しない医師たち
医師は健康診断を推奨している割に、自分では健診を受けず、薬を服用しない傾向があります。健診や薬が、本当の意味で健康的ではないことを自覚しているからではないでしょうか。
先の記事では、高齢になれば、ほとんどの人に動脈硬化が起こるとお話ししました。血圧や血糖値はむしろ高めでないと、酸素やブドウ糖が脳に届きにくくなります。
そう考えると、高齢者は高血圧や高血糖と共存するという考え方にシフトするのが正解だと私は信じています。健康診断の結果を気にするよりも、転倒による骨折を防ぐこと、食事をしっかり摂ることのほうが大事です。
病気とともに生きたほうが長生きできる。
そう考えれば、病気を必要以上に不安がることなく、人生を楽しめるようになることでしょう。
■がんは「知らぬが仏」で生きていける病気
がんは日本人の死因トップの病気です。2人に1人の割合でがんを発症し、3人に1人ががんで命を落とすとされています。
これは見方を変えれば、年をとるにしたがって、がんになりやすくなるということ。
実際に、私が勤務していた浴風会病院で亡くなった方の解剖をしても、85歳を過ぎたほとんどの人にがんが見つかりました。
ただし、死因ががんだった人は3分の1程度。残りの3分の2の人はほかの死因で亡くなっており、解剖した結果、がんが見つかったということです。
つまり、がんは高齢になれば多くの人が抱える病気であると同時に、抱えたからといって死因にならないことのほうが多い、というわけです。
そもそも、がんは末期になるまであまり症状が出ません。最後の数カ月を除けば、「知らぬが仏」で生きていける病気なのです。
■高齢者が手術後に弱ってしまう理由
そう考えると、あえて高齢になってからがんを切る手術をするのは疑問です。
私から見て、日本の医者のがん治療は適切とはいえません。かつて乳がん患者さん全員の乳房を全摘していたように、転移を恐れてまわりの臓器まで摘出しすぎる傾向があります。臓器の摘出部分が大きくなれば、機能が低下し、元気がなくなります。
高齢者はただでさえ体力が落ちていますから、手術の結果QOL(生活の質)が下がることは容易に想像できます。
例えば、胃がんの手術で胃を3分の2も摘出する手術をした結果、栄養状態が悪くなり弱ってしまう高齢者が後を絶たないのです。
仮にがんを切り残したとしても、高齢者の場合、転移して命を落とすまでには、おそらく10年近い時間がかかるでしょう。少なくとも85歳までは支障なく生活できる計算です。
そもそも私はがんは切らなくてもいいと考えているのですが、どうしても不安で手術をしたいなら、がんだけを切ってくれる医者を探すことをおすすめします。
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和田 秀樹(わだ・ひでき)
精神科医
1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、アメリカ・カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。国際医療福祉大学教授(医療福祉学研究科臨床心理学専攻)。一橋大学経済学部非常勤講師(医療経済学)。川崎幸病院精神科顧問。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わっている。2022年総合ベストセラーに輝いた『80歳の壁』(幻冬舎新書)をはじめ、『70歳が老化の分かれ道』(詩想社新書)、『老いの品格』(PHP新書)、『老後は要領』(幻冬舎)、『不安に負けない気持ちの整理術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『どうせ死ぬんだから 好きなことだけやって寿命を使いきる』(SBクリエイティブ)、『60歳を過ぎたらやめるが勝ち 年をとるほどに幸せになる「しなくていい」暮らし』(主婦と生活社)など著書多数。
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(精神科医 和田 秀樹)
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