集中力を持続させるには何をすればいいか。精神科医の樺沢紫苑さんは「集中力の持続時間の目安として『15分・45分・90分の法則』がある。
睡眠中の脳のリズムは90分だが、実は日中もこのリズムは続いており、覚醒と非覚醒を繰り返している。集中力を持続させるには、『脳が疲れ切る前に休む』といい」という――。
※本稿は、樺沢紫苑『精神科医が教える! 心がスッと軽くなる93の処方箋』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。
■集中力の波に乗るための睡眠時間
【相談】

やることが山積みなのに、途中で集中力が切れて嫌になってしまいます。

なにかよい対処法はありますか?
【処方箋】

「7時間睡眠」「1分運動」「早めの休憩」で集中力をキープ

低下した集中力を回復させるのは、大変難しいです。
ですから、集中力が高いときにバリバリ働き、集中力が下がってきたら休息する。集中力の波に乗るというのがポイントです。そのためにまず必要なのが「7時間睡眠」。
睡眠不足では、何をしても集中力が発揮できません。
次に「1分運動」。仕事の合間に運動すると、脳内物質がシャワーのように出るため、集中力を回復させる効果があります。運動の時間を取れない場合は、階段の上り下りや、郵便受けを見にいくなどでも効果があります。

30分~1時間に1回くらいは立ち上がって、1分ほど歩くようにしましょう。スクワットを10回ほどするのもおすすめです。
最後に「早めの休憩」です。ものすごく疲れてから休憩してもあまり回復しませんので、疲れる前に休むようにしてください。
■「自分のやりたい」を意識する
【相談】

何かをやりたいと思っても、時間が足りません。優先順位の決め方はありますか?
【処方箋】

やりたいことからやると、効率も充実感もアップ!

結論を先にいうと、「やりたいことからやる」といいでしょう。
やりたいと思ったときは、脳内物質ドーパミンが出ます。「鉄は熱いうちに打て」ではないですが、ドーパミンはモチベーション物質で脳を活性化するため、やりたいと思ったことは作業効率がアップするのです。
また、ドーパミンは記憶を強化してくれる作用もあります。やりたい、行きたいと思って参加したイベントは、思い出にも残りやすいといえます。
ちなみに、本を読むときや勉強するときも、読みたいものや、やりたいものを優先すると、記憶に残りやすく、効率的に学習することができます。
日頃から、何に興味や関心があるのかなど、自分と対話することが重要になります。
「自分のやりたい」を意識してみてください。
■目標は手で書いて毎日確認
【相談】

年末はいつもバタバタしていて、来年の目標を決める余裕がありません。

年が明けて落ち着いてからでもいいですか?
【処方箋】

年内に設定し、年明けから全力でスタートしましょう

年が明けてから目標を設定するのはやめましょう。1月1日になったら、もう新たな年が始まっています。マラソンでいうなら、用意ドーンとなってから、あわててスタートラインに向かっているようなもの。元旦早々、出遅れてしまいます。
年末は忘年会やクリスマスで忙しいですが、12月25日を過ぎると、大掃除やおせち料理の準備にシフトする方が多いのではないでしょうか。29日か30日あたりに、掃除やおせち料理作りの気分転換に新年の目標を考えるのがおすすめです。私は2時間ほど集中した時間を取ります。
ポイントは手で書くこと。脳が刺激され、より記憶に残りやすくなります。書いた目標は手帳の1ページ目など、目につきやすい場所に貼って、毎日確認するようにしましょう。
同様に、来週、来月の目標、予定も、今週、今月のうちに考えるクセをつけましょう。
■神社は「感謝の練習場」
【相談】

神社に行くと、運気が上がるとか、エネルギーがもらえると言いますが、本当に効果があるのでしょうか?
【処方箋】

感謝する気持ちを鍛えるとよい気の流れが生まれます

結論からいうと、効果はあると思います。ただし、神社はお願いする場所ではなく、日頃健康に過ごせていることや、仕事がうまくいっていることを感謝する場所。この「感謝する」気持ちが大事です。
日頃から周りの人に感謝して、「ありがとう」と言葉にすべきなのですが、照れくさくて言えなかったり、直接伝えるチャンスがなかったりします。そういう意味で、神社は「感謝の練習場」ではないかと思っています。
神様に感謝できない人が、人間に感謝できるでしょうか。神社に行って神様に感謝するというのは、何百年、何千年と続いてきたすばらしい慣習です。
感謝する気持ちが鍛えられ、自然に感謝する気持ちがわいてくるようになれば、人間関係もよくなります。よい気の流れを生み、運気もアップしていくと思います。
■言葉にしたことが現実化する脳科学的な法則
【相談】

「言霊があるからいい言葉を使うように」という話を聞きますが、日常使う言葉は心に影響があるのでしょうか。
【処方箋】

ポジティブな言葉を使うことで世の中の見方が変わります

言霊は昔から日本人にある考え方で、言葉には霊力が宿っていて、言葉にしたことが現実化するというものです。

これは脳科学的には「注意の法則」といいます。「私は運がいい」と言っている人は、運がいいことを発見するように注意が向くため、うまくいっていることをたくさん発見できるのです。
世の中にはいいことも悪いこともありますが、どちらに注意を向けるかで、まったく違うものが見えてくるのです。ポジティブな言葉を口にすることで、ポジティブなことを引き寄せるといえます。
また、私たちはポジティブな言葉を発する人に好感を持ちやすい。なので、コミュニケーションの観点からも、ポジティブな言葉を使うほうが人間関係がうまくいくといえます。
■だからアメリカ人の幸福度がもっとも高いのは高齢者
【相談】

年齢を重ねるごとに楽しみがなくなる気がして怖いです。

心を平穏に保つ方法はありますか?
【処方箋】

歳をとるのは怖いことではなく可能性が増えると考えて

老いを怖いと考えるのは日本人ならではの傾向であり、欧米人はそのように考えません。日本人の場合、幸福度がもっとも高いのは10代。歳を重ねるごとに幸福度が下がり、高齢者は幸福度が一番低くなります。
一方、アメリカ人の場合、幸福度がもっとも高いのは高齢者。若いときはある程度高く、35歳に向けて下がるのですが、その後、歳をとるごとに幸福度は上がっていきます。
70歳以上の高齢者は非常にポジティブで、キャンピングカーでアメリカを一周するなど、人生をエンジョイしているのです。
日本人は仕事を重視する傾向があり、定年後に暗いイメージを抱きがちです。しかし、歳をとることは「お金も時間もあるので可能性が増える」ということ。リタイアしてからがスタートだと考え、今から老後を楽しむ準備を始めましょう。
■集中力の高い午前中に仕事を終わらせる
【相談】

昼食後、すごく眠くなってしまい、家事をサボりがちになります。

午後も集中力を高める方法はありますか?
【処方箋】

昼食時間を遅らせ、午前中にメインの家事を終わらせましょう

昼食後にダラダラしてしまうのは、消化するために胃や腸に血液が回り、脳への血流が減るからです。脳が思うように働かなくなるため、午前中より集中力が下がるのは当然だといえます。
そこでおすすめなのは、昼食までにその日の家事や仕事の大半を終わらせるという方法です。私の場合は、昼食をとるのが14時から14時半、ときには15時になることも。午後からは高い集中力が必要な仕事はできないとわかっているからこそ、午前中に集中して大部分の仕事を終わらせるのです。
午後もしっかり集中したい日は、昼食のタイミングで外出し、カフェで家計簿つけなどの事務仕事をして環境を変えましょう。またはジムや習い事などで外出して気分転換をすると、その後1~2時間、集中力を維持しやすくなります。

■「15分・45分・90分の法則」で集中力を高める
【相談】

掃除や片づけが苦手で、すぐに嫌になってしまいます。やり切るコツはありますか?
【処方箋】

集中できるのは15分・45分・90分。区切ることを意識しましょう

集中力の持続時間の目安として「15分・45分・90分の法則」というものがあります。同時通訳は15分、学校の授業は45分、大学になると90分、サッカーの試合は前・後半それぞれ45分ハーフでトータル90分など、いろいろな分野で意識されています。
睡眠中の脳のリズムは90分ですが、実は日中もこのリズムは続いており、覚醒と非覚醒を繰り返しています。集中力を持続させるポイントは、「脳が疲れ切る前に休む」こと。脳のリズムを活用するなら、45分ごとに休憩を入れるとよいでしょう。
「15分・45分・90分」という集中力を持続できる時間は、訓練しても延ばすことはできず、90分は限界点といえます。このことを知り、意識的に休憩を入れることで、全体のパフォーマンスを高めることができます。

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樺沢 紫苑(かばさわ・しおん)

精神科医

作家。米・イリノイ大学への留学を経て樺沢心理学研究所を設立。YouTubeやメルマガで精神医学の情報を発信。著書に『学びを結果に変えるアウトプット大全』『精神科医が教える ストレスフリー超大全』『読書脳』ほか。

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(精神科医 樺沢 紫苑)
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