良好な人間関係を構築する秘訣は何か。精神科医の樺沢紫苑さんは「人間関係がギクシャクしても、100%嫌いになったわけではない。
相手への好意度は、温度計のような『尺度』で考えるとうまくいく」という――。
※本稿は、樺沢紫苑『精神科医が教える! 心がスッと軽くなる93の処方箋』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。
■人間関係は、毎日変化する温度計
【相談】

人間関係を0%か100%かで考えない交友関係を広げたいのですが、

苦手な人ともうまく付き合う方法はありますか?
【処方箋】

人間関係を0%か100%かで考えない

人間関係を「好き」「嫌い」の二択で考えていませんか。
「100%好き」ということも「100%嫌い」ということもそんなにないのです。
70%とか80%とか、好意度は、温度計のような「尺度」で考えると楽になります。
関係がギクシャクしても、0%になったわけではありません。それなのに、90%が70%に下がっただけで、「嫌われた!」と関係が0%になったと思い込むケースが見られます。
ケンカをすれば下がり、仲直りすればまた上がる。そんなふうに人間関係の好意度は一瞬で変わることもある。気温と同じように、毎日変化しているのです。
重要なのは、あなたのひと言で、その度数が変わるということです。やさしい声がけなどで、あなたへの好意度が上がるかもしれない。
ですから、苦手な人ほど焦らず、好意度を少しずつ上げるように意識して接するといいでしょう。
■リラックスの時間を持とう
【相談】

予定が入っていないと不安になるのですが、

正直に言って、人と会うと疲れてしまいます。

何かよい時間の過ごし方はありますか?
【処方箋】

ひとりの時間も予定のうち! スケジュールに加えましょう

人間というのは人といるとすごく楽しいのですが、気を使う部分もあります。つまり、緊張感をともなう楽しさだといえるのです。
大抵の人は、毎日人と会っていると精神的に疲れます。
特に、人と接する仕事をしている人はエネルギーを奪われている可能性があります。予定を入れすぎず、家に帰って少しのんびりする。「回復」を意識しましょう。
孤独を楽しむというか、音楽を聴いたり、お酒でも飲みながらテレビを見たり、なんでもいいのですが、緊張から解放される時間が必要です。
ひとりの時間というのはマイナスではなく、「気を使わないでいられる時間」とポジティブにとらえてください。たまには、「ひとりの時間」というのを予定表に入れるのもおもしろいのではないでしょうか。
■100人に1回ずつ会うより、10人に10回ずつ会う
【相談】

気乗りしない誘いでも、関係が悪くなるのが不安で断れません。


うまく対処する方法はありますか?
【処方箋】

勇気を出して断ることで、健康・時間・お金が手に入ります

「行きたくないけどしょうがないから行く」という誘いの場合、何か角が立たずに断る方法があればいいのにと思う人は多いと思います。
私の場合は、バッサリ断ります。行きたくない飲み会に行くことほど、時間とお金がムダなことはこの世の中にありません。わざわざお金を払ってストレスを増やしているのです。人間、イヤイヤするというのは最大のストレスですから、健康まで失うことになります。
断る口実というのはいろいろあると思いますが、「先約がある」でいいのではないでしょうか。無理なお付き合いの関係は長くは続きません。100人に1回ずつ会うより、10人に10回ずつ会うほうが長く続く親しい関係を築きやすいと思います。
時間は有限なので、あなたにとって大切な人と過ごすために使うべきです。
■苦手意識を持たず、ニュートラルな状態で接する
【相談】

初めて会う人との会話が苦手です。

うまくコミュニケーションを取る方法はありますか?
【処方箋】

とにかく最初が大事! 印象づくりに注力しましょう

人間の脳には、好き嫌いを判定する「扁桃体」という部分があります。判定時間は、0.05秒ほど。
初対面でパッとその人を判断してしまうのです。
また、心理学の法則で、接触回数が多いほど親密度が増す「ザイオンス効果」というのがあります。そもそも初対面での印象が悪いと2回目以降につなげられず、親密になりづらいのです。つまり、初対面がとても重要だといえます。
印象をよくするためには、まず自分が苦手意識を持たず、ニュートラルな状態で接することが大切。事前に相手がわかっている場合は、SNSなどで情報を集めておくのもいいでしょう。人間は情報が多いと安心できます。
逆に情報がない場合は、会話の中で相手の好きなことを聞き、どういう人なのかを探っていくのがおすすめです。
■嫉妬心を解消する「3行ポジティブ日記」
【相談】

相手の幸せを喜べず、嫉妬して、人間関係がギクシャクしてしまいます。

どう考えれば嫉妬せずにすみますか?
【処方箋】

人と比べず、自分のポジティブな面に注目しましょう

気持ちはわかりますが、嫉妬は意味がありません。というのも、他の人と比べると、自分の劣っているところは無限に出てくるからです。
たとえばオリンピックで金メダルを取った人でも、すべてのジャンルで1位になることは不可能です。
どんなにすばらしい人でも、他人と比べると、自分は劣っているように感じてしまうのです。
そこでおすすめしているのが「3行ポジティブ日記」。1日の終わりに、今日あった楽しいことを3つ書くというものです。自分のポジティブな面に注目する習慣を身につけることで幸福度が増します。
自分が劣っている点に注目して、ねたんだり、そねんだりしていたらキリがありません。他人と比べないこと、自分のポジティブな面に注目することが嫉妬心の解消につながります。
■「うらやましい」を自己成長に変える
【相談】

SNSを見ていると、周りが充実していて自分の人生がつまらなく思え、落ち込みます。

どうすればSNSを楽しめますか?
【処方箋】

自分をレベルアップさせるためのエネルギー源にしよう

旅行している人の投稿を見るとうらやましくなるというのはよくあることですが、ねたみやそねみを抱くエネルギーは方向転換させましょう。
「夏までにお金を貯めて私も行こう!」など、自分のモチベーションを上げる方向に使うのがおすすめです。うらやましく思うということは、そうなりたいということなので、その人をモデルにして、自分もしたいことをすればいいのです。
ステキなホテルや絶景ポイント、おいしいご当地グルメなど、旅先の情報を収集して、自分も旅行を計画してみましょう。
うらやましいという気持ちは、自分を変える非常に大きなエネルギーになります。
うらやむのではなく、自分をレベルアップさせるために使うことで、自己成長につなげることができます。
■人は誰と付き合うかで成長の度合いが決まる
【相談】

嫉妬されたり、足を引っぱられたりしてイヤな思いをします。

こういう相手とはどう付き合うべきですか?
【処方箋】

基本的には付き合わない。それが無理なら距離を置く

嫉妬する人は、感情を使って相手を操作しようとする人です。そういう人と深く付き合うと非常に疲れます。
エナジーヴァンパイア(エネルギーの吸血鬼)とも呼ばれます。時間と精神的なエネルギーが大量に吸いとられるだけで、何もメリットがありません。
人は、誰と付き合うかで成長の度合いが決まります。人を引きずり下ろすことにエネルギーを使っている人は、人間的にまだまだ成長が必要な段階。
そういう人と関われば関わるほど、マイナスのエネルギーやネガティブな思考、感情を大量に受け取ることになります。そうすると疲れるだけでなく、自分自身が正しい方向にエネルギーを向けられなくなっていくのです。
ですから、嫉妬する人とは、基本的にはお付き合いをしない、仕事などで顔を合わせなくてはならない場合は、形式的な付き合いで距離を置くのがよいと思います。


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樺沢 紫苑(かばさわ・しおん)

精神科医

作家。米・イリノイ大学への留学を経て樺沢心理学研究所を設立。YouTubeやメルマガで精神医学の情報を発信。著書に『学びを結果に変えるアウトプット大全』『精神科医が教える ストレスフリー超大全』『読書脳』ほか。

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(精神科医 樺沢 紫苑)
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